2005年 06月 28日
毒物カレー事件二審も死刑
裁判長の立場になって考えてみると、他の判決を出しにくかっただろうとは思います。しかし、おそらく被害者もこのこの判決を聞いて、すっきりとした気持ちにはなれなかっただろうと思いました。
私も、林真須美さんが犯人である可能性は高いと思っています。しかし、被告側が全面否定のまま死刑宣告では、一件落着という気分にはとてもなれません。
検察としては「動かぬ証拠」をつきつけるなり、犯人の良心に訴えるなりして公の場で「私が悪うございました」というところまで持っていってこそ、本当の解決だと思います。
被害者の遺族、本人、家族の人々もまずは被告が罪を認めることを望んでいるはずです。その後でなければ、たとえ死刑にしても罪は償われたと思えないはずです。被害者の立場になってみるとまず必要なのは、被告に罪を認めさせることでしょう。
ところが被告側は一審では無罪を主張しながら黙秘を通したにもかかわらず、死刑判決が出てしまいました。そのためかどうか、控訴審では一転して饒舌になり、無罪を主張したというところはいかにも裁判を技術で乗り越えようとする態度が見えます。
こういうところは、我々だけではなくもっとも冷静なはずの裁判長の心証も悪くなったことが推測されます。そうでなければ、動機について「不明というほかない」という中途半端な状態のままで死刑判決を出すということは、なかなかできないのではないでしょうか。
被告側は判決を不服として最高裁に上告しましたが、無罪と死刑求刑がぶつかり合ったままこのまま裁判を続けても被告側に有利な判決は期待できないと思います。
この期におよんで被告が無罪になるためには、検察側の証拠を否定するだけでは全然ダメで、真犯人を指摘するようなことがない限り逆転は無理だと思われます。
現時点で上がっている証拠から別の犯人の可能性を考えると、その「真犯人」は被告(あるいは被告ら)を犯人に仕立て上げるべくはめた人間が考えられます。被告らに恨みなどを持っていて、被告らを犯人にするために彼らの持っているヒ素化合物をカレーに混入させることができたならば、今回の事件のようなことは起こりえたかもしれません。
でも、もしもそうならばそういう「容疑者」は被告らが推測できる存在のはずです。そういう人物は今までの裁判の中で出てきたのでしょうか。もし、出てきているのだとしたら警察は真剣に操作すべきだと思います。それは、被告の犯罪をさらに強く立証することにもなりますし、冤罪を起こさないリスク管理にもなるでしょう。
もし、そういう可能性すら被告側から出されていないのだとしたら、他に犯人のいる可能性はかなり低いものと思われます。今回のようなケースでは、他の犯人を出さずに自分の犯行だけを否定するというのはかなり難しいことのように思われます。もしも、何らかの理由でその「真犯人」のことを語れないというようなことがあったとしても、それは死刑と比べるとかなり不自然な隠匿になってしまいますので、その可能性も低いと思われてしまいます。
そう考えると、やはり被告が有罪であるという判断は正しいのだと思いますが、あの事件に対する量刑が死刑ではあまりにも軽すぎると感じます。
死刑の次は無期懲役で、その次は懲役30年だそうです。無期といってもおそらく被告は生きて出所できることになる刑になりますので、裁判所としてもそれは出せない判決なのでしょう。
結局のところ、被告も不満、被害者も不満の死刑しか出せないというのは、日本の法制度の欠陥なのではないかと、試験判決が出るたびに思います。しかも、その死刑判決も冤罪で破棄されることがあるというのはやっぱりまずいと思います。
郵政民営化などよりもはるかに真剣に検討されるべき課題が、ここにもあるということです。
私も、林真須美さんが犯人である可能性は高いと思っています。しかし、被告側が全面否定のまま死刑宣告では、一件落着という気分にはとてもなれません。
検察としては「動かぬ証拠」をつきつけるなり、犯人の良心に訴えるなりして公の場で「私が悪うございました」というところまで持っていってこそ、本当の解決だと思います。
被害者の遺族、本人、家族の人々もまずは被告が罪を認めることを望んでいるはずです。その後でなければ、たとえ死刑にしても罪は償われたと思えないはずです。被害者の立場になってみるとまず必要なのは、被告に罪を認めさせることでしょう。
ところが被告側は一審では無罪を主張しながら黙秘を通したにもかかわらず、死刑判決が出てしまいました。そのためかどうか、控訴審では一転して饒舌になり、無罪を主張したというところはいかにも裁判を技術で乗り越えようとする態度が見えます。
こういうところは、我々だけではなくもっとも冷静なはずの裁判長の心証も悪くなったことが推測されます。そうでなければ、動機について「不明というほかない」という中途半端な状態のままで死刑判決を出すということは、なかなかできないのではないでしょうか。
被告側は判決を不服として最高裁に上告しましたが、無罪と死刑求刑がぶつかり合ったままこのまま裁判を続けても被告側に有利な判決は期待できないと思います。
この期におよんで被告が無罪になるためには、検察側の証拠を否定するだけでは全然ダメで、真犯人を指摘するようなことがない限り逆転は無理だと思われます。
現時点で上がっている証拠から別の犯人の可能性を考えると、その「真犯人」は被告(あるいは被告ら)を犯人に仕立て上げるべくはめた人間が考えられます。被告らに恨みなどを持っていて、被告らを犯人にするために彼らの持っているヒ素化合物をカレーに混入させることができたならば、今回の事件のようなことは起こりえたかもしれません。
でも、もしもそうならばそういう「容疑者」は被告らが推測できる存在のはずです。そういう人物は今までの裁判の中で出てきたのでしょうか。もし、出てきているのだとしたら警察は真剣に操作すべきだと思います。それは、被告の犯罪をさらに強く立証することにもなりますし、冤罪を起こさないリスク管理にもなるでしょう。
もし、そういう可能性すら被告側から出されていないのだとしたら、他に犯人のいる可能性はかなり低いものと思われます。今回のようなケースでは、他の犯人を出さずに自分の犯行だけを否定するというのはかなり難しいことのように思われます。もしも、何らかの理由でその「真犯人」のことを語れないというようなことがあったとしても、それは死刑と比べるとかなり不自然な隠匿になってしまいますので、その可能性も低いと思われてしまいます。
そう考えると、やはり被告が有罪であるという判断は正しいのだと思いますが、あの事件に対する量刑が死刑ではあまりにも軽すぎると感じます。
死刑の次は無期懲役で、その次は懲役30年だそうです。無期といってもおそらく被告は生きて出所できることになる刑になりますので、裁判所としてもそれは出せない判決なのでしょう。
結局のところ、被告も不満、被害者も不満の死刑しか出せないというのは、日本の法制度の欠陥なのではないかと、試験判決が出るたびに思います。しかも、その死刑判決も冤罪で破棄されることがあるというのはやっぱりまずいと思います。
郵政民営化などよりもはるかに真剣に検討されるべき課題が、ここにもあるということです。
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inoue0 at 2005-06-29 03:05
この事件の解決を遅らせたA級戦犯は保健所です。第一報が「腹痛、吐気」だったので、食中毒と決めてかかったのみならず、食材を保存するという最低限度の現場保全措置をせず、「大なべを洗うよう」命じたのです。このため、砒素中毒と判明した後で、カレーに含まれた砒素を鑑定しようとしても、皿や鍋に微量にこびりついた試料しか得られず、spring8まで使ってようやく亜ヒ酸の組成を明らかにするという有様。
私ら素人が考えても、集団食中毒が発生したら、原因を究明するために、食材を冷凍庫に入れて保存しますけどねえ。
私ら素人が考えても、集団食中毒が発生したら、原因を究明するために、食材を冷凍庫に入れて保存しますけどねえ。
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stochinai at 2005-06-29 11:21
突発事故の救急医療隊はともかく現場の人命を救うことにかかりきりになりますので、どうしても原因究明のための証拠確保などに失敗することが多いようです。オウム真理教の地下鉄サリン事件の時もそうでしたが、日本では常日頃から、起こるはずのないことは起こらないなどと政治家も平気でうそぶいている国ですから、起こりそうもないことに対するリスク管理はまったくと言って良いほどやってません。それでも、事件があったら懲りたら良さそうなものなのに、ほとんど改まったようには思えません。困ったものです。
だいたいが自衛隊を戦場に送っているのに、あそこは「非戦闘地域」だからなどと首相が言っているような政府を持ってしまった以上、国民としては粛々と彼らに命を預けないとダメなんでしょうか。
だいたいが自衛隊を戦場に送っているのに、あそこは「非戦闘地域」だからなどと首相が言っているような政府を持ってしまった以上、国民としては粛々と彼らに命を預けないとダメなんでしょうか。
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mwakao at 2005-06-29 13:48
救急医療に関しても、問題がある事件だと思います。
TBさせていただきました。
TBさせていただきました。
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inoue0 at 2005-06-29 18:37
保健所と病院に過失があるとして遺族および患者が県と病院に損害賠償を求めた裁判は、控訴審まで判決が出てます。原告側前面敗訴。過失なし。
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stochinai at 2005-06-29 19:12
そういう判決が出ていたようですね。まだまだ日本という国では、お上(保健所)や「善意の仕事」をしているところ(病院)などの過失を認めることに躊躇が見られると思います。
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inoue0 at 2005-06-29 19:46
「正しい診断」があって、その場でできる「正しい治療」をしても結果は変わらなかったと思います。だって、解毒薬であるキレート剤が病院に備蓄されていなかったし。サリン中毒でPAMがなかったからといって病院訴えても無駄なのと同じ。
「四人はなぜ死んだのか」(三好万季)という本が出てます。 ふつうの中学生である著者がネットと若干の医学書だけを頼りに真相に迫っていくレポートはたいへんよく書けていますが、「しょせんは後知恵」という感がぬぐえないのですね。その状況に置かれて、悠長に毒物マニュアルを調べる余裕が臨床医にあったとは思えないし、自分の狭い経験の範囲で対処せざるをえなかったのも仕方がない。
時間と心に余裕をもって、WWWを駆使している著者と、数十人の患者が運び込まれてきて阿鼻叫喚の状況に置かれた医師とではまったく状況が違う。
現場で、教科書どおりの症状が出るわけじゃないんですよ。
「四人はなぜ死んだのか」(三好万季)という本が出てます。 ふつうの中学生である著者がネットと若干の医学書だけを頼りに真相に迫っていくレポートはたいへんよく書けていますが、「しょせんは後知恵」という感がぬぐえないのですね。その状況に置かれて、悠長に毒物マニュアルを調べる余裕が臨床医にあったとは思えないし、自分の狭い経験の範囲で対処せざるをえなかったのも仕方がない。
時間と心に余裕をもって、WWWを駆使している著者と、数十人の患者が運び込まれてきて阿鼻叫喚の状況に置かれた医師とではまったく状況が違う。
現場で、教科書どおりの症状が出るわけじゃないんですよ。
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stochinai at 2005-06-29 20:16
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ken-kataoka
at 2008-03-14 20:01
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はじめまして。
和歌山カレー事件は冤罪だと思い、そのことを少しでも世に広めるためにこのほど、ブログを始めた者です。
>この期におよんで被告が無罪になるためには、検察側の証拠を否定するだけでは全然ダメで、真犯人を指摘するようなことがない限り逆転は無理だと思われます。
についてですが、現実的には、おっしゃられている通りのような気がします。
>そういう人物は今までの裁判の中で出てきたのでしょうか。
すでにご存じような気もしますが、上告趣意書の中には、別の真犯人も指摘されていますね。
とまれ、今後もカレー事件の真相に、関心を持って頂ければ幸いです。
よろしくお願い致しますm(_ _)m
和歌山カレー事件は冤罪だと思い、そのことを少しでも世に広めるためにこのほど、ブログを始めた者です。
>この期におよんで被告が無罪になるためには、検察側の証拠を否定するだけでは全然ダメで、真犯人を指摘するようなことがない限り逆転は無理だと思われます。
についてですが、現実的には、おっしゃられている通りのような気がします。
>そういう人物は今までの裁判の中で出てきたのでしょうか。
すでにご存じような気もしますが、上告趣意書の中には、別の真犯人も指摘されていますね。
とまれ、今後もカレー事件の真相に、関心を持って頂ければ幸いです。
よろしくお願い致しますm(_ _)m
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stochinai at 2008-03-14 21:02
コメントありがとうございます。私はその後、この件に関してはあまりフォローしておりませんが、ブログはken-kataokaさんがやろうとしておられることに適したメディアだと思います。ご健闘を願っています。
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ken-kataoka
at 2008-03-15 16:15
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by stochinai
| 2005-06-28 20:59
| つぶやき
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