2012年 12月 29日
成功のための組織とリーダー
今日の朝日新聞朝刊オピニオン欄にとても興味深いインタビューと談話記事が載っていました。
インタビューは野球解説者から監督に就任して、いきなり日本ハムをリーグ優勝に導いた栗山英樹監督のものでした。その話の中で、どうしてこんなにすぐに優勝できたのかという秘密が明かされています。(デジタル購読者あるいはアスパラクラブのメンバーはこちらで読めると思います。)

監督は「今年の優勝はフロントの勝利。僕じゃないよ」とあっさりと言い切っています。ご自分に自信がなければ言えない言葉ではありますが、これだけ清々しく言い切ってしまえるのは、日本ハムという球団が組織としてしっかりしているということを理解し、それに乗っかって自分のできることを一所懸命やったら優勝できたという本人の驚きも感じられる言葉です。
日本ハムのすごさのひとつは、若い選手を育てる力だと言われます。貧乏だから仕方がないという声もありますが、貧乏でもこれだけできるということを示すのは金もちをギャフンと言わせる証明にもなっています。どうやって選手を育てるかの秘訣が少しわかるやり取りがあります。
そしてコーチ陣も、自分の知り合いを連れてくるのではなく、いままで日本ハムを指導していた人達をそっくりそのまま継続して使用するという、考えてみれば当たり前のことをやっています。
もうひとつは、優秀なあるいは優秀になるだろう選手をチームのために利己的に使うのではなく、日本の野球界あるいは世界の野球界の逸材を広い視野から育てようとしている姿勢の素晴らしさです。チームの勝ち負けだけにこだわっていないところで、優秀な若手が育ち、結果としてチームが優勝できたという素晴らしい正のスパイラルを実践しています。
そう考えると、大リーグ行きを希望していてドラフト指名を望んでいなかった花巻東高校の大谷翔平選手が日本ハムなら入団しても良いと思ったのは納得できる気がします。大谷選手にとっても日本ハムにとっても良かったのではないでしょうか。逆に、他のチームだったら必ずしもおすすめできないかもしれません。
「今年の優勝はフロントの勝利。僕じゃないよ」と栗山監督に言わせた日本ハムは、確かに北海道に来てから道民の期待を裏切ることのない成績を残し続けています。

このインタビュー記事の下に、この北海道日本ハムファイターズの育ての親でもあり、「監督・選手が変わってもなぜ強い? 北海道日本ハムファイターズのチーム戦略」という本を光文社新書から出している藤井純一さんの談話が載っています。これを読むと、栗山さんの言っている言葉のすべてが理解できます。
冒頭から、「常に優勝を狙い、3年に1回は優勝する。それが北海道日本ハムファイターズの考え方です」というような自信に満ちた言葉が続きます。
研究室の経営や大学の経営も、とりあえずは同じやり方でやってみるのが良いのではないかとかなり強く思わされる記事でした。特殊な業種だからと、難しく考えるところから間違いのスパイラルが始まるのかもしれません。
新書も読んでみましょう。
インタビューは野球解説者から監督に就任して、いきなり日本ハムをリーグ優勝に導いた栗山英樹監督のものでした。その話の中で、どうしてこんなにすぐに優勝できたのかという秘密が明かされています。(デジタル購読者あるいはアスパラクラブのメンバーはこちらで読めると思います。)

――解説者から監督になったのは正直驚きました。要するに日本ハムというチームは監督の力が制限されていて、大リーグと同じような組織運営の下「チームをつくるのはフロントの作業。監督の仕事は与えられた戦力で勝つこと」という分業体制がはっきりしているところが「強さ」の原因なのだというのです。
「僕自身も不安というか、自分で大丈夫なのか自問自答しましたよ。ただ一つ言えることは、僕は日本ハムのやり方がこれからの野球界に必要なんだとすごく思っていました」
――日本ハムのやり方とは。
「日本のプロ野球では、監督に与えられる権限というのはものすごく大きいですよね。だから、間違いが起こるんです」
――間違い?
「監督が代われば、強化方針がすべて変わってしまうことがよくあるでしょう。それだとチームづくりがぶつ切れになって継続性がない。選手は、監督より長くプレーするわけです。常に優勝争いできる戦力を長く維持していくには、中長期のビジョンを大事にしなきゃいけない」
監督は「今年の優勝はフロントの勝利。僕じゃないよ」とあっさりと言い切っています。ご自分に自信がなければ言えない言葉ではありますが、これだけ清々しく言い切ってしまえるのは、日本ハムという球団が組織としてしっかりしているということを理解し、それに乗っかって自分のできることを一所懸命やったら優勝できたという本人の驚きも感じられる言葉です。
日本ハムのすごさのひとつは、若い選手を育てる力だと言われます。貧乏だから仕方がないという声もありますが、貧乏でもこれだけできるということを示すのは金もちをギャフンと言わせる証明にもなっています。どうやって選手を育てるかの秘訣が少しわかるやり取りがあります。
――日本ハムの選手数は65人程度です。1軍戦に出られない育成枠を含め80人を超える球団もあるなか、12球団で最も少ない。自前で育てる選手は多い方がいいのでは。大量の2軍選手を用意しておいて、その中から這い上がってくる選手を待つのではなく、積極的に実戦に使っていくことで強くしていくという、いわばOJTをやっているということでしょうか。
「なぜ選手が伸びるのかと考えれば、試合に出てプレーしないと絶対にそうならない。選手の数が多いと、指揮官はいつでも代えられるという変な安心感がありますが、それだけ個々の選手のプレー機会が少なくなる可能性が出てくる」
そしてコーチ陣も、自分の知り合いを連れてくるのではなく、いままで日本ハムを指導していた人達をそっくりそのまま継続して使用するという、考えてみれば当たり前のことをやっています。
――今季に限れば、前年からのコーチ陣をほぼ代えずに戦いました。組織というものは、自分のためにあるのではなく、自分が組織のためにあるのだという、まったく当たり前の組織論なのですが、スポーツの世界などではリーダーのためにチームを再編成するというような本末転倒を要求するリーダーがたくさんいます。栗山さんはそんな「オレ様」キングダムを作るのではなく、すでにあるこのチームで自分がどんな貢献ができるのだろうかと考えたところが成功の原因だったのだと思えます。
「あれは僕の希望だね。完全に。日本ハムは僕が来る前から、いい結果が出ていた。そのチームの指導者は優秀に決まっている。僕が選手のことを分からないから、知っている人にいてもらった方が絶対いい」
――でも球界では、腹心で自分の周りを固める監督もいます。
「そういう先入観はすべて消そうと思った。僕は引退後、野球の外の世界に出た。その価値観で判断しないと、外にいた意味がない。腹心になるコーチは必要かもしれないが、友達は必要なくて、能力のある仲間に集まってもらいたいだけなので。コーチとは一回も個別に食事しなかった。食べるときは全員一緒です」
もうひとつは、優秀なあるいは優秀になるだろう選手をチームのために利己的に使うのではなく、日本の野球界あるいは世界の野球界の逸材を広い視野から育てようとしている姿勢の素晴らしさです。チームの勝ち負けだけにこだわっていないところで、優秀な若手が育ち、結果としてチームが優勝できたという素晴らしい正のスパイラルを実践しています。
――実績がなかった23歳の中田を4番で使い続けたのも、そんな思いからですか。こんな指導者の下で育った若手は幸せです。
「彼に関しては、僕じゃなくても誰かがプロ野球のためにやらなきゃいけない使命だった。あんなに遠くへ球を飛ばせるし、守りでも器用だし、盗塁のサインを出せるほどスピードもある。21世紀の4番というのはすべてができないといけない。それほどの素材。途中で外そうとは全く思わなかった」
そう考えると、大リーグ行きを希望していてドラフト指名を望んでいなかった花巻東高校の大谷翔平選手が日本ハムなら入団しても良いと思ったのは納得できる気がします。大谷選手にとっても日本ハムにとっても良かったのではないでしょうか。逆に、他のチームだったら必ずしもおすすめできないかもしれません。
「今年の優勝はフロントの勝利。僕じゃないよ」と栗山監督に言わせた日本ハムは、確かに北海道に来てから道民の期待を裏切ることのない成績を残し続けています。

冒頭から、「常に優勝を狙い、3年に1回は優勝する。それが北海道日本ハムファイターズの考え方です」というような自信に満ちた言葉が続きます。
ファイターズは、チーム統轄(とうかつ)本部が選手をそろえ、その戦力でやってくれる人を監督にします。すごいと思いました。一般営利企業と同じ発想でプロ野球球団を経営するというある意味自然体のやり方が最高だと言っています。
ファイターズは本拠を北海道に移してから、優勝を争い、地域に支持され、自立した経営ができる球団という、ぶれないビジョンがあります。
自立経営では予算は限られます。高額年俸の選手を呼び込むことはできず、ドラフト指名選手の育成に重点を置きます。昨年の菅野智之や先日入団が決まった大谷翔平を1位で指名し、サプライズと言われました。ファイターズには、様々な項目で選手を評価し点数化するベースボール・オペレーション・システム(BOS)があります。自軍選手はもちろん、他球団の選手、アマチュア選手についても分析できます。それに基づいてアマ選手のランキングを作成、最上位にいる選手がその年最も優れているわけですから、1位指名しない方が不自然なんです。
チーム統轄本部長の発想です。分からない分野は、分かる人に権限を委譲する。中田翔が打てない時期があっても、オーナーが口を挟むこともありません。
私がファイターズの社長になってから、出向社員は親会社に戻ってもらった。球団が赤字でも成績が悪くても、出向だと親会社の業績で給料をもらえる。帰属意識が持てないんです。それを、自分たちの球団は自分たちの手で、という意識に変えた。球団独自の売り上げも年々増えました。
プロ野球の球団も企業。資金力のある球団ばかりではない。身の丈に合った経営をしなければ、維持できないんです。
研究室の経営や大学の経営も、とりあえずは同じやり方でやってみるのが良いのではないかとかなり強く思わされる記事でした。特殊な業種だからと、難しく考えるところから間違いのスパイラルが始まるのかもしれません。
新書も読んでみましょう。
by stochinai
| 2012-12-29 22:56
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