2012年 08月 21日
中国で発見された「世界最古」のチーターの化石はプラスチックと他の動物の歯で作られた模造品だった
チーターの進化の歴史を書き換えるということで華々しく登場した論文でした。ほんの3年前のことです。著者はデンマークの研究者と中国の研究者です。
今日からは論文ファイルの右上に赤い烙印が押されています。
最初に論文が出た頃から偽物疑惑のあったPNAS論文がついに取下げられました。Retraction Watch に顛末が詳しく載っています。
実はこの論文が印刷される直前に、ある人脈を通じてゲラを見ることのできた中国の研究者(Deng Tao)らが、この化石は石膏で補完した部分が多すぎるし、最近中国でたくさん「造られている」偽化石だと思うのでPNASに出版をとどまるように連絡したものの、PNASは化石が本物であることを否定する根拠が薄いとして拒否したという経緯があったようです。そこで、Tao さんらは著者の一人である中国(人?)のJi H. Maza´kさんに化石を調べさせて欲しいと申し出ましたが断られ、ウヤムヤのまま3-4年が経過していたのですが、ほ乳類化石の研究者でもあるTaoさんはあきらめませんでした。
PNASには、論文として出版されたものの化石などの貴重な標本は博物館などに収めて、誰でもがアクセスできるようにしなければならないというルールがあります。知らべる調べることができました。
その結果はとんでもないものでした。
・ 採掘場所も地層年代も全然違うところから掘り出したもので、
・ 頬骨は肋骨で作られており、
・ 門歯と主張されていたものは、チーター以外の食肉類の小臼歯を組み合わせてあり、
・ 頭蓋の後頭部はなんとプラスチック製だったのです
紛れも無く、最近中国で暗躍している化石ねつ造商人の「作品」だったのです。こちらのScience論文(2010)をご覧ください。
Altering the Past: China's Faked Fossils Problem
歴史を書き換える: 中国の偽物化石問題
この論文に対してMazakとChristiansenは反論を書いています。
A Defense of the Primitive Cheetah Skull
Science 4 March 2011:
Vol. 331 no. 6021 pp. 1136-1137
DOI: 10.1126/science.331.6021.1136-b
ところが、これも後でわかったことのようですが、論文の英文を書いたのはChristiansenで、Mazakは化石を商人から購入して写真を撮り、Christiansenは実際の標本を見ることなく写真だけの情報で論文を書いていたので、簡単に偽物に騙されていたということのようです。
というわけで、追い詰められたMazakは論文の取り下げを申し出たというわけです。Retraction Watchによると、共著者のChristiansenはこうした論文取り下げの経緯も知らなかったようで、どうにも呆れる以外に反応することができない「事件」のようです。
ネットを調べてみるとすでにこの「事件」は、1年以上前に「疑惑」としてニュースにもなっていました。
大発見は真っ赤なウソ?!「世界最古のチーターの化石」にニセモノ疑惑―中国 (ライブドアニュース)
そこに載っていたチーターの呆れ顔が、この事件の唯一の救いかもしれません(笑)ので、引用させてもらいましょう。
確かに中国からは、お希ご希望があれば、どんな化石でも出てくる印象は強いですよね。恐竜でも鳥でも、リクエスト次第でなんでも出てきそうで恐いです(爆)。
【参考】偽論文が出版された時のニュースを伝える記事
チーターの起源は中国か、世界最古の化石発見―甘粛省
最初に論文が出た頃から偽物疑惑のあったPNAS論文がついに取下げられました。Retraction Watch に顛末が詳しく載っています。
PNASには、論文として出版されたものの化石などの貴重な標本は博物館などに収めて、誰でもがアクセスできるようにしなければならないというルールがあります。
Fossils or other rare specimens must be deposited in a museum or repository and be made available to qualified researchers for examination.これをタテにとって、ついに化石を
その結果はとんでもないものでした。
・ 採掘場所も地層年代も全然違うところから掘り出したもので、
・ 頬骨は肋骨で作られており、
・ 門歯と主張されていたものは、チーター以外の食肉類の小臼歯を組み合わせてあり、
・ 頭蓋の後頭部はなんとプラスチック製だったのです
紛れも無く、最近中国で暗躍している化石ねつ造商人の「作品」だったのです。こちらのScience論文(2010)をご覧ください。
Altering the Past: China's Faked Fossils Problem
歴史を書き換える: 中国の偽物化石問題
この論文に対してMazakとChristiansenは反論を書いています。
A Defense of the Primitive Cheetah Skull
Science 4 March 2011:
Vol. 331 no. 6021 pp. 1136-1137
DOI: 10.1126/science.331.6021.1136-b
ところが、これも後でわかったことのようですが、論文の英文を書いたのはChristiansenで、Mazakは化石を商人から購入して写真を撮り、Christiansenは実際の標本を見ることなく写真だけの情報で論文を書いていたので、簡単に偽物に騙されていたということのようです。
というわけで、追い詰められたMazakは論文の取り下げを申し出たというわけです。Retraction Watchによると、共著者のChristiansenはこうした論文取り下げの経緯も知らなかったようで、どうにも呆れる以外に反応することができない「事件」のようです。
ネットを調べてみるとすでにこの「事件」は、1年以上前に「疑惑」としてニュースにもなっていました。
大発見は真っ赤なウソ?!「世界最古のチーターの化石」にニセモノ疑惑―中国 (ライブドアニュース)
そこに載っていたチーターの呆れ顔が、この事件の唯一の救いかもしれません(笑)ので、引用させてもらいましょう。
【参考】偽論文が出版された時のニュースを伝える記事
チーターの起源は中国か、世界最古の化石発見―甘粛省
by stochinai
| 2012-08-21 19:08
| 生物学
|
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