5号館を出て

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「レ・ミゼラブル」転じて「東京家族」

 久しぶりに劇場で映画でも見ようかと出かけました。そろそろ当初の人気も落ち着いてきたかと思い、「レ・ミゼラブル」を目指して出かけたのですが、開演1時間前にすでに満席になってしまっていました。せっかくシネコンまでやってきたので、何も見ないで帰るというのも悔しかったので、まあこれなら見てもいいかなということで選んだのは「東京家族」でした。(引用写真は公式ホームページから)

 封切りの邦画を見るのはおそらく大学院生時代以来のことではないかと思いながら、正直に言うとまったく何の期待もせずに見させていただきました。
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 結果的には予想に反して、割引料金ではありましたが1000円を払って見るに値するいい映画だと思いました。正規料金の1800円だとどうか、と問われるとちょっと返答に窮するかもしれませんが、お金と時間の無駄をしてしまったという大きな後悔を感じてしまうような作品ではないと言えます。

 この作品が捧げられた小津安二郎監督の作った1953年の「東京物語」がベースになっているということですが、私が生まれた頃に作られたその作品は見ておりません。「東京物語」は、解説を読む限りにおいては非常に先見的な作品だったようで、現在の日本(そして世界)社会における高齢化問題、家族や親族の崩壊といったことが的確に描かれていたようです。(ポスターはWikipediaから)
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 ほぼ同じような問題を現代風に描くと、「東京家族」ができあがるのでしょう。まさに、今の日本ならどこでも普通に見られる家族・親族の問題が浮き彫りにされているということになります。まさに「これは、あなたの物語」と言われるように、誰でもが「ある、ある」と思いながら見てしまう場面が次々と出てきます。

 映画の始まりのところでは、小津作品へのオマージュとしてあえてやっているのだろうと思われるセリフ回しを含めたテンポの遅さがちょっと気になったのですが、我々の日常のテンポというものが「映画とは違ってこのくらいだろう」ということを監督が表現したかったのかもしれないという風に考えると、その意図がなんとなく納得できてきました。

 達者な演技陣をうまく使いこなした山田洋次監督の意図は成功していると言えそうです。
「レ・ミゼラブル」転じて「東京家族」_c0025115_2111452.jpg
 だからと言って、これからも邦画をどんどん見たくなったかというと、決してそんなことはないのは、やはりこの映画が現代の邦画としては異色だからという気がするからなのでした。
by stochinai | 2013-02-11 21:44 | 札幌・北海道 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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