5号館を出て

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全ゲノムを比較してみるとやっぱりクシクラゲが多細胞動物の根本という論文が

 遺伝子の転写産物を比較することによって2008年の秋にクシクラゲがカイメンよりも原始的な動物だ、というそれまでの系統進化の常識を覆す論文が出ました。その時にはここでも取り上げています。

 新しい進化系統樹


 しかし、その翌年には同じような遺伝子解析によってやはりカイメンのほうがクシクラゲよりも原始的だという従来の意見のほうが正しいという反論の論文が出ています。ところが負けたほうは悔しかったのか(?)今年の春の学会で、ある種のクシクラゲの全遺伝子(ゲノム)を調べあげて、やはりクシクラゲは原始的だという解析結果を学会発表していて、その時のことはまたここで取り上げました。

 いつまでも落ち着けないクシクラゲ


 まあ、学会発表というものはそれほど厳しい審査を経てOKになるものではありませんので、参考意見程度になることが多いのですが、いよいよその結果がScieneceという国際的に一級と認められている学術誌に載りました。

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 結論は今まで言っていたことと変わらないのですが、動物の持っている全遺伝子配列を比較しているので、かなりの説得力を持つことは今まで以上です。

 本論文を読んでもいいのですが、同じ号のScienceに解説記事が載っています。
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 今回調べられたクシクラゲはアメリカではウミクルミ(Sea wallnut)と呼ばれているのだそうです。
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 おなじみのクシクラゲです。

 そして、簡略化した系統樹もこちらのもののほうがわかりやすいです。
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 論文の中にある図はこちらです。
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 私としては面白がっていればすむのですが、カイメンとクシクラゲのどちらがより原始的かという論争に決着が付いてくれないとなかなか講義も難しくなります。

 近くにいる無脊椎動物分類学の権威に聞いてみたところ、彼らは一度言い出したら絶対に意見を曲げないから、この論争はこの先も暫く続くだろうとの感想でした。

 う~ん、楽しんでいればいいのかな~、と楽しいような困ったような気分です。






by stochinai | 2013-12-13 20:42 | 生物学 | Comments(0)

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