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アリに対して「化学擬態」するカエル

 西アフリカサバンナのカエル( Phrynomantis microps )は珍しいことにアリの巣に潜り込んでいます。普通だとアリは巣に侵入した異種の動物には激しく攻撃をするものですが、不思議なことにこのカエルはアリの攻撃を受けないのだそうです。

 この理由がカエルの粘液がアリにとって敵に見えないようにする化学物質を含んでいる「隠れ蓑」となっている「化学擬態」らしいという論文が、ちょっと前ですが出ていました。
アリに対して「化学擬態」するカエル_c0025115_19363842.jpg
 これは論文に添付された動画の画像ですが、アリに攻撃されずに歩いているところです。
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 ぜひ動画もご覧ください。

 この動画に続き、変態したばかりの小さなカエルの動画もありますが、アリとほとんど同じくらいの大きさのカエルも攻撃されないのはちょっと感動です。
アリに対して「化学擬態」するカエル_c0025115_19305758.jpg
 このアリは毒針を持っていて、攻撃する時にはその毒針を刺すということです。このアリに、シロアリやミルワームを与えるとたちまちのうちにそれらに毒針攻撃を仕掛けるので、カエルを攻撃しないのは不思議だということで、カエルの粘液を調べてみました。

 まずは、シロアリやミルワームにカエルの粘液を塗りつけてアリの行動の変化を見てみました。
アリに対して「化学擬態」するカエル_c0025115_19382045.jpg
 縦軸はアリとシロアリやミルワームが遭遇してから攻撃(毒針を刺す)が始まるまでの時間で、上に行けば行くほど攻撃が始まりにくいことを示しています。

 2番めのカラムと4番目のカラムは何も塗らない(水を塗った)シロアリやミルワームがアリに会うなり攻撃が始まることを示しています。1番目のカラムではそれほど大きくないですが、カエルの粘液を塗ったシロアリに対してアリの攻撃がちょっと送れることを示しています。3番目のカラムではミルワームですが、これはカエルの粘液を塗っておくと5分位攻撃を免れています。

 次にカエルの粘液の中にある原因物質を探しています。逆相クロマトグラフィーという方法で粘液内の物質を分離してみると、アミノ酸が9個と11個という短い2つのペプチド(peptide A – TEKPVPDPF and peptide B – QSGSLTGHLPF)に効果があることがわかりました。
アリに対して「化学擬態」するカエル_c0025115_1942933.jpg
 今度は粘液ではなく、そのペプチドを塗って攻撃実験をやってみました。
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 両方のペプチドともにC末端にプロリン-フェニルアラニンという同じ配列を持っているせいかどうかわかりませんが、どちらのペプチドにも単独でアリの攻撃を防止する働きがあり、両方混ぜてもその効果は特に強まるわけではないということもわかりました。

 それほどすごいことをやっている論文ではありませんが、アリの巣の中に住んでいるカエルがアリに攻撃されない理由を、見事に「化学擬態」であるらしいと示しているという点でおもしろいと思いました。

 やはり、生物学の研究は生き物の生き方を説明しているものが楽しいですね。
by stochinai | 2014-01-23 19:50 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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