5号館を出て

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HUSCAP に救われた

 連休明けにメールボックス(PCのメールボックスではなく、大学にあるリアルな郵便ボックス)に、最近では珍しくなった切手を貼った普通の細長い封筒が入っていました。切手は昨年発行された石割桜(盛岡地方裁判所の構内にあるもので、昨年花は咲いていませんでしたが、実物を見ました)で、差出人も岩手の方でした。季節や地方にピッタリな切手を使われているところにも、差し出された方の細かい気配りを感じます。
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 達筆な字で書かれた宛先は間違いなく私になっていました。もちろん、差出人に心当たりはありません。ちょっと緊張しながら封を切りました。

 文章は、予想通り「突然のお便り、失礼致します」から始まっており、「今までお会いしたことがないと思いますが」というご本人は、大学の11年先輩の方でした。内容は、北海道大学理学部動物学教室で発行していた紀要の論文の別刷りまたはコピーを要求するものでした。

 その理由というのが「私も別刷りをいただいて持っていたのですが、昨年3.11の大震災の際の地震で本棚が倒れ、いろいろな文献を失ってしまい、上記別刷りも見当たりません」ということで、もし教室に別刷りがあったらそれを、なかったらコピーを送ってもらえないだろうかというものです。

 論文もタイトルなどがはっきりしているものではなく、「40年ほど前の古い論文ですが、石川良輔、坂上昭一両先生が共著で北大・理・動物の紀要に発表さrた、日本産の Bombus (マルハナバチ)についてのモノグラフです」と書いてあるだけです。もちろん当時の別刷りなどが残っているはずもなく、紀要は理学部図書室あるいは図書館本館に行けばあるはずですが、論文の書誌情報を検索してそのデータを持って図書室まで行って、本を借りてコピーして、仮止めして、郵便で送るとなると、かなり大変な作業が想像されます。

 ところが、北大の紀要は今やHUSCAPという北大の機関リポジトリにすべて登録されており、日本全国からアクセスすることも可能です。そのようにお知らせする返事を差し上げることもできるのですが、とりあえずここで論文を検索してダウンロードしてみることにしました。

 こちらが北大HUSCAPのウェブサイトホームページです。
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 まず、北大の紀要(理・動物)を選び、Sakagamiだったらたくさんの論文が出てくるだろうと思われましたので、Ishikawaで検索をかけてみると、一発で最初に飛び出してきました。
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 あとは2クリックで論文本体にたどり着けます。
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 びっくり。論文はフランス語で書かれていました。

 そう言えば、語学の堪能な坂上先生は英語だけではなく、フランス語、ポルトガル語、ドイツ語などでも論文を書かれていたのを思い出しました。何語でも簡単に書けることを楽しんでおられたようだったことを思い出しました。

 というわけで、この論文のpdfファイルをダウンロードして、手紙に書かれていたアドレスに添付書類としてお送りしたのですが、この間に要した時間は10分くらいだったでしょうか。

 翌日、無事に届きましたというメールをいただき、電子図書館時代を実感しました。もちろん、それも私よりも遥か年上の先輩が添付書類を付けたメールを扱える方だったという条件があってのことですが、今や70代80代の方でもデジタル人が多くなっているようです。

 考えてみると、こうした電子図書館や電子メールこそ足腰そして目の弱ってきた老人にやさしい道具であり、そういう方々にこそ必要性が高いものだと再認識した次第です。

 私も、極めて短時間でしかもほとんど体を動かさずに、リクエストに答えることができて満足でした。

 北大HUSCAPチームの皆さま、お世話になりました。これからもよろしくお願い致します。
by stochinai | 2012-05-11 18:14 | 大学・高等教育 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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