5号館を出て

shinka3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

プレゼンは相手によって変えるべし

 余丁町さんが、日経の記事(リンクが変わっているようです)を引いて、2012年五輪、パリが負けたのはプレゼンが下手だったため?というエントリーを立てておられます。

 【孫引き】日経は「コーの言葉は心に響いた」(ハンガリー委員)というコメントを紹介している。一方で、パリ(リュック・ベンソン)のPRビデオは「抽象的で焦点がぼけた」という声も聞かれたという。


 で、余丁町さんは「各国のIOC委員とは体育会系スポーツマン上がりが大部分ではないか?」という。そういう人間に、いくら芸術的だといってもリュックベッソンのような大監督の作った抽象性の高いプロモーションビデオを見せても「勝てないのは目に見えていたはずだ」と言います。

 このエピソードは、コミュニケーションの基本としてとても大切なことを含んでいます。

 コミュニケーションには「絶対的客観性にもとずく正解」などはなく、それが常に「あなた」と「私」のやりとりである以上、相手の立場を考えないプレゼンが相手の胸を打つはずはありません。

 教訓:プレゼンをする前に聴衆をリサーチせよ。

 「ロンドンは陸上中距離の世界的スターだったセバスチャン・コー招致委員会長が自分のエピソードを披露しながら、スポーツがこどもたちに与えるインスピレーションを語りかけたらしい」とのことです。

 投票によって結果が出る以上、もし勝ちたいのであれば投票委員達の好みによってプレゼンを変える必要があったのだと思います。

 でもまあ、見方によってはフランス人のプライドとしては勝負よりも形の勝利を選んだ結果の3連敗だったのかもしれません。もしも、そうだとするならば負けてもくやしいと思っていないという可能性もあります。

 教育の現場でも、お客さんである学生を良く知った上で講義するのとそうでない場合を比べると、結果には雲泥の差が出ます。それでもなお、「私は研究者としてのプライドを捨ててまで学生におもねろうとは思わない」という方もいらっしゃいます。

 フランス式でいくかイギリス式でいくか、我々も試されています。
Commented by ヤマグ at 2005-07-07 21:33 x
大変、興味深いエントリーだったので是非コメントさせていただきたいと思いました。

大学院時代の指導教官から「プレゼン技能」という講義を受けた際に、同様の話を聞きました。学会のプレゼンでは、「まず聴衆を考えろ。」と言われました。相手の力量と相手の専門をしっかり把握してから発表しろと。

しかし、教育現場で、フランス式かイギリス式か試されるというのも、ちょっと疑問があるのですが。教育現場では、教育者であって、研究者ではないような気がするのですが、如何でしょうか?高等教育とはやはり研究者を育てるところなのでしょうか?この問題に関しては、議論が尽きないと思いますが。
Commented by stochinai at 2005-07-07 22:36
 コメント、ありがとうございました。
 私も余丁町さんの興味深いエントリーに刺激されて書いたものです。

>相手の力量と相手の専門をしっかり把握してから発表しろと。
 私もこの意見に大賛成です。

>教育現場では、教育者であって、研究者ではないような気がするのですが、如何でしょうか?
 これについても私はヤマグさんと同意見なのですが、現実問題として、法人化されたにもかかわらず大学にはまだ「フランス式」のお偉い方(恐らくそう主張し続けることで何も努力しなくて済むということが理由だと私は思っていますが)がいらっしゃることも厳然たる事実なのです。

 政府にではなく、ヤマグさんのような健全な意見を持つ市民の皆さんに大学を監視してもらいたいというのが私の正直な感想です。

 これからも、よろしくお願いします。
by stochinai | 2005-07-07 14:22 | つぶやき | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai