5号館を出て

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内閣の愚策

 内閣は、これほど社会の実態を知らないのかと情けなくなるニュースです。

 <女性キャンペーン>科学技術の魅力アピール 内閣府(配信:毎日)を読んで、脱力してしまいました。

 科学技術分野への女性の進出が遅れていることは事実です。「政府の男女共同参画会議がまとめた最近の中間整理では、女性の参画が遅れている分野に科学技術が追加された。研究者に占める女性の割合は人文科学を含めても11.2%(03年)にすぎず、理工系はわずか4%だ」は、その通りなのです。

 科学技術分野への女性参画を促すことを狙って、対策を施すのは結構なことだと思います。

 しかし、その原因を「家庭や学校に『女性は理工系に進むべきではない』との『偏見』が根強」いことに求めているという下りを読んで開いた口がふさがらなくなりました。

 現実には大学の理系にはすでに大量の女子学生が進学してきており、我が理学部生物科学科ではずいぶん前から半分近くが女性です。私のラボだけを取ってみると、ポスドクから卒研生までの数は、女性6人対男性6人と50%ずつです。工学部などを除くいわゆる理系(医・歯・薬・獣医・理・農)への女性進出は、かなり前から実現されているというのが、現場での実感です。

 それにもかかわらず、その女性達が就職する際には、考えられないほどひどい就職差別があるので、研究者や技術者に占める女性の割合が驚くほど低いというのが現実のはずです。

 それを「社会に出る前の女子生徒、女子学生に対して、科学技術や理工系の職業の魅力、活躍する先輩の素顔を紹介し」たりすると、その数の少なさに驚かれてしまい、内閣府の意図とは逆に社会における、ガラスの天井を思い知らせるだけのことになるような気がします。理系を選ばなくなる女性を増やそうという意図ならば、成功するかも知れません。

 それにしても、このアイディアを出した連中ってのはどんな人選になっているのでしょう。

 現実認識のひどさと、対応策のまずさには涙も出ない感じです。
Commented by ぢゅにあ at 2005-05-18 12:50 x
理工系の女性が何故少ないかについては、1ヶ月程前にアメリカのラジオで聞いたばかりです。アメリカでも状況は似ているようです。数人の女性科学者のインタビューの共通した意見としては、家庭(出産、育児を含めた)との両立の難しさを挙げていたようです。就職差別も否定はできませんが、女性の側が家庭とキャリアとの二者選択という状況で諦めてしまう現実も多いと言っていました。どちらにしても日本の対応策は的を外してますね。
Commented by stochinai at 2005-05-18 19:14
 だいたい出産がある女性を男性と同じに扱うということが、すごい差別だっていうことがわかっていないようですね。
 家庭とキャリアの二者択一をしなくても良い環境を整えることが、女性の能力を有効に使い、少子化の解決にもなるということがわかっていない人が政策決定に大きな力を持っていることが問題解決できない大きな理由だと思います。
Commented by Juny at 2005-05-19 00:03 x
大隅先生が小泉内閣メールマガジンにこういうことについて書いているのに(ご本人のブログから知りました)、まったく内閣には伝わっていないということなのでしょうか。どうやったら内閣に伝わるんでしょう…。

http://www.kantei.go.jp/jp/m-magazine/backnumber/2005/0512.html
Commented by ぜのぱす at 2005-05-19 09:07 x
話は少し逸れますが、夫婦別姓も未だに強い抵抗にあい実現されていませんね。夫婦別姓が、家族の崩壊に、ひいては国家の崩壊に繋がると、本気で唱える政治家や有識者が多く居るこの国の社会環境も、女性の社会進出を阻む一因ですね。
Commented by stochinai at 2005-05-19 14:47
>Junyさん
 政府与党は、もともと意見なんて聞く気はないのだと思います。世の中にはいろいろな意見がありますから、自分の都合の良い意見だけを採り上げても「民の声」を聞いたという言い訳は成り立ちます。
 反対意見があるのは知っているのだと思いますが、無視しているというところでしょう。
 ならば、無視された人々がとるべき次の手は、、、、、。

>ぜのぱすさん
 夫婦別姓についても、国の制度はさておき自分たちだけでどんどん実行している人々がたくさんいるのを知っています。政府に要求を突きつけながらも、実現を待たずに我々が動き出すということも要求実現のためには必要なことだと思います。
 政策として実行されていないことを、個人的にやるのは大変ですが、不可能ではないのならがんばってみる価値はあるのだと思います。
Commented by toko_hamura at 2005-05-19 18:56
就職の時点で差別があるのですか。はじめて知りました。
極端な言い方ですが、古い頭の人事担当者や現場の古株が
女はいらんと言っているのでしょうか?
Commented by stochinai at 2005-05-19 22:39
 就職の時点どころか、大学では卒業研究のために講座にはいる時でさえ「うちは女性はとりません」と公言する先生が(今は少なくなりましたが、まだ)います。
 就職となると、出産をするのは女性だけですし、どうしても子育ては女性が中心になることが多い上に、社会的にそうした状況をバックアップしてくれる体制がしっかりしていないと、組織が被害(?)を被ってしまうという現実がありますので、どうしても女性は不利になると思います。
 研究室などは数人で切り盛りされていることが多いので、雇うほうが悪いとばかりも言えないところはあるのですが、子育てなどで数年研究のアクティビティが下がると、研究室全体の評価が下がってしまうという現実がありますので、就職の時点で差別があるのは歴然たる事実だと思います。
 女性が自ら研究職を敬遠するような行動を取ることも多いと思いますが、その原因は研究職に就くと子供を産み育てにくいとか、研究業績だけで評価される世界ではどうしても不利になるので避けるということはあると思います。
 つまり、私は「社会が悪い」と思っています。
Commented by さなえ at 2005-05-21 15:56 x
 娘が2人とも国立大学理系の研究科を卒業し、2人とも民間の研究機関を希望しましたが、就職できませんでした。2人とも成績は上位で、学校推薦、学部長推薦を貰いながらです。
 結局、研究職は少人数しか取らないので、極端な男性優先なんですよね。よく分かりました。
 その後、娘は返事も来なかった技術系の会社にアルバイトで勤めましたが、その年に正社員として採用された男性について、あんなできが悪いのと比較して負けたのかと思うと信じられないと言っていました。
 やる気も能力もある女性を活かそうとしないとは、もったいないことです。
Commented by stochinai at 2005-05-22 09:18
 お嬢さんのことは、まことに残念なことですが、同じような話は良く聞きます。大学までは、かなり男女平等が進んできているのですが、社会の変化がかなり鈍いですから、女性にとっては大学から社会への移行期にかなりのストレスを感じる経験をさせられることが多いようです。
 
>やる気も能力もある女性を活かそうとしないとは、もったいないことです。
 全くその通りだと思うのですが、それを「もったいない」あるいは「社会的損失」であるという自覚が全くないとしか思えません。こういうことをしていると国際競争においてもどんどん負けていくという現実が見えないのだと思います。
 少子・高齢化の問題も根はひとつだと思います。正しい政治を行える政府を選べない我々国民の自己責任であるというふうに言ってしまうと、あまりにも自虐的になりますね。
by stochinai | 2005-05-18 11:59 | 大学・高等教育 | Comments(9)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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