2012年 05月 02日
自動車事故は減っているのに
登下校中の子供たちが暴走車に突っ込まれる事故や、連休の行楽と関連した事故のニュースが多く、そうした事故の責任者探しの報道で、暗くなりがちになる今日この頃ですが、警察や国土交通省および自動車会社の努力の甲斐あって日本ではこの20年くらい路上での交通事故死者数が着実に減っているということは意外と知られていないような気がします。こちらが交通事故死亡者数の長期推移です。(社会実情データ図録より)

いわゆる交通戦争と呼ばれた1970年をピークに、道路上での死者数は1980年までに一度急降下したもののその後じわじわと10年くらい増加に転じた後、今度は着実に減少を続けて今日に至っています。
そして今や年間5000人を割り込んでおり、ここ10数年毎年30000人を越え続けている自殺者の推移と好対照となっています。(こちらも社会実情データ図録より)

といって、交通事故の発生そのものが減っているのかというと、死者数と事故数はちょっと違った変化を見せています。(こちらも社会実情データ図録より)

死者数がコンスタントに減り始めた1990年代の始め頃は、まだまだ交通事故は上り調子で増えているのです。交通事故そのものが減り始めるのは2000年代に入ってからですから、それまでは事故が起こっても人が死ななくなっているということで、自動車の安全性が改善されたということではないでしょうか。
それを裏付けるデータがこちらの状態別死者数の推移で、自動車乗車中の死亡がどんどん下がっています。(上のグラフと同じページ)

ところが残念なことに、自動車乗車中の死亡者はどんどん減っているのですが、歩行中に事故に巻き込まれてなくなる方の減り方は鈍く、ついに2008年に乗車中の死者数と逆転してしまいました。
つまり、ここ20年くらい車の中の人に対する安全性を高める改善が効果的に行われたものの、歩行者の安全を守る道路や車の改善が足踏みを続けているということになります。これは車だけの問題ではなく、先日ここでも書いた歩行者と車を分離する道路の改善などが遅れていることを意味しているのだと思います。
となってくると、次に集中的に行うべき交通政策は歩行者の積極的保護、特に高齢者だということが次の図で明らかになるのではないでしょうか。若者の死亡者のへりに比べて、高齢者の下がり方がとても鈍く見えます。(上のグラフと同じページより)

登校中の小学生の列に車が突っ込むというような悪質な「事件」は大きく報道されますが、実は毎日のようにお年寄りが交通事故でなくなっている事故が全国で起こっています。未来のある小学生の事故はほんとうに痛ましいことですが、お年寄りだって一人寂しく道路で死んでいきたいわけはありません。
マスコミの方々には、個々の事故だけではなく、統計的にその比率が大きくなりつつあるお年寄りの事故の報道もよろしくお願いしたいところです。調査報道としてはそんなに難しくないものだと思うのですが、地味すぎて報道バリューが少ないとでも思われているのだとしたら、残念なことこの上もありません。

そして今や年間5000人を割り込んでおり、ここ10数年毎年30000人を越え続けている自殺者の推移と好対照となっています。(こちらも社会実情データ図録より)


それを裏付けるデータがこちらの状態別死者数の推移で、自動車乗車中の死亡がどんどん下がっています。(上のグラフと同じページ)

つまり、ここ20年くらい車の中の人に対する安全性を高める改善が効果的に行われたものの、歩行者の安全を守る道路や車の改善が足踏みを続けているということになります。これは車だけの問題ではなく、先日ここでも書いた歩行者と車を分離する道路の改善などが遅れていることを意味しているのだと思います。
となってくると、次に集中的に行うべき交通政策は歩行者の積極的保護、特に高齢者だということが次の図で明らかになるのではないでしょうか。若者の死亡者のへりに比べて、高齢者の下がり方がとても鈍く見えます。(上のグラフと同じページより)

マスコミの方々には、個々の事故だけではなく、統計的にその比率が大きくなりつつあるお年寄りの事故の報道もよろしくお願いしたいところです。調査報道としてはそんなに難しくないものだと思うのですが、地味すぎて報道バリューが少ないとでも思われているのだとしたら、残念なことこの上もありません。
by stochinai
| 2012-05-02 21:02
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