5号館を出て

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バークリーのウェブ配信講義

 カリフォルニア大学バークリー校では理系の入門講義をウェブ配信しています。実際に見ていただくとわかるのですが、多くは普通の黒板を使った「ただの講義」を写したものを流しているだけです。

 しかし、その中でも化学の講義 Chem 1A Introduction to Chemistry はデモ実験を取り入れたりして、意欲的な講義をしているとして有名なのだそうです。とは言えこれを見る限り、それほどでもないと思っていたのですが、おそらく去年からPRISMというソフトウェアを駆使したデジタル・ケミストリー(Digital Chemistry)というハイテク講義へと脱皮していました。これは、いろいろと学ぶべきところがあります。

 今日は北海道大学高等教育機能開発総合センター創立10周年記念国際ワークショップの関連行事として、そのデジタル・ケミストリーで活躍している Mark Kubinec という教授が配信しているものと同じ講義を実際にデモしてくれるということで見に行きました。

 ウェブで見ることのできる第15講の Mon (9/29) Molecular Structure, VSEPR Theory を実演してくれる予定だったそうなのですが、なんと残念なことにKubinecさんが急病で倒れてしまい、札幌には来られなくなってしまいました。

 そのことが数日前にわかったのだそうで、大学としては中止にするのではなく急遽2人の代役を立ててデジタル・ケミストリーの講義を再演することにしたのだそうです。準備などは大変だったと思いますが、今日は日本人講師2人によるコピー講義が行われました。

 コピーといっても実際の講義はウェブで配信されておりますので、本物を見ることもできるのですが、実際に数百人のが学生を前にして実演をしたり、クイズを出して答えさせたりということは実演でなければできません。そういったことを含めて臨時の講師の方々が熱演してくれました。

 実験や実演、学生とのやりとりはかなりオリジナルの講義に忠実に(しかも日本語で)やってくれましたので、それなりのインパクトはあったのだと思いますが、正直な感想を言わせていただくと「役者が違う」と感じさせられてしまいました。

 たとえ講義の内容やシナリオが同じでも、教室は劇場であり、教壇は舞台であり、講師は役者なのです。数百人の学生の心をとらえ、ぐいぐいと引き込みながら、講義内容を的確に理解させるためには、付け焼き刃の練習ではどうにもならない「何か」が必要だということを思い知らされました。ウェブをご覧になると、それが少しは感じていただけると思います。Kubinecさんはかなりの役者なのです。

 もちろん、本日の講師の方やそれをサポートしていた方々の努力もわかりますし、たった3日ほどの訓練でこれだけの内容を再演することができたのは、講義シナリオがしっかりしていることが大前提であることはもちろんです。

 そうであるにもかかわらず、特に今回のように数百人の学生を相手にする場合などに講義が本当に魅力あるものになるためには、講師には人気俳優並みの「力」が求められていることが良くわかりました。

 教育の世界にも、名優が求められる時代がやって来たのでしょう。
by stochinai | 2005-06-23 23:07 | 大学・高等教育 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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