5号館を出て

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科学者・研究機関の危機とCoSTEP

 世の中を騒がせているR研の事件は、科学する側から見ると非常に残念なことですが、一方こういうことがいつ起こっても不思議ではないと思わせられるくらい、産業や政治と直結するテーマを扱うようになってきたために巨大化し巨額の資金をつぎ込まれるようになっているのが生命医科学の領域の実態なのだという気もします。

 こうしたことになる背景の理由の第一には、若い研究者が大量に生み出されたために彼らが職にありつき生き残るだけでも大変な競争があるという現実があります。職にありつくためには、研究テーマを選んでいる余裕などなく、もっとも職が得られやすい研究を大学院時代から選ぶ傾向もどんどん大きくなってきています。

 次にはそうした買い手市場の研究者を雇う側の事情があります。よりたくさんの研究者を雇うと、研究費もたくさん必要になりますが、多くの研究者がいればどんどんデータが出てきて、論文も量産することが可能です。論文の質と量は即、次の研究費の獲得へとつながっていきますから、研究費の獲得と論文の量産、そして次の研究費の獲得という正のフィードバックが回り始めると、このフィードバックを止めないということが先端研究室のの自己目的化してしまいます。

 さらには資金を提供する側となる政府や医療関係企業が、税金をつぎ込んだり新しい製品を出したりすることが正当化されるような、世界的インパクトのある新しい医療へとつながる大発見が期待される研究へ、それこそ湯水のごとく研究費を注ぎ込むようになります。もちろん、こちらでも自分を正当化してくれる正のフィードバックを回そうという下心が見え隠れします。

 この三角形が同じ方向へ回り始めると、もはや中にいる個々の人や、個々の研究室や、個々の機関や、個々の企業、さらには政府さえもがコントロールする能力を失って盆踊り状態で同じ方向へと踊りを続けることしかできなくなります。

 もし自分がそんな流れの中に投げ込まれたとしたらどうでしょう。同じように回りながら踊りの輪に加わり続けるのがもっとも簡単な対応の仕方なのかもしれません。しかし、その中で正気を保ち、非人間的・非倫理的なことが起こった時に踊りの輪から抜け出せるものでしょうか。

 そんな時に、狂乱の踊りの輪から冷静に抜け出すためには、踊りの輪の外にいる人とつながっていることがひとつのきっかけにはなるでしょう。踊りの輪の中では、内輪の人間だけにしか通じないコミュニケーションが交わされていて、外から見ると「そんなバカな」と思われるようなことがスルスルと通っていくこともあるかもしれませんが、踊りの輪の中にいない人とのコミュニケーションではそのような内輪の議論が通じない分、より正気な判断が可能になるかもしれません。

 科学技術コミュニケーションは科学技術の内容を一般の人々にわかってもらい、さらにはそれらの人々の科学技術に対する意見を科学技術者にフィードバックするということを目指してはじまったものだと思いますが、このような科学や政府・企業の暴走が起こった時に、その暴走を止め、さらには内部にいる人がそうした暴走を自ら止めるような行動がとれるようにそれぞれのメンバーを冷静な位置へと引き戻してくれることにも役立ってくれる機能があるものだと思います。

 というわけで、科学の世界とかかわる大学院生・社会人には必修科目として科学技術コミュニケーションを学ぶことが必要な時代になってきたことを感じます。北海道大学を含め、一部の大学では大学院のコースとして科学技術コミュニケーションが提供されていますが、そうではない大学院の方あるいはすでに現場におられる社会人の方々にそうした場を提供してくれるのが北大CoSTEPです。

 今年も受講生募集中です。
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 東京説明会はすでに終わりましたが、明日5日と9日に札幌で説明会が開かれます。

会場:北海道大学学術交流会館 小講堂(札幌市北区北8条西5丁目)
   http://www.hokudai.ac.jp/introduction/campus/hall/
(1回目)
日時:2014年4月5日(土)13時〜15時30分(修了生による座談会を予定)    
(2回目)
日時:2014年4月9日(水)18時30分〜20時(修了生による座談会なし)

 そして、今年からは応募がオンラインでできるようになりました。あらかじめ、自分の個人情報や学歴・職歴記録そして500字程度の志望理由書と800字から1000字以内の課題文(「科学技術コミュニケーションに関わる問題を1つとりあげ、解決へ向けて自分がどんな役割を果たしたいか述べてください」)の原稿ファイルを用意しておけば、数分のオンライン作業で受講希望願書の送付までが終わってしまいます。
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 将来、科学者になることを希望している人、科学技術とかかわる部署につきそうな人、すでに付いている人、そうした人にCoSTEPの提供するコースはもはや「必修」と言える時代になってきたことを強く感じます。

 説明会だけでも、聞きにいってみてください。
by stochinai | 2014-04-04 19:16 | 大学・高等教育 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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