2013年 05月 11日
開講式平田オリザ氏講演会
昨日の春は幻想だったかのように朝から肌寒く雨の一日でしたが、2013年度CoSTEPの開講式が行われた理学部5号館大講堂は全ての席が埋まってもまだ人が入り続けるという熱い状態でした。もちろん、大多数の参加者はCoSTEPの新入受講生ではなく、平田オリザ氏の講演会「わかりあえないことから」に参加する一般市民の方々です。この部屋は椅子の数が250だったはずですので、立ち見の方を入れるとだいたい300名くらいの参加者だったでしょうか。さすがに著名人の集客力は違うものです。
現れて登壇を待つオリザさんはテレビなどで見慣れたあの方でしたが、一回り我々に身近な存在だという親近感を感じさせられる方でした。
プロフィールの写真よりは白髪が多いというのが第一印象でした。
話し始めるとさすがに「プロ」の話術で、阪大の教授という肩書きよりは、劇作家・演出家の方がはるかにしっくりすると感じたのは、大学の先生の話術とはひと味もふた味も違うと思えたからです。私としては、話の中身はすでに読んでいたことだったので、今日は話し方教室としてじっくりと味わわせていただいた感じです。
パワーポイントのスライドショーがなかなか始まらないという小さなトラブルにもまったく動じずに話を続けておられるうちに、ようやく最初のスライドが出てきました。アンドロイド演劇です。
私などは準備したスライドなしに講義や講演をするなどということは悪夢以外の何物でもありませんが、オリザさんはおそらくスライドが映らないということになっても、ほとんど何の影響も受けずに話を続けられますね。
本人がおっしゃるように「書くように話し、話すように書く」ので、本を読んでもオリザさん、話を聞いてもオリザさん、ワークショップをやってもオリザさん、演劇でもオリザさん、というふうにメディアに縛られずにコミュニケーションできる方なのだと感心しながら聞かせていただきました。
いちおう「板書」もされるのですが、これも強いて言えばなくても大丈夫という程度の「軽い」位置にあるもので、やはり話術にかけてはかなりのレベルの方だと感じました。
そして、今日の講演のもっとも重要なキーワードはこれです。
「コンテクスト」
しばしば文脈と訳されるこの言葉で表される「状況」を理解し、それに適切に対応できさえすれば、コミュニケーションに怖いものはないし、若者のコミュニケーション能力を問題にする前に、彼らがコンテクストを適切に理解し、それに的確に対応できるような環境を作ってやることがいかに大切かを強調されていました。
そのように、若者の側に対する暖かい視点で現実の問題を読み解いていらっしゃるだけではなく、一方では若者たちに対しても自分たちをコミ障(コミュニケーション障害)だからという言葉で面積するな、とおっしゃっていたことが印象の残っています。本田由紀さん達が「ニートって言うな」という本を書かれていましたが、この「コミ障って言うな」というのも、新書一冊は書けそうなタイトルになると思えたものです。
今日の講演を聞いた人も聞いていない人も、オリザさんの本を読むことをお勧めします。
わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書) [新書]
平田 オリザ (著)
価格:¥ 777
キンドル版もあります。
わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書) [Kindle版]
平田オリザ (著)
Kindle 価格: ¥ 630 (税込)
私はKindle版を購入し読んでいたのですが、今日著者ご本人を前にしてこの電子書籍の欠点のひとつをひしひしと感じてしまいました。そうです、著者のサインが貰えないのです。
まあ、それはさておきオリザさんの講演の最後のスライドはタマネギでした。
これは、本の中にもかいてあるこちらの文章に対応しています。
NHKも外国人をフィーチャーして「ハーバード白熱教室」なんてやってないで、オリザさんのような講義(多分、日本にも何十人かいますよ)をもっと大々的にとりあげるべきじゃないですか。
現れて登壇を待つオリザさんはテレビなどで見慣れたあの方でしたが、一回り我々に身近な存在だという親近感を感じさせられる方でした。
話し始めるとさすがに「プロ」の話術で、阪大の教授という肩書きよりは、劇作家・演出家の方がはるかにしっくりすると感じたのは、大学の先生の話術とはひと味もふた味も違うと思えたからです。私としては、話の中身はすでに読んでいたことだったので、今日は話し方教室としてじっくりと味わわせていただいた感じです。
パワーポイントのスライドショーがなかなか始まらないという小さなトラブルにもまったく動じずに話を続けておられるうちに、ようやく最初のスライドが出てきました。アンドロイド演劇です。
本人がおっしゃるように「書くように話し、話すように書く」ので、本を読んでもオリザさん、話を聞いてもオリザさん、ワークショップをやってもオリザさん、演劇でもオリザさん、というふうにメディアに縛られずにコミュニケーションできる方なのだと感心しながら聞かせていただきました。
そして、今日の講演のもっとも重要なキーワードはこれです。
しばしば文脈と訳されるこの言葉で表される「状況」を理解し、それに適切に対応できさえすれば、コミュニケーションに怖いものはないし、若者のコミュニケーション能力を問題にする前に、彼らがコンテクストを適切に理解し、それに的確に対応できるような環境を作ってやることがいかに大切かを強調されていました。
そのように、若者の側に対する暖かい視点で現実の問題を読み解いていらっしゃるだけではなく、一方では若者たちに対しても自分たちをコミ障(コミュニケーション障害)だからという言葉で面積するな、とおっしゃっていたことが印象の残っています。本田由紀さん達が「ニートって言うな」という本を書かれていましたが、この「コミ障って言うな」というのも、新書一冊は書けそうなタイトルになると思えたものです。
今日の講演を聞いた人も聞いていない人も、オリザさんの本を読むことをお勧めします。
わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書) [新書]
平田 オリザ (著)
価格:¥ 777
キンドル版もあります。
わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書) [Kindle版]
平田オリザ (著)
Kindle 価格: ¥ 630 (税込)
私はKindle版を購入し読んでいたのですが、今日著者ご本人を前にしてこの電子書籍の欠点のひとつをひしひしと感じてしまいました。そうです、著者のサインが貰えないのです。
まあ、それはさておきオリザさんの講演の最後のスライドはタマネギでした。
科学哲学が専門の村上陽一郎先生は、人間をタマネギにたとえている。タマネギはどこからが皮でどこからがタマネギ本体ということはない。皮の総体がタマネギだ。というわけで、結論は私が数日前に書いたように、
本当の自分なんてない。私たちは、社会における様々な役割を演じ、その演じている役割の総体が自己を形成している。ということになりました。
NHKも外国人をフィーチャーして「ハーバード白熱教室」なんてやってないで、オリザさんのような講義(多分、日本にも何十人かいますよ)をもっと大々的にとりあげるべきじゃないですか。
Commented
by
ぢゅにあ
at 2013-05-13 04:17
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アンドロイド劇「さようなら」は2年前くらいに動画で見たことがあったんですが、この方の演出だったんですね。
ところで「タマネギ」を見るとアニメ映画シュレックの台詞を思い出します。
"Ogres are like onions. They both have layers"
このLayersが何を意味するのかどうもしっくりしないまま十数年、お陰さまでようやく納得できました。
ところで「タマネギ」を見るとアニメ映画シュレックの台詞を思い出します。
"Ogres are like onions. They both have layers"
このLayersが何を意味するのかどうもしっくりしないまま十数年、お陰さまでようやく納得できました。
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by stochinai
| 2013-05-11 23:59
| CoSTEP
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Comments(1)