5号館を出て

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アノマロカリスの複眼化石

 アノマロカリスがでかでかと出ているNatureの表紙を見ただけで、おもしろそうな論文が予感できます。
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 カンブリアの生物の中でもこのアノマロカリスの人気はひときわ高く、アノマロカリス専門のホームページもあります。
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 このアノマロカリスは、現在の動物でいうと甲殻類を含む節足動物に似ているので、複眼を持っているのではないかという説もあったのですが、もちろん異論もあり複眼ではなかったという説もあります。

 Wikipediaにある想像図では、目は複眼にはなっていません。
アノマロカリスの複眼化石_c0025115_18251686.jpg
 一方、英語版のWikipediaには、ロンドンの自然史博物館にあるアノマロカリスの模型の写真がありますが、こちらは複眼を持っているものとして復元されています。
アノマロカリスの複眼化石_c0025115_18555419.jpg
 これを見ると、私には複眼のほうが似合っていると思えてならなかったのですが、動かぬ証拠である化石が今までは出ていませんでした。

 ところが今日発表されたNatureの最新号にこんな論文が載っていました。
アノマロカリスの複眼化石_c0025115_18252114.jpg
 南オーストラリアのエミューベイ頁岩から驚くほど状態が良いアノマロカリスの化石が出てきて、明瞭な複眼が保存されていたのです。

 こちらがその化石です。
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 小さな写真に複眼がくっきりと撮されているのがおわかりになると思います。そして、この化石から再現された想像図が表紙になっていたというわけです。眼の部分を拡大するとはっきりと複眼が描かれています。
アノマロカリスの複眼化石_c0025115_1825812.jpg
 というわけで、長年の論争がたったひとつの化石で決着がついてしまいました。

 さらに驚くことには、このアノマロカリスの複眼は少なく見積もっても片方に16000個の個眼(レンズ)を持っていることもわかりました。原生の動物ではハエの複眼には個眼が3200個、アリでは1000個以下、異常に良く見える複眼を持っているトンボでさえ28000個です。16000個以上の個眼からなる複眼を持っていたアノマロカリスの視力はとてつもなく良かったのではないかと想像されるということです。

 当時の海の中で、最上位に位置する捕食者だったアノマロカリスはこの発達した視力を持ってカンブリアの海を悠々と泳ぎ回っては、餌になる動物たちを狩っていたのでしょう。

 となると、彼らがどうして特段の環境激変があったわけでもないと考えられているカンブリアの中頃にいっせいに絶滅してしまったのかという謎は深まるばかりです。外骨格が発達していなかったことが原因のひとつなのでしょうか。外骨格なしに複眼を持っていることが確認されたのはアノマロカリスだけで、これは外骨格よりも複眼が先に進化したことを示す証拠だとも言えます。あるいは複眼は硬い外骨格的な構造になっていますので、アノマロカリスの先祖は外骨格を持っていたのかもしれず、そうなるとアノマロカリスの柔らかい体は固い外骨格から「退化」したことになります。

 謎は深まり、ますますこの動物のファンが増えるのではないかと思われる、新発見でした。
by stochinai | 2011-12-08 19:28 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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