2013年 03月 07日
オタマジャクシの尾に生えた眼が光を感じていた!
何十年も前からオタマジャクシの尾に眼を作る実験は繰り返されてきました。私もアフリカツメガエルでなんども尾に眼のあるオタマジャクシを作ったことがあります。もちろん変態して尾が短くなると、その眼はお尻のところに移動するのですが、この眼が光を感じて脳にその情報を送っているなどとは想像したこともありませんでした。
ところが、尾に生えた眼は光を感じているという論文(オープン・アクセス)が発表されました。
尾に眼をつけるやり方は幾通りもあるのですが、もっとも確実なのは胚の時期に眼のできるあたりの組織をまるごと尾に移植することです。免疫学的に異なる個体だと大きくなってから拒絶されてしまうことがあるので、自分の眼ができる領域を自分の尾に移植するのがもっとも確実ですが、今ではクローンや純系が使えますので、それらの間では自由に移植ができます。今回の実験のようにカエルにまで育てる気がないのならば、遺伝的差などはあまり気にしないでもそれほど大きな問題にはなりません。
手術自体も極めて簡単で、それほど熟練しなくても比較的簡単にできます。
この写真をみればすぐにわかると思いますが、Aの胚から眼ができる領域を切り取ってBの胚の尾ができるあたりに移植します。翌日には胚が伸びるとともに移植された「眼」の原基もはっきりと見えます(C)。尾に眼を生やすことも、自分の眼を取ることも簡単なので、それらを組み合わせて作ったオタマジャクシがDからGです。
あらかじめ尾に移植する眼の原基を提供するオタマジャクシに蛍光を発する遺伝子を導入しておけば、移植された眼から出てくる視神経がどこにつながったかも簡単に知ることができます。
これはケース・バイ・ケースなのですが、さすがに頭に作られた正常な眼とは異なり、遠くにある脳にまで神経を送り込むものは見られませんでした。しかし、あるものは胃へ神経を送りこみ、またあるものは胴体の方へ神経を送り込んでいました、胴体の筋肉の中に神経が入っているものの一部は、おそらく脊髄にまで神経線維を到達させているものもあると考えられました。
ここからが行動実験です。不思議なことに眼のないオタマジャクシでも青い光を感じて、行動が活発になることがわかりました。
眼があってもなくても、オタマジャクシは赤い光の中では落ち着いてゆっくり泳ぎ、青い光の中では活発に早く泳ぐという行動を示すことがわかりました。つまり青い光を感じるためには眼はいらないということです。
昔からオタマジャクシは眼がなくても、松果体や上生体というところで光を感じることが知られています。また、尾の先の細胞は直接光を感じることも知られています。今回の話は、それとは関係ありません。
まず、眼のないオタマジャクシは赤い光を感じられないらしいことが示されます。
赤い光の下に来た時に電気ショックを与えて赤い光から逃げるように学習させるようにすることができるのですが、眼を取られた個体はこの学習ができなくなります。
ところが、ところがです。
眼をなくしていても、尾に眼が生えているオタマジャクシは、この赤い色の下に来るとショックを与えられるという条件付けの学習ができるようになっていたのです。
もちろん100%正常な個体と同じと言うわけにはいきません。やはり尾に生えた眼から出た神経が胃につながったようなものではダメで、おそらく脊髄につながった視神経を持ったものが赤い光を感知して、それから逃げる(明らかに大脳での情報処理がされている証拠です)ことができるようになったということを示していると考えられます。
これは将来の「再生医療」に対する大きな示唆を与える実験だと考えることもできます。眼を失った場合、必ずしももとtの眼と同じ位置に新しい眼を再生させなくても、眼の機能(の一部:光と色を感じる)が復活し、行動の前提となる感覚として生かされうるということです。
もちろん、複雑な画像を認識しているとは考えにくいのですが、それとてどうなるかわからないという気もしてきます。
Eテレの「大科学実験」じゃないですが、やっぱり「やってみなくちゃわからない」です。
これぞ、実験科学の醍醐味です。
ところが、尾に生えた眼は光を感じているという論文(オープン・アクセス)が発表されました。
手術自体も極めて簡単で、それほど熟練しなくても比較的簡単にできます。
あらかじめ尾に移植する眼の原基を提供するオタマジャクシに蛍光を発する遺伝子を導入しておけば、移植された眼から出てくる視神経がどこにつながったかも簡単に知ることができます。
ここからが行動実験です。不思議なことに眼のないオタマジャクシでも青い光を感じて、行動が活発になることがわかりました。
昔からオタマジャクシは眼がなくても、松果体や上生体というところで光を感じることが知られています。また、尾の先の細胞は直接光を感じることも知られています。今回の話は、それとは関係ありません。
まず、眼のないオタマジャクシは赤い光を感じられないらしいことが示されます。
ところが、ところがです。
眼をなくしていても、尾に眼が生えているオタマジャクシは、この赤い色の下に来るとショックを与えられるという条件付けの学習ができるようになっていたのです。
これは将来の「再生医療」に対する大きな示唆を与える実験だと考えることもできます。眼を失った場合、必ずしももとtの眼と同じ位置に新しい眼を再生させなくても、眼の機能(の一部:光と色を感じる)が復活し、行動の前提となる感覚として生かされうるということです。
もちろん、複雑な画像を認識しているとは考えにくいのですが、それとてどうなるかわからないという気もしてきます。
Eテレの「大科学実験」じゃないですが、やっぱり「やってみなくちゃわからない」です。
これぞ、実験科学の醍醐味です。
by stochinai
| 2013-03-07 19:44
| 札幌・北海道
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