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あたらしい憲法のはなし

 「あたらしい憲法のはなし」は公布された日本国憲法の解説のために新制中学校1年生用社会科の教科書として発行されたものですが、3年後には副読本になり、5年後にはなくなってしまいました。もう著作権が切れており、いろいろなところから安価あるいは無料で読める読み物として公開されています。

 ウェブ上でも青空文庫で公開されていますし、Kindleストアでも無料で入手できます。
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 占領国アメリカの指導の下に作られたもので、当のアメリカ自体がよく考えてみると、こんなに純粋に「民主主義」と「國際平和主義」と「主権在民主義」を謳われるのは、アメリカにとっても良くないということで「あたらしい憲法のはなし」は早々に引っ込められたのかもしれませんが、一旦作られた憲法は簡単には改正できないようにされていたため今日まで維持されてきたとも言えそうです。

 テキストファイルで書かれている青空文庫はコピペができますので、非常に引用しやすいので使わせてもらいます。
こんどの憲法の根本となっている考えの第一は民主主義です。ところで民主主義とは、いったいどういうことでしょう。

なるべくおゝぜいの人の意見で、物事をきめてゆくことが、民主主義のやりかたです。

國民が、國会の議員を選挙するのは、じぶんの代わりになって、國を治めてゆく者をえらぶのです。

しかしいちばん大事なことは、國会にまかせておかないで、國民が、じぶんで意見をきめることがあります。こんどの憲法でも、たとえばこの憲法をかえるときは、國会だけできめないで、國民ひとり/\が、賛成か反対かを投票してきめることになっています。

よその國と爭いごとがおこったとき、けっして戰爭によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。おだやかにそうだんをして、きまりをつけようというのです。・・・また、戰爭とまでゆかずとも、國の力で、相手をおどすようなことは、いっさいしないことにきめたのです。
 いろいろと良いことが書いてあります。あまりにも美しすぎて、我々には守り切れないと思わせられるようなところもないわけではありませんが、日本が戦争に負けた時にはそのくらい身にしみて「清く正しく美しく」生きようと思う人が多かったのだと思います。

 今回の選挙では、こうして憲法が作られた時の初心をひっくり返すような公約を掲げている人や政党がたくさん出てきているようです。

 たとえば、いろいろな調査で国民の8割くらいの人がもう原子力発電からは脱却したいと思っているということが報道されています。もしこの調査結果が本当ならば、日本では原子力発電をやめるというのが民主主義のやりかたのはずです。それがもし選挙の結果によって、原発をやめないということになったならば選挙のやり方が間違っているということになります。民意が反映されない選挙が憲法違反であることは、最高裁も何度も指摘していることですが、今回もその制度のまま総選挙に突き進んでいるのです。

 また憲法改正は、「一番大事なこと」だから国会に任せないで、国民ひとりひとりが投票して決めることになっています。国会の発議ですらも改正しにくいようにされているのは、まさに憲法の精神なのですが、こちらもこの根本のところを変えようという意見の候補者がいるようです。

 そして、最後の「軍隊と戦争の放棄」も同様です。

 憲法ではこうした重要なことはすべて国民全体の意見で、国会や内閣や裁判所を「指導・指揮」するというしくみを作ることになっているはずです。
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 もし、今そうなっていないのだとしたら、日本の政治体制自体が反憲法的になっているということで、「國でいちばん大事な規則」に従っていないという状況は体制自体が無効ということになります。直接的には最高裁が一票の格差が違憲状態になっていると言っているのに、なりふり構わず選挙に突き進んでいる状況をみると、実はすべての政治家が国民の敵なのではないかと思えてくる投票1週間前なのでした。
by stochinai | 2012-12-10 18:26 | その他 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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