2012年 05月 09日
学会のポスターセッション主催者への公開レター(一部改訂)
最近はどこの学会でもポスターセッションが多くなりました。
photo credit: Sean Munson via photo pin cc
デザイナーのCOLIN PURRINGTONさんは科学系の学会で発表ポスターをどのようにデザインするかという講演をした時に、これはポスターセッションを主催する側にもいろいろと考えてもらわなくてはダメだとおもったらしく、ブログでポスターセッションのオーガナイザーへの公開レターを書いています。
Open letter to poster session organizers
そこで、彼は8つの提案をしているのですが、これはポスターセッションをどのように運営するかというだけではなく、ポスターを作って参加する側にもためになるアイディアがあると思いましたので、ここで紹介させていただくことにしました。超訳です(笑)。
学会のポスターをどうやってデザインするかという彼による解説もこちらにありますので、ぜひ参考にしてください。
Designing conference posters
ポスター発表のやり方については、ここでも過去に2度ほど紹介してありますので、そちらも参照してください。
ポスター発表のための10の簡単なルール
ポスターの作り方
さて、いよいよ本題のポスター主催者への提言です。
1.ポスターにどんな美的センスが必要かとか、どんなお客さん向けにつくるかとか、語数制限などのガイドラインを示してください。
学会案内のウェブページにはポスターのサイズや参加締め切り日ばかりではなく、ポスターの作り方についての指示もあるべきでしょう。たとえば、ポスターは800語以内で作りましょうとか、他の分野の科学者向けにつくりましょうとか書いてあったら、積極的に参加したくなるのではないでしょうか。もし語数制限を「あまり多くの語数はやめましょう」と書いたら、多くのポスターデザイナー(外国にはそういうプロもたくさんいるのでしょうね)は「5000語位以内のことだな」と思うものです。
2.「良いポスター」とはどんなものかの実例を示してください。
科学者は他の人のポスターを見て学ぶので、時には負の連鎖を生んでしまいます。インターネットでもかまいませんので、こういうのが良いポスターなのだ、と宣言してください。
3.ネット上にはポスターの作り方に関する多数のアドバイスがありますので、そのリンク集を作って会員に示してください。
抽象的なことを言っても会員には伝わりません。具体的なリンクを示しましょう。著者のページにもあるように「良いポスター」と「悪いポスター」をサイトに貼って示しておいてください。
たとえば、これが問題の多いポスターの見本です。(と私が思ったものです。著者はおそらく「普通の」ポスターの見本として示しておりあちこちにポスター作成のコツなどもメモしていますが、彼がいうところの論文をただポスターに移動したというパターンのものです。文字数が多すぎるとか、図や表が小さすぎるということは、すぐに気がつきます。)
著者が悪いポスターの見本と言って作ったものは、こちらでした。確かに読むのもつらそうですが(笑)、これも意外とよく見かけるパターンですね。
そして、例えばこちらが良いポスターのデザイン例です。
特に説明もいらなさそうなくらいだと思います。いずれもこのブログの著者のページに貼ってあるものです。
4.テンプレートを配ったりしないでください。
参加者に良いポスターを作ってもらいたいからといって、パワーポイントのテンプレートを配って使うように指示したりしないでください。そもそもパワーポイントはポスターを作るためのソフトウェアではありませんし、持っていない人もいます。そして最悪なことには会場中に同じようなポスターが並んでしまうことを想像してみてください。
5.参加者にロゴやバナーを作るように指示しないでください。
ブランドを示したからといって、ポスターの中身が良くなるわけではなく、紙面が狭くなるだけです。また、全体のデザインを壊すこともしばしばです。もし、なにかやりたいのだったら、参加者に無料のTシャツを配ったり、ペッタンコシールで「なんちゃってタトゥー」でもつけてもらいましょう。
6.ポスターに要旨を書かせるなどということは絶対にやめてください。
ポスターは論文と違って要旨を必要とするほど長大なものではありません。要旨は要旨集に入れて、めぼしいポスターを探すために使うものです。
7.ポスター賞があるのなら、審査基準を予めウェブサイトで公表しておいてください。
最近はポスター賞がはやっていますが、参加者には予め評価基準を示しておきましょう。「ベストポスターには賞が与えられます」ではいけません。それから、お願いですからデザイン的にどうなの、というような溢れんばかりの文字とデータ(図)が満載のポスターに賞を与えないでください。今後のポスターセッションはそんなポスターばかりになってしまいます。ですから、どういう基準でベストポスター賞を選ぶのかを前もって参加者に伝えておく必要があるのです。
8.はがきサイズに縮小したポスターをステッカーにして参加者の胸に貼っておいてもらいましょう。
会期中ずっとそのステッカーを胸に張っておくと、それぞれの人が発表ポスターと関連付けられて認識されるのは、素晴らしいアイディアではないでしょうか。(補足すると、このくらい縮小しても「良いポスター」はもとの情報が伝わってくるものです。逆に悪いポスターは、何がなんだかわからなくなるので、実際に自分でポスターを作る時にも、極端に縮小してみると、ポスターのデザインが適切かどうかが浮き彫りになるので、おすすめです。)
というわけで、科学者ではないデザイナーの思い入れが強すぎると感じられる部分がないわけではありませんが、ポスターセッションを主催する側だけではなく、ポスターを作って参加する側にもいろいろと示唆的なことが書かれていると思いました。
今度の学会の前に、思い出して実践してみませんか?
デザイナーのCOLIN PURRINGTONさんは科学系の学会で発表ポスターをどのようにデザインするかという講演をした時に、これはポスターセッションを主催する側にもいろいろと考えてもらわなくてはダメだとおもったらしく、ブログでポスターセッションのオーガナイザーへの公開レターを書いています。
Open letter to poster session organizers
そこで、彼は8つの提案をしているのですが、これはポスターセッションをどのように運営するかというだけではなく、ポスターを作って参加する側にもためになるアイディアがあると思いましたので、ここで紹介させていただくことにしました。超訳です(笑)。
学会のポスターをどうやってデザインするかという彼による解説もこちらにありますので、ぜひ参考にしてください。
Designing conference posters
ポスター発表のやり方については、ここでも過去に2度ほど紹介してありますので、そちらも参照してください。
ポスター発表のための10の簡単なルール
ポスターの作り方
さて、いよいよ本題のポスター主催者への提言です。
1.ポスターにどんな美的センスが必要かとか、どんなお客さん向けにつくるかとか、語数制限などのガイドラインを示してください。
学会案内のウェブページにはポスターのサイズや参加締め切り日ばかりではなく、ポスターの作り方についての指示もあるべきでしょう。たとえば、ポスターは800語以内で作りましょうとか、他の分野の科学者向けにつくりましょうとか書いてあったら、積極的に参加したくなるのではないでしょうか。もし語数制限を「あまり多くの語数はやめましょう」と書いたら、多くのポスターデザイナー(外国にはそういうプロもたくさんいるのでしょうね)は「5000語位以内のことだな」と思うものです。
2.「良いポスター」とはどんなものかの実例を示してください。
科学者は他の人のポスターを見て学ぶので、時には負の連鎖を生んでしまいます。インターネットでもかまいませんので、こういうのが良いポスターなのだ、と宣言してください。
3.ネット上にはポスターの作り方に関する多数のアドバイスがありますので、そのリンク集を作って会員に示してください。
抽象的なことを言っても会員には伝わりません。具体的なリンクを示しましょう。著者のページにもあるように「良いポスター」と「悪いポスター」をサイトに貼って示しておいてください。
たとえば、これが問題の多いポスターの見本です。(と私が思ったものです。著者はおそらく「普通の」ポスターの見本として示しておりあちこちにポスター作成のコツなどもメモしていますが、彼がいうところの論文をただポスターに移動したというパターンのものです。文字数が多すぎるとか、図や表が小さすぎるということは、すぐに気がつきます。)
4.テンプレートを配ったりしないでください。
参加者に良いポスターを作ってもらいたいからといって、パワーポイントのテンプレートを配って使うように指示したりしないでください。そもそもパワーポイントはポスターを作るためのソフトウェアではありませんし、持っていない人もいます。そして最悪なことには会場中に同じようなポスターが並んでしまうことを想像してみてください。
5.参加者にロゴやバナーを作るように指示しないでください。
ブランドを示したからといって、ポスターの中身が良くなるわけではなく、紙面が狭くなるだけです。また、全体のデザインを壊すこともしばしばです。もし、なにかやりたいのだったら、参加者に無料のTシャツを配ったり、ペッタンコシールで「なんちゃってタトゥー」でもつけてもらいましょう。
6.ポスターに要旨を書かせるなどということは絶対にやめてください。
ポスターは論文と違って要旨を必要とするほど長大なものではありません。要旨は要旨集に入れて、めぼしいポスターを探すために使うものです。
7.ポスター賞があるのなら、審査基準を予めウェブサイトで公表しておいてください。
最近はポスター賞がはやっていますが、参加者には予め評価基準を示しておきましょう。「ベストポスターには賞が与えられます」ではいけません。それから、お願いですからデザイン的にどうなの、というような溢れんばかりの文字とデータ(図)が満載のポスターに賞を与えないでください。今後のポスターセッションはそんなポスターばかりになってしまいます。ですから、どういう基準でベストポスター賞を選ぶのかを前もって参加者に伝えておく必要があるのです。
8.はがきサイズに縮小したポスターをステッカーにして参加者の胸に貼っておいてもらいましょう。
会期中ずっとそのステッカーを胸に張っておくと、それぞれの人が発表ポスターと関連付けられて認識されるのは、素晴らしいアイディアではないでしょうか。(補足すると、このくらい縮小しても「良いポスター」はもとの情報が伝わってくるものです。逆に悪いポスターは、何がなんだかわからなくなるので、実際に自分でポスターを作る時にも、極端に縮小してみると、ポスターのデザインが適切かどうかが浮き彫りになるので、おすすめです。)
というわけで、科学者ではないデザイナーの思い入れが強すぎると感じられる部分がないわけではありませんが、ポスターセッションを主催する側だけではなく、ポスターを作って参加する側にもいろいろと示唆的なことが書かれていると思いました。
今度の学会の前に、思い出して実践してみませんか?
by stochinai
| 2012-05-09 19:16
| 科学一般
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