5号館を出て

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間違いはないのだから似たような写真を使って何が悪い!

 ポプラ並木と夕日が美しい夕景を作る季節がやってきました。
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 本日、理研の調査委員会の調査結果の発表があり、それに対する第一著者の反論も出されました。

 調査委員会は、電気泳動の画像と、細胞の多分化能を示した写真に明らかに「ねつ造」に相当する画像の流用があったと結論しました。一方、第一著者の「反論」では、どちらも実験の結果で得られている結果を見た目がわかりやすいような類似の写真を使ったにすぎず、「本当の結果でも同じようなものが得られるのだから不正ではなく単なるデモ用の写真を使いまわしたに過ぎない」というような強引な説明をしているようです。実際に裁判になった場合にはどうなるかはわかりませんが、たとえわかりにくくても「実際にあった写真」を使うという倫理観にあふれる「正しい作法」の論文を作るか、それよりは素人が見ても「こりゃそうだわ」と思わせるような、倫理とは程遠くてもデモとしてはわかりやすい論文をつくるのかということで、研究者の「流儀」が分かれるというふうに見ることもできるのかもしれません。

 もちろん、科学の作法、論文の作法としては、多少わかりにくくても実際の実験の際に撮影されたものを使うのが正しいのですが、投稿論文が査読される時点では、本物よりもわかりやすい「デモ的な写真」が好まれることがないとは言えないのが事実です。実際にそうした写真を使った結果(かどうかわかりませんが)、Natureがアクセプトしたのだとしたら、第一著者の考えていることは、倫理的に間違っていたとしても、作戦的には(たとえ一時的にでも)勝利を収めたということにはなりそうです。

 しかも、それが「悪意を持って行われた」のではなく、たまたま手元にあったわかりやすい写真を「間違って使ってしまった」のだとしたら、本人が言っているように「不正の目的も悪意」もないものを処分するということになり、理研の対応は自らが策定した規定に抵触してしまうことになりますので、その後に起こるかもしれない裁判闘争にも勝てるものかどうかはにわかには判断できないものとなります。

 というわけで、本日の理研の報告はとても合格点をあげられるようなものではなく、この先も長々と尾を引く悲劇の始まりに過ぎないような気がします。

 そんなことはおかまいなしに、札幌の積雪カレンダーが終わりに近づいています。
間違いはないのだから似たような写真を使って何が悪い!_c0025115_2022765.jpg
 この10日間で積雪は半減し、ついに東区でも50cmを切りました。カレンダーもなくなったため、この先のデータはグラフ表示はされませんが、いずれにせよもはや雪の深さを心配する季節は終わったということです。

 理研の騒動もそろそろ終わりにして欲しいのですが・・・。
by stochinai | 2014-04-01 20:20 | つぶやき | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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