5号館を出て

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今まで、研究費は基礎研究にもフェアに配分されていたのか?

 今朝、季節外れのクリスマスカクタスが咲きました。
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 よく見ると、続いて咲きそうな蕾もあります。
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 春が寒かったせいなのでしょうか。人間にとっては花を愛でる機会が増えるのはありがたいことですが、植物にとっては重要な生殖の機会である開花の時期がふらつくのは決して良いことではないでしょう。

 さて、選挙が近いせいか、政府は次々と教育や研究に対する斬新な政策のアドバルーンを上げ続けています。その中でも「日本版NIH」を作ろうという構想に関しては、研究者に配分される研究費の行方を大きく変える恐れがあるため、民主党の事業仕分け以来の各学会から反対声明が次々と出されています。

 日本版NIH構想については、この産経ニュース記事がわかりやすいです。
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 この構想に対して、昨日いち早く、生命科学系7学会(日本生化学会、日本癌学会、日本細胞性物学会、日本免疫学会、日本神経科学学会、日本ウィルス学会、日本分子生物学会)が共同声明を出しました。

健康医療分野における研究助成のあり方について(緊急声明)
-「日本版NIH」構想と裾野の広い基礎研究の必要性-


 そして今日、生物科学学会連合(賛同加盟団体27団体)と日本分類学会連合(加盟団体25団体)、さらにいくつかの賛同団体が連盟で声明を予定していることが明らかになりました。

緊急声明 
「日本版NIH」構想における資源配分と人材育成プロセスへの懸念


 どちらも要するに、現在あちこちに分散している研究費配分組織を、NIHという医療研究を究極目的とする研究資金配分機関に集中してしまったならば、いわゆる医療研究から遠くにある「基礎研究」への研究費が配分されなくなるという恐怖感がヒシヒシと感じられる切実な内容となっています。

 一方、最近ではいわゆる基礎研究でもその研究成果が「将来は****の役に立つ」ということを書くことが推奨されていると同時に、申請書を書く側の「気分」としてもなんとなくそういう「リップサービス」を書くことが常態化しているのも事実です。

 つまり、もうすでに現実問題としては、たとえ「基礎研究」といえども応用に繋がる可能性がなければ研究費がもらえないのではないかという雰囲気が横溢しているのもまた事実ではないでしょうか。現実は、すでに日本版NIHの目指す方向に動き出していたのではないでしょうか。

 そんな中で、最後の致命傷となるのがこの日本版NIH構想だという危機感を持っている研究者が多いのだと思いますが、「ついに来るものが来た」というふうに捉えている人も多いのではないでしょうか。

 お役所間の統廃合問題などはどうでもよい話ですが、ここで日本版NIH抗争(構想でした^^)が頓挫したとしても、研究費をめぐる応用重視の流れはすでに奔流となってしまっていると感じます。

 だったら何もしないのか、と責められるかもしれませんが、もちろん各学会の提出する抗議声明には賛同いたしますが、時すでに遅しという思いは消えません。

 この話とはまったく関係のないことで恐縮ですが、土曜日に播いたアサガオが次々と芽を出し始めました。
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 人と違って、素直に反応してくれる植物とだけ付き合う生活が待ち遠しい、今日此の頃です。
by stochinai | 2013-06-11 19:37 | 科学一般 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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