2013年 12月 20日
イヌ(やネコ?)のハウスダストはアレルギーを予防する
今週の月曜日にオンラインになったPNASにおもしろい論文が載っています。イヌを飼おうというキャンペーンにもなりそうな話です。

(Flickr, Author Bev Sykes from Davis, CA, USA)

「マウスをハウスダストにさらすことで腸内のラクトバシラス属という乳酸菌を増やすことと、アレルゲンやある種のウイルス感染に対する抵抗性を増した」というちょっとわかりにくい(科学的には極めて正確に書かれた)タイトルの論文です。
昔からイヌを買っているヒトにアレルギーが少ないという傾向があることが知られていたらしいのですが、この論文の著者たちはイヌを飼っている家から採集したハウスダスをマウスにふりかけ、あるいは食べさせてから、彼らの気管にアレルゲンを与えるという実験をしてみたところ、アレルギー反応が出にくくなっていることがわかったというのです。そして、同時に腸内には Lactobacillus johnsonii というラクトバシラス属の乳酸菌が増えていたこともわかったため、今度はネズミに直接 Lactobacillus johnsonii を飲ませてみたところ同じような気道のアレルギー反応を防ぐ効果があったという結果です。
この結果は、イヌが住んでいる室内から得られたハウスダストが、腸内の Lactobacillus johnsonii を増やすことで、アレルギーを防止している可能性を示していると主張しています。
確かににマウスの結果なのですが、もしもヒトでも同じようなことがあるとしたら、昔から言われているイヌやネコを飼っている家の子はアレルギーになりにくいという「伝説」が生物学的に証明されるということになるのです。
実はこの著者たちは2000年に同じような内容の短い論文の出しています。
Man’s best friend? The effect of pet ownership on house dust microbial communities
(Available online July 15, 2010. doi:10.1016/j.jaci.2010.05.042)
この時はイヌとネコのハウスダストの効果を比べていて、左側のイヌは真ん中の無処理に比べて優位に腸内細菌の量や多様性が増えているというグラフを出しています。

残念ながら、この時は右側のネコは若干その傾向はあるものの、統計的に優位なほどの上昇は見られなかったとなっています。それで、今回はネコは使わなかったのでしょうか(笑)。
では、この結果はヒトにも適用できるのでしょうか。The Scientist に解説記事が載っています。一番上の写真はその記事に載っていたもので、記事のタイトルは「イヌとハウスダスト内に細菌とアレルギー」となっています。
Dogs, Dust Microbes, and Allergies
Dust-borne bacteria from houses with dogs can prevent allergies in mice by changing their gut microbes.
タイトルの下にあるリードには、イヌを飼っている家のハウスダスト由来の細菌が、腸内細菌を変化させることによってアレルギーを防止できる」となっています。
この解説記事ではちょっと辛口の批評にも触れてあり、今回の論文では腸内で増えた乳酸菌の Lactobacillus johnsonii をイヌのいる家のハウスダストから直接検出していないことは片手落ちだと言っており、確かにそれは大事なポイントで今後はっきりさせていって欲しいと思います。
ただ、この結果をもとにすぐに Lactobacillus johnsonii の入ったヨーグルトを食べるとアレルギーが治るなどという短絡的な思考にも走らないようにしたいところです。
それとイヌのいる家のハウスダストの効果は、赤ちゃんが新生児の時にもっとも大きいということなので、まだ腸内細菌の少ない時に「正しい」ハウスダストにさらされることが重要なようです。実はヒトの産道にもこの Lactobacillus johnsonii が多いことが知られており、生まれる瞬間に赤ちゃんはこの乳酸菌を取り込むことも重要なのかもしれません。
ともかく、「過剰反応しない正しい免疫システム」を育てるために腸内細菌が大切だということが(マウスではありますが)、またひとつ実験で確かめられたということは間違いないようです。


昔からイヌを買っているヒトにアレルギーが少ないという傾向があることが知られていたらしいのですが、この論文の著者たちはイヌを飼っている家から採集したハウスダスをマウスにふりかけ、あるいは食べさせてから、彼らの気管にアレルゲンを与えるという実験をしてみたところ、アレルギー反応が出にくくなっていることがわかったというのです。そして、同時に腸内には Lactobacillus johnsonii というラクトバシラス属の乳酸菌が増えていたこともわかったため、今度はネズミに直接 Lactobacillus johnsonii を飲ませてみたところ同じような気道のアレルギー反応を防ぐ効果があったという結果です。
この結果は、イヌが住んでいる室内から得られたハウスダストが、腸内の Lactobacillus johnsonii を増やすことで、アレルギーを防止している可能性を示していると主張しています。
確かににマウスの結果なのですが、もしもヒトでも同じようなことがあるとしたら、昔から言われているイヌやネコを飼っている家の子はアレルギーになりにくいという「伝説」が生物学的に証明されるということになるのです。
実はこの著者たちは2000年に同じような内容の短い論文の出しています。
Man’s best friend? The effect of pet ownership on house dust microbial communities
(Available online July 15, 2010. doi:10.1016/j.jaci.2010.05.042)
この時はイヌとネコのハウスダストの効果を比べていて、左側のイヌは真ん中の無処理に比べて優位に腸内細菌の量や多様性が増えているというグラフを出しています。

では、この結果はヒトにも適用できるのでしょうか。The Scientist に解説記事が載っています。一番上の写真はその記事に載っていたもので、記事のタイトルは「イヌとハウスダスト内に細菌とアレルギー」となっています。
Dogs, Dust Microbes, and Allergies
Dust-borne bacteria from houses with dogs can prevent allergies in mice by changing their gut microbes.
タイトルの下にあるリードには、イヌを飼っている家のハウスダスト由来の細菌が、腸内細菌を変化させることによってアレルギーを防止できる」となっています。
この解説記事ではちょっと辛口の批評にも触れてあり、今回の論文では腸内で増えた乳酸菌の Lactobacillus johnsonii をイヌのいる家のハウスダストから直接検出していないことは片手落ちだと言っており、確かにそれは大事なポイントで今後はっきりさせていって欲しいと思います。
ただ、この結果をもとにすぐに Lactobacillus johnsonii の入ったヨーグルトを食べるとアレルギーが治るなどという短絡的な思考にも走らないようにしたいところです。
それとイヌのいる家のハウスダストの効果は、赤ちゃんが新生児の時にもっとも大きいということなので、まだ腸内細菌の少ない時に「正しい」ハウスダストにさらされることが重要なようです。実はヒトの産道にもこの Lactobacillus johnsonii が多いことが知られており、生まれる瞬間に赤ちゃんはこの乳酸菌を取り込むことも重要なのかもしれません。
ともかく、「過剰反応しない正しい免疫システム」を育てるために腸内細菌が大切だということが(マウスではありますが)、またひとつ実験で確かめられたということは間違いないようです。
by stochinai
| 2013-12-20 20:07
| 生物学
|
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