5号館を出て

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【今日の1枚】 動物の顔に見える家

 東区の奥の某所で出会った家です。最初は、なんだか妙な気配を感じて振り向いたほど、生き物的な雰囲気を漂わせた家だと思い、思わずシャッターを切ってしまいました。
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 札幌で三角屋根の自然落雪住宅が流行ったのは1950-60年台だったと思いますが、その頃建てられた家は急速に少なくなっています。我が家が中学校の頃引っ越した家も三角屋根だったので、三角屋根を見るとなんとなく懐かしくなります。

 当時の三角屋根は数センチでも雪が積もると滑り落ちる構造でしたが、屋根の下にはどんどん雪がたまっていき、雪の多い年には積もった雪が屋根にまで達してもう雪が落ちないということもありました。また、雪が隣家の土地に落ちるということが最大の問題となり、場合によっては隣家との間に雪止めの柵を作らなくてはならなくなったりということで、それまで人々の悩みの種だった屋根の雪下ろしをしなくても良いという「夢の住宅」は急速にすたれることになってしまったのです。

 しかし、この家は当時の三角屋根としては異色の構造をしており、屋根の上に「耳」がついています。この耳のせいで、この家がイヌやネコの顔のように見えるのだと思います。この耳はおそらく屋根から落ちる雪を家の前後に振り分けるために付けられたものだと思いますが、雪を振り分けたところで落ちる雪の総量が変わるわけではありませんし、この構造のせいで雪が落ちにくいという副作用もあって、このアイディアはほとんど広まることなく終わったものと思われます。

 というわけで、このような家が現在まで残っているというのは奇跡的なことのように思われ、場合によっては「歴史的(失敗)建造物」として保存に値するもののような気さえします。

 よく見ていただくと、左右対称に徹するために設計にかなり工夫が凝らされていることがわかります。それでいて左右に家の窓やその上の「おでこ」にある「はちまち」の高さがちょっと違っているところや、左の棟には屋根の切り込みがあったりと不思議な不対照が気になったりします。

 手前の電柱がちょうど家の中央に立ちふさがり、この写真では左右のつなぎ目がどうなっているのか気になるところですが、きちんとつながっていたと記憶しています。ひょっとすると、左右を別々に作ってつなぐときに、高さが違う所が発覚したりしたのかもしれません。

 見ればみるほど、いろんなところが不思議に思えてきて、設計した人や建築した人の話を聞いてみたくなるような住宅でした。

 人が住んでいるのかどうかを確認することはできませんでしたが、この先そんなに長くは存続しないような印象でした。なんだか、もったいない気もするのですが、間違いなくなくなりますよね。
by stochinai | 2011-11-23 23:37 | 札幌・北海道 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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