5号館を出て

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ついに真打ち登場なのか PeerJ

 つい10日前にeLIFEというオープンアクセス・ジャーナルが出てきたことを書いたばかりですが、またまた新しいオープンアクセス・ジャーナルが正式に発表されました。こちらも私は知らなかったものをO商科大学図書館のSugさんに教えていただいて事前登録していたら、昨日メールが届きました。(図書館の方々とは仲良くしておくべきですよね~。)
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 創設者であり出版代表でもある Peter Binfield さんと、同じく創設者でありCEOである Jason Hoyt さんの連名のメールは電子メールでなかったら将来は「お宝」になるかもしれないものです。

 というのは、 Peter Binfield さんはあのオープンアクセス・ジャーナルの化物である PLoS ONE の出版代表だった人ですし、 Jason Hoyt さんは最近とみに有名になった文献管理ソフトの Mendeley で代表科学者であり VP of R&D (なんだかよくわからない肩書きですが・・・)としてたった2年で Mendeley を大きく育て上げた貢献者なのです。そして、さらにボード・メンバーとして、SEやプログラマーの方々にはお馴染みのオープン・ソース・プログラマーである Tim O'Reilly さんまでもが名を連ねています(彼はスポンサーでもあるようです)。Nature に書かれているように、この連中が揃って始めるのだから何かが起こるに決っている(“I thought — wow — if the people I’m hearing about are working there — that’s the sign of something happening.” by John Wilbanks)というわけです。

 Natureの記事はこちらです。

Journal offers flat fee for ‘all you can publish’
Latest venture is part of an explosion of ideas for open-access publishing.


 この PeerJ という雑誌はいわゆる著者が出版費用を負担するという意味ではよくあるオープンアクセス・ジャーナルとどこが違うと思われるかもしれませんが、驚きの一回支払った後は一生涯無料で投稿・出版ができるという今までにないビジネス・モデルを採用したという点で、極めてユニークです。

 PeerJのサイトにデカデカと書かれています。
ついに真打ち登場なのか PeerJ_c0025115_18131628.jpg
 一度払えば生涯の出版が保証されるモデルプランだというわけです。PeerJでは、査読をした論文とプレプリントを公開するのですが、一度だけ払うお金によって毎年どのくらいの数の論文を公開できるかが決まります。

 無料のプランというのもあって(上の緑のところです)、年に1回プレプリントを公開できます。ベーシックプランは先払いが99ドルで、査読後だと129ドルで、年に1回の査読論文と制限なしの公開プレプリント、年に1回の非公開プレプリントが出せます。(学生向き)

 エンハンスト・プランでは先払いが199ドル、後払いが239ドルで、2回の査読論文と制限なしの公開、非公開プレプリントが出せます。(ポスドク向き)

 最高の研究者プランは299ドルと、349ドルで、制限なしの査読論文、公開、非公開プレプリントが出せます。(ラボ・ヘッドと大量生産者向き)

 それに8月いっぱいまでに支払えば、エンハンスト・プランが169ドル、研究者プランが259ドルとお安くなっているので、この期間にどんどん先払いして欲しいとのこと。他にも共著者は12名以内なら全員が登録してないとダメだけど、それ以上は登録していない人が入っていてもOKとか、いろいろと「商売上手」なこと(笑)が書いてあります。

 先日紹介したeLIFEは「スゴイ論文」を集めると意気込んでいましたが、こちらはもちろんきちんと査読した上で「普通の学術論文」を淡々と出版していくというように、それぞれが独自の「色」を出しているので、それなりに共存していけるのかもしれません。

 いずれにしても、世界的にはもうオープン・アクセスが当たり前になってきそうな気配ですね。読むのはタダ、論文を書いて出す人が、あるいはスポンサーがお金を出すって、やっぱり税金などの公共の資金で行われた研究発表としての学術論文としては妥当な形式だったということでしょうか。

 でもさすがに、そろそろ新しい雑誌の登場は打ち止めになってくれないと、出すほうが目移りして困っちゃいますね(笑)。

 機関リポジトリも充実してきて、新しい論文はオープン・アクセスになると、市民が専門論文にアクセスするのがとても簡単になるので、社会全体の科学リテラシーが変わってくるかもしれないという期待は高まります。

 いいことではないでしょうか(^^)。
Commented by O商科大学図書館のSug at 2013-02-13 07:57 x
昨日、最初の論文が刊行されました。表紙(?)がタイムライン形式でびっくり。
Commented by stochinai at 2013-02-13 13:02
見ました。目玉の論文は「竜脚類恐竜の首はキリンの首と較べてなんであんなに長く伸びることができたのか」という、総説的ですがとても楽しい論文で、素人の方にもとっつきやすそうなものです。
by stochinai | 2012-06-14 18:43 | コミュニケーション | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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