2005年 06月 19日
活字離れなんてウソです
活字離れという言葉は、本が売れなくなったという意味で使われているのだと思います。
本が売れなくなったのは事実かもしれませんが、新しく出版されている本の数は減っていないどころかどんどん増えていると聞きました(これについては、後で調べてみます)。
それだけたくさん出すということは、それなりに売れるから出すはずです。爆発的に売れる本が出なくなったら活字離れなのでしょうか。
コンピューター時代になって印刷技術の革新により、活字というものが印刷業界で使われなくなってからしばらく経っています。つまり、言葉通りに使うとすると活字離れしたのは、読者ではなく印刷・出版する側のほうです。
「活字離れ」という言葉を聞くと、いつもこういう難癖をつけたくなる気分になります。
利用者側から言わせていただくと、活字であろうが手書き文字であろうが文字による情報伝達手段とそれ以外という分け方はあり得ても、活字かどうかなどということに本質的意味はありません。
そういう意味では、メールやインターネットが全盛の今は、文字文化が花盛りであると考えることもできるわけで、「活字離れ」どころか「活字依存症」の時代でもあると言っても良いのかもしれません。
ネットを通じて流れているフォントの数を調べることは可能だと思います。もちろん、決して読まれることのないスパムも多いですが、ともかくも読まれることを前提に流れているフォントのバイト数をカウントしてみると、現代がおそらくかつてないほどの文字文化時代にあることは比較的簡単に証明できるのではないでしょうか。
一方で、本の時代に比べると文字情報を売って金儲けすることが難しくなっているのは事実かもしれません。しかし、文字情報の伝達方法が印刷媒体から電子媒体に変わってしまったにもかかわらず、本の時代と同じように課金できると思っている方がおかしいのです。
活字離れは起こっていないということを認め、印刷物(本や新聞)の形でお金を稼ぐことができる時代が終わったことを認めること、その上で新しい商売を考えるのは良いと思いますが、時代に流れを止めて法律などで旧来の金の稼ぎ方を守ろうなどということはやめておいた方が、絶対にによろしいと思います。
FIFTH EDITIONさんのおっしゃるように
デジタル化できる情報は、全てネットで共有してしまったほうがいい。
我々のような出版に関わる人間にとって、
重要なのは、そういった流れの上で、
自分達の十分な取り分を確保することであり、
ネットによってもたらされた知識の共有を阻害することではない。
を前提に、どうやって「取り分」を確保するかを考えることこそが求められているのだと思います。
本が売れなくなったのは事実かもしれませんが、新しく出版されている本の数は減っていないどころかどんどん増えていると聞きました(これについては、後で調べてみます)。
それだけたくさん出すということは、それなりに売れるから出すはずです。爆発的に売れる本が出なくなったら活字離れなのでしょうか。
コンピューター時代になって印刷技術の革新により、活字というものが印刷業界で使われなくなってからしばらく経っています。つまり、言葉通りに使うとすると活字離れしたのは、読者ではなく印刷・出版する側のほうです。
「活字離れ」という言葉を聞くと、いつもこういう難癖をつけたくなる気分になります。
利用者側から言わせていただくと、活字であろうが手書き文字であろうが文字による情報伝達手段とそれ以外という分け方はあり得ても、活字かどうかなどということに本質的意味はありません。
そういう意味では、メールやインターネットが全盛の今は、文字文化が花盛りであると考えることもできるわけで、「活字離れ」どころか「活字依存症」の時代でもあると言っても良いのかもしれません。
ネットを通じて流れているフォントの数を調べることは可能だと思います。もちろん、決して読まれることのないスパムも多いですが、ともかくも読まれることを前提に流れているフォントのバイト数をカウントしてみると、現代がおそらくかつてないほどの文字文化時代にあることは比較的簡単に証明できるのではないでしょうか。
一方で、本の時代に比べると文字情報を売って金儲けすることが難しくなっているのは事実かもしれません。しかし、文字情報の伝達方法が印刷媒体から電子媒体に変わってしまったにもかかわらず、本の時代と同じように課金できると思っている方がおかしいのです。
活字離れは起こっていないということを認め、印刷物(本や新聞)の形でお金を稼ぐことができる時代が終わったことを認めること、その上で新しい商売を考えるのは良いと思いますが、時代に流れを止めて法律などで旧来の金の稼ぎ方を守ろうなどということはやめておいた方が、絶対にによろしいと思います。
FIFTH EDITIONさんのおっしゃるように
デジタル化できる情報は、全てネットで共有してしまったほうがいい。
我々のような出版に関わる人間にとって、
重要なのは、そういった流れの上で、
自分達の十分な取り分を確保することであり、
ネットによってもたらされた知識の共有を阻害することではない。
を前提に、どうやって「取り分」を確保するかを考えることこそが求められているのだと思います。
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inoue0 at 2005-06-20 03:14
「活字離れ」というからには、昔の人は活字を読んでいたのでしょうかね?違います。本を読むこと=知識階級の特権であり、一般人は新聞を読むのがやっとだったのです。
たしかに90年代以来の不況で、出版の市場規模はどんどん減ってます。物書きだけで食べられる人は少なくなりました。でも、それはここ10年ぐらいの短期の問題なんです。
100年ぐらいのスパンで見れば、現在ほど多くの人が活字を読んでいる時代はないはずです。
たしかに90年代以来の不況で、出版の市場規模はどんどん減ってます。物書きだけで食べられる人は少なくなりました。でも、それはここ10年ぐらいの短期の問題なんです。
100年ぐらいのスパンで見れば、現在ほど多くの人が活字を読んでいる時代はないはずです。
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出版物の数は増えていますが,出版社全体の売上は下がっているのです.
国内の出版点数の推移は,概ね以下のとおりです.
1996 1999 2001 2003
60452 62621 71073 75430
# 世界国勢図会 2004-2005 より
売上げはについて,手元に統計はありませんが,この7-8年で,10%ちかくさがったと聞きました.
四季報などで,大手の出版社の業績をみれば大体の傾向は判るでしょう.
小学館の知人によると,この数年集英社で少年ジャンプ(世界一の少年向け週刊誌)の販売部数がさがり続けているそうです.つまり,マンガも売れなくなってきているということです.
以下のWebに出版不況の解説をみつけました.
http://homepage3.nifty.com/hon-yaku/tsushin/pub/bn/stat.html
国内の出版点数の推移は,概ね以下のとおりです.
1996 1999 2001 2003
60452 62621 71073 75430
# 世界国勢図会 2004-2005 より
売上げはについて,手元に統計はありませんが,この7-8年で,10%ちかくさがったと聞きました.
四季報などで,大手の出版社の業績をみれば大体の傾向は判るでしょう.
小学館の知人によると,この数年集英社で少年ジャンプ(世界一の少年向け週刊誌)の販売部数がさがり続けているそうです.つまり,マンガも売れなくなってきているということです.
以下のWebに出版不況の解説をみつけました.
http://homepage3.nifty.com/hon-yaku/tsushin/pub/bn/stat.html
比較する対象をどこに持ってくるかで主張も変わってくるかもしれませんね。Dr.Jasonさんご指摘のように,売上高を確保するために出版点数を増やさなくてはなりません。出版物の商品魅力の低下や商品寿命が短くなったということしか言えないですね。
膨大な文字情報についても,新鮮なもの,興味のあるものを選択的に取り出すためのベースが大きいだけで,量的な依存は言えても,質的な依存という意味での関わりがどうなのかは,何とも言えないです。
対価を払う行為が,ある程度の質的な依存を引き出す(お金払った以上は元を取らねば!)ということはあるかもしれませんので,お金の稼ぎ方も大事かもしれませんが,ネット上の情報を「読む」というときの身体的な関わり方が私は一番気になります。パソコン画面で文字を読むのは,やはり疲れます。歳をとったらどうなるんだろうと不安です。^_^;
膨大な文字情報についても,新鮮なもの,興味のあるものを選択的に取り出すためのベースが大きいだけで,量的な依存は言えても,質的な依存という意味での関わりがどうなのかは,何とも言えないです。
対価を払う行為が,ある程度の質的な依存を引き出す(お金払った以上は元を取らねば!)ということはあるかもしれませんので,お金の稼ぎ方も大事かもしれませんが,ネット上の情報を「読む」というときの身体的な関わり方が私は一番気になります。パソコン画面で文字を読むのは,やはり疲れます。歳をとったらどうなるんだろうと不安です。^_^;
はじめまして。
記事をご紹介いただきありがとうございます。
>>Dr. Jason さん
ジャンプの落日は今にはじまった事じゃありません。
DBとスラムダンクが終った時から
はじまった発行部数の減少は、一時、最盛期の600万部から
290万部まで落ちました。
別に柱とよばれる漫画が終了した時に
発行部数が落ち込むのは
少年漫画では珍しくもなく、サンデーで
タッチとうる星やつらが終了した時も
発行部数が300万部から150万ちかくまで
落ちました。サンデーは、まだ、そのショックから
立ち直れていません。
ただ、柱終了というだけでは説明できない事もあって
ご紹介のサイトでも扱われていますが
漫画界では、もう発行部数の落ちは
どうしようもない問題で、90年台初頭から始まった
少年紙の発行部数の減少はとまる気配がありません。
ネットや、ブックオフにもろに客を食われているというのが
業界での見方なんですけど
もう、紙というのは有料でうるのが難しい時代なのだと
僕は感じています。
記事をご紹介いただきありがとうございます。
>>Dr. Jason さん
ジャンプの落日は今にはじまった事じゃありません。
DBとスラムダンクが終った時から
はじまった発行部数の減少は、一時、最盛期の600万部から
290万部まで落ちました。
別に柱とよばれる漫画が終了した時に
発行部数が落ち込むのは
少年漫画では珍しくもなく、サンデーで
タッチとうる星やつらが終了した時も
発行部数が300万部から150万ちかくまで
落ちました。サンデーは、まだ、そのショックから
立ち直れていません。
ただ、柱終了というだけでは説明できない事もあって
ご紹介のサイトでも扱われていますが
漫画界では、もう発行部数の落ちは
どうしようもない問題で、90年台初頭から始まった
少年紙の発行部数の減少はとまる気配がありません。
ネットや、ブックオフにもろに客を食われているというのが
業界での見方なんですけど
もう、紙というのは有料でうるのが難しい時代なのだと
僕は感じています。
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inoue0 at 2005-06-20 17:17
ジャンプ凋落の理由は、「消えたマンガ家」の1巻を読んでいただければ、ある仮説で説明がなされています。
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花見月
at 2005-06-20 18:38
x
漫画雑誌をだしているような出版社はまだいいんです。
食物連鎖ピラミッドの頂点にいるんですから。
悲惨なのは、最下層のフリーランスたちです。
売れる見込みが読めない普通の本1冊書いて
もらえる印税、50万から100万ぐらい。
本業がある人が書くのでなければ、まともに取材して
一冊いい本書こうと思ったら、1年、2年かかるでしょう。
食ってけません。
執筆中を支えてくれる、雑誌などの短文記事の単価が
どんどん下がっています。
出版社が自分たちの利益を確保しようとすればするほど、
コンテンツの製作者たちはみじめなありさまです。
数年前まで編集者に企画を持っていくと、
第一声は「おもしろそうですねえ」でした。
今は第一声が「その本売れますか」です。
仕方ないのかもしれません。いいです。
でも、だったら再販制の権利は手放すべきです。
文化の担い手の矜持は捨ててるんですから。
食物連鎖ピラミッドの頂点にいるんですから。
悲惨なのは、最下層のフリーランスたちです。
売れる見込みが読めない普通の本1冊書いて
もらえる印税、50万から100万ぐらい。
本業がある人が書くのでなければ、まともに取材して
一冊いい本書こうと思ったら、1年、2年かかるでしょう。
食ってけません。
執筆中を支えてくれる、雑誌などの短文記事の単価が
どんどん下がっています。
出版社が自分たちの利益を確保しようとすればするほど、
コンテンツの製作者たちはみじめなありさまです。
数年前まで編集者に企画を持っていくと、
第一声は「おもしろそうですねえ」でした。
今は第一声が「その本売れますか」です。
仕方ないのかもしれません。いいです。
でも、だったら再販制の権利は手放すべきです。
文化の担い手の矜持は捨ててるんですから。
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stochinai at 2005-06-20 21:28
あまりできの良くないエントリーに対して、たくさんの情報やご意見をありがとうございました。
活字を媒介にして長いこと世界の教養や政治などを支配してきた出版や報道も、社会全体の構造が大きく変わろうとしている状況の中で保守的に生き残れるはずがないのは、誰でもが感じていることだろうと思います。
破壊が進行中のようにも見えるのですが、目を凝らすと廃墟の中から芽吹きつつあるものが見えるように思えることもあります。傍観しているくらいなら、その中で気に入った芽を育てることに荷担する方が楽しそうです。
活字を媒介にして長いこと世界の教養や政治などを支配してきた出版や報道も、社会全体の構造が大きく変わろうとしている状況の中で保守的に生き残れるはずがないのは、誰でもが感じていることだろうと思います。
破壊が進行中のようにも見えるのですが、目を凝らすと廃墟の中から芽吹きつつあるものが見えるように思えることもあります。傍観しているくらいなら、その中で気に入った芽を育てることに荷担する方が楽しそうです。
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ぢゅにあ
at 2005-06-21 00:20
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日本でマンガが落込んでるなんて知りませんでした。アメリカで「MANGA」は今もっともクールな日本文化です。大学の授業にもなっているようですよ。
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inoue0 at 2005-06-21 00:45
フリーライターの就職案内書みたいな本には、
「ライターになりたい?バカなことを言うな。まずは出版社に入る努力をしろ。ライターってのは、出版社の下請けでしかないんだよ。編集の方がはるかに割のいい商売だし、業界にコネクションも築けるんだ」
だそうです。見も蓋もないご意見ですが、実際そうらしい。
「ライターになりたい?バカなことを言うな。まずは出版社に入る努力をしろ。ライターってのは、出版社の下請けでしかないんだよ。編集の方がはるかに割のいい商売だし、業界にコネクションも築けるんだ」
だそうです。見も蓋もないご意見ですが、実際そうらしい。
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inoue0 at 2005-06-21 00:50
マンガに限らないんですが、90年代以降は、メガヒットが続出して、まったく売れないその他大勢と少数のヒットに二極分化する傾向があります。この理由を説明した本が「消費資本主義」です。
井上雄彦なんて、おそらく一部の年齢層の人しか知らないと思いますが、歴代マンガ家中、最速で単行本1億部を達成しました。私は一冊も読んでいない。
井上雄彦なんて、おそらく一部の年齢層の人しか知らないと思いますが、歴代マンガ家中、最速で単行本1億部を達成しました。私は一冊も読んでいない。
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stochinai at 2005-06-21 19:23
漫画を読まない私も、漫画が落ち込んでいるとは知りませんでしたが、余丁町さんのところで、かつて「もてはやされた日本製アニメの人気が本場の米国で曲がり角を迎えている」ということが書かれていました。
http://homepage.mac.com/naoyuki_hashimoto/iblog/C1310380191/E20050621164847/index.html
お金儲けは難しいものです。
http://homepage.mac.com/naoyuki_hashimoto/iblog/C1310380191/E20050621164847/index.html
お金儲けは難しいものです。
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akihiroino at 2005-06-23 07:34
↑のページのデータは無茶苦茶貧困ですよ。
2000年からのデータしかないし、半分がゲームタイアップ作品。
1990年代からのデータだけみて「少年犯罪が増えた」と言ってるようなものです。
長期的にみれば、日本のアニメはどんどん輸出が増えてます。メガヒットになってないだけで。
2000年からのデータしかないし、半分がゲームタイアップ作品。
1990年代からのデータだけみて「少年犯罪が増えた」と言ってるようなものです。
長期的にみれば、日本のアニメはどんどん輸出が増えてます。メガヒットになってないだけで。
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stochinai at 2005-06-23 15:01
akihiroinoさん、コメントありがとうございました。安易に引用してしまいましたが、ご指摘の点これからは注意したいと思います。
そちらのエントリーにもTB送らせていただきましたが、これからもよろしくお願いいたします。
そちらのエントリーにもTB送らせていただきましたが、これからもよろしくお願いいたします。
by stochinai
| 2005-06-19 23:36
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