2005年 05月 06日
韓国でアジア初の新属新種のサンショウウオ発見
日本のメディアは冷たいですね。韓国でとんでもない動物が発見されました。日本のメディアはおそらくほとんどすべてが無視しているのだと思いますが、東亜日報で日本語ニュースが読めます。
#アジアで起こった出来事を、自分達のこととして共有できる体質になることが、アジア各国との平和共存への一歩だと思うのですが、マスコミがこの姿勢ではまだまだ先は遠そうです。
サンショウウオの新種発見 アジアでは初めて
Natureの5月5日号には、アジアで初めて発見されたアメリカサンショウウオ科の新種発見の記載論文が載っています。
Nature 435, 87-90 (5 May 2005)
Discovery of the first Asian plethodontid salamander
両生類は陸にあがることができても、その生殖は水の中に戻って行わなければならず、世界的レベルで水質の汚染が進んでいることから、かなりの勢いでたくさんの種が絶滅に追い込まれつつあると言われています。両生類には、尾のあるもの(イモリ・サンショウウオ)、尾のないもの(カエル)それに手足のないもの(アシナシイモリ)の3つの大きなグループが現存していますが、今回発見されたものは尾のある仲間です。
尾のある両生類の中で、もっとも種数が多く繁栄していると考えられていながら、今までは南北アメリカ大陸と南ヨーロッパの一部でしか発見されていなかったアメリカサンショウウオ科(Plethodontidae)の種が韓国で発見されたのです。
このことの意義はとても大きく、現在はユーラシア大陸ではヨーロッパの南端にしかいないアメリカサンショウウオ科が旧大陸にも広く分布していたことの生きた証拠になると考えられるからです。逆に言うと、日本を含むアジアからヨーロッパにかけての一帯を一所懸命に探すと、この仲間の新種が続々と発見される可能性がまだまだあるということです。
脊椎動物の新種の発見はもうないだろうと言われてから何十年も経ちますが、鳥類を含めて目に見える大きさの新種はまだまだ発見が相次いでいます。それと並行して、あるいはそれ以上にたくさんの種がどんどん絶滅していることを考えると、我々人類は発見と絶滅のレースに今まで以上に力を注ぐべきなのではないでしょうか。
なお、このサンショウウオの新種の和名はまだついていないと思われますが、東亜日報の記事によると「コケサンショウウオ」となっています。Natureの論文中ではKorean crevice salamander チョウセンクレバスサンショウウオと書いてあります。ただし、 Korean: Ikkee dorongyong とも書いてありますので、ひょっとするとこれがコケサンショウウオになるのかも知れません。
このエントリーの中でも、わかりやすいようにサンショウウオという呼び方をしていますが、実はアメリカサンショウウオは我々が良く知っている、いわゆるサンショウウオ(エゾサンショウウオやトウキョウサンショウウオ、オオサンショウウオなど)よりはイモリに近い仲間で、英語ではサラマンダー(salamander)と呼ばれるグループです。イモリはnewtと呼ばれます。
そのあたりを含めて、尾のある両生類の分類については、このページがとてもわかりやすいので、参考にしてください。
#アジアで起こった出来事を、自分達のこととして共有できる体質になることが、アジア各国との平和共存への一歩だと思うのですが、マスコミがこの姿勢ではまだまだ先は遠そうです。
サンショウウオの新種発見 アジアでは初めて
Natureの5月5日号には、アジアで初めて発見されたアメリカサンショウウオ科の新種発見の記載論文が載っています。
Nature 435, 87-90 (5 May 2005)
Discovery of the first Asian plethodontid salamander
両生類は陸にあがることができても、その生殖は水の中に戻って行わなければならず、世界的レベルで水質の汚染が進んでいることから、かなりの勢いでたくさんの種が絶滅に追い込まれつつあると言われています。両生類には、尾のあるもの(イモリ・サンショウウオ)、尾のないもの(カエル)それに手足のないもの(アシナシイモリ)の3つの大きなグループが現存していますが、今回発見されたものは尾のある仲間です。
尾のある両生類の中で、もっとも種数が多く繁栄していると考えられていながら、今までは南北アメリカ大陸と南ヨーロッパの一部でしか発見されていなかったアメリカサンショウウオ科(Plethodontidae)の種が韓国で発見されたのです。
このことの意義はとても大きく、現在はユーラシア大陸ではヨーロッパの南端にしかいないアメリカサンショウウオ科が旧大陸にも広く分布していたことの生きた証拠になると考えられるからです。逆に言うと、日本を含むアジアからヨーロッパにかけての一帯を一所懸命に探すと、この仲間の新種が続々と発見される可能性がまだまだあるということです。
脊椎動物の新種の発見はもうないだろうと言われてから何十年も経ちますが、鳥類を含めて目に見える大きさの新種はまだまだ発見が相次いでいます。それと並行して、あるいはそれ以上にたくさんの種がどんどん絶滅していることを考えると、我々人類は発見と絶滅のレースに今まで以上に力を注ぐべきなのではないでしょうか。
なお、このサンショウウオの新種の和名はまだついていないと思われますが、東亜日報の記事によると「コケサンショウウオ」となっています。Natureの論文中ではKorean crevice salamander チョウセンクレバスサンショウウオと書いてあります。ただし、 Korean: Ikkee dorongyong とも書いてありますので、ひょっとするとこれがコケサンショウウオになるのかも知れません。
このエントリーの中でも、わかりやすいようにサンショウウオという呼び方をしていますが、実はアメリカサンショウウオは我々が良く知っている、いわゆるサンショウウオ(エゾサンショウウオやトウキョウサンショウウオ、オオサンショウウオなど)よりはイモリに近い仲間で、英語ではサラマンダー(salamander)と呼ばれるグループです。イモリはnewtと呼ばれます。
そのあたりを含めて、尾のある両生類の分類については、このページがとてもわかりやすいので、参考にしてください。
栃内先生。
ご無沙汰しております。NPO法人サイエンスコミュニケーションの榎木です。
新聞や雑誌がどんな基準で科学ニュースを取り上げるのか、というのは非常に興味があるところで、実際に報道関係の人に聞いてみたいと思っています。
ただ、「アジア軽視」かというと、ちょっと違うようにも思います。アメリカで新種の生物が発見されても、果たして紹介されたかどうか。
ご無沙汰しております。NPO法人サイエンスコミュニケーションの榎木です。
新聞や雑誌がどんな基準で科学ニュースを取り上げるのか、というのは非常に興味があるところで、実際に報道関係の人に聞いてみたいと思っています。
ただ、「アジア軽視」かというと、ちょっと違うようにも思います。アメリカで新種の生物が発見されても、果たして紹介されたかどうか。
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stochinai at 2005-05-06 23:18
どうもお久しぶりです。ご活躍の様子、ご同慶の至りです。
今回の件で日本のマスコミが冷たいと書いたのは、もしこれが日本で発見されたのだとしたら、大々的に発表ということになったと思うからです。化石などの発見でも日本人がからんだ論文だと本人のコメント付きで出ることが多いと認識しています。
アジア軽視ではなく、日本過剰重視を言いたかったのです。
外国で事故が起こった場合も「なお、この事故で日本人の死傷者はいないということです」というコメントがかならず付くのも、いい気持ちのするものではありません。
わかっていただけますでしょうか?
今回の件で日本のマスコミが冷たいと書いたのは、もしこれが日本で発見されたのだとしたら、大々的に発表ということになったと思うからです。化石などの発見でも日本人がからんだ論文だと本人のコメント付きで出ることが多いと認識しています。
アジア軽視ではなく、日本過剰重視を言いたかったのです。
外国で事故が起こった場合も「なお、この事故で日本人の死傷者はいないということです」というコメントがかならず付くのも、いい気持ちのするものではありません。
わかっていただけますでしょうか?
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brotherjin at 2005-05-19 21:49
はじめまして。仁@木偶の妄言と申します。僕は書く側の端くれなので、その立場からコメントをしたいと思います。
>アジアで起こった出来事を、自分達のこととして共有できる体質になることが、アジア各国との平和共存への一歩だと思う
これについては大賛成なのですが、
>アジア軽視ではなく、日本過剰重視を言いたかったのです。
どこの国の新聞でも自国の出来事を中心に書いています。これは何も日本ばかりではありません。これは読者が何を知りたいか、ということに関連しています。
>「なお、この事故で日本人の死傷者はいないということです」
確かに誤解されやすいコメントなのですが、これは必要な情報でもあるのです。たぶん外国で事故や事件がおきて、一番興味を持って、というか、切実さをもってニュースを見る/読むのは、その当該国に家族/知人が旅行者/仕事として行っている場合でしょう。少なくともこのコメントがあれば、その人は安全だということが分かるのです。
>アジアで起こった出来事を、自分達のこととして共有できる体質になることが、アジア各国との平和共存への一歩だと思う
これについては大賛成なのですが、
>アジア軽視ではなく、日本過剰重視を言いたかったのです。
どこの国の新聞でも自国の出来事を中心に書いています。これは何も日本ばかりではありません。これは読者が何を知りたいか、ということに関連しています。
>「なお、この事故で日本人の死傷者はいないということです」
確かに誤解されやすいコメントなのですが、これは必要な情報でもあるのです。たぶん外国で事故や事件がおきて、一番興味を持って、というか、切実さをもってニュースを見る/読むのは、その当該国に家族/知人が旅行者/仕事として行っている場合でしょう。少なくともこのコメントがあれば、その人は安全だということが分かるのです。
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stochinai at 2005-05-19 22:42
コメントありがとうございます。
>少なくともこのコメントがあれば、その人は安全だということが分かるのです。
それはわからないでもないのですが、じゃあ外国人なら死んでもいいのかというところが、ちょっとひっかかるというだけです。報道をやめろといっているのではなく、表現の仕方だと思っています。報道関係者には「日本人の被害がない」と言わなくても表現することができるくらいの文才を持っていて欲しいなあという希望です。
>少なくともこのコメントがあれば、その人は安全だということが分かるのです。
それはわからないでもないのですが、じゃあ外国人なら死んでもいいのかというところが、ちょっとひっかかるというだけです。報道をやめろといっているのではなく、表現の仕方だと思っています。報道関係者には「日本人の被害がない」と言わなくても表現することができるくらいの文才を持っていて欲しいなあという希望です。
by stochinai
| 2005-05-06 22:36
| 生物学
|
Comments(4)