5号館を出て

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シズちゃんの帰還と中谷宇吉郎本

 昨年暮れに天に召されたフトアゴヒゲトカゲのしずちゃんですが、生前の人気を考えて、生きた姿を保存しておければということで、札幌市博物館活動センタースタッフのK藤さんにプラスティネーションしていただくようにお願いしてありました。

 「サイズが大きいので時間がかかりますよ」とのK藤さんのお言葉どおり、半年くらいかかりましたがようやく完成して、しばらくの間古巣の我が家へ戻ってきてくれました。

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 すごいです。まったく生きていた時と同じ姿です。

 持ってみると、お腹にかなりのシリコンが注入されているとのことで、ずっしりと重く存在感があります。生きていた時もひんやりと冷たかったので、体温的にもその時とあまり変わらない感じです。

 せっかくなので、もと住んでいた水槽に入れてあげました。

 ヒヨコ電球をつけてやると、生前のままです。

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 顔をアップにしてみると「暖かいわ」と言っているようです。

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 この方法では、死後なるべく速やかに凍結乾燥しておりますので、タンパク質やDNAはほとんど編成せずに保存されていると思いますので、それらがシリコンに埋まった状態で保存されるのだとしたら、何十年、何百年してもタンパク質や遺伝子の解析ができる可能性があるかもしれず、そうだとするとこれは今までの博物館の常識を覆す新時代の標準標本になるような気がします。スゴイ!

 ということで、久々にしずちゃんに会えたと実感できた一日でした。

 そんな日は25℃越えの「夏日」になりました。これが夕方です。

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 淡い夕焼けを見て、下の階にある支援室のメールボックスをチェックしにいったら、嬉しい献本が入っていました。

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 CoSTEP10周年の記念講演でS山先生が序論を話されたので、いずれは大きくまとめられるのだろうと期待していたら、思いのほか早くにこれほども成果になってまとまったようです。

 7月10日発売なのでまだ書店では入手できないのかもしれませんが、この研究をサポートした科研費の報告書はすでに北海道大学図書館のオープンアクセス機関リポジトリのHUSCAPで読むことができます。著書のあらすじだと思ってお読みください。

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 さらに、この本に登場する「『中谷宇吉郎 人の役に立つ研究をせよ』(ミネルヴァ書房刊)に名前が出てくる人物について、経歴や業績を紹介した」リストもこちらで公開されています。

 というわけで、ちょっと高い本ですが、著者からいただけなかった方は是非とも購入してお読みください(笑)。
Commented by さなえ at 2015-07-07 18:35 x
こんにちは
しずちゃんにまたあえて良かったですね。かなりグロテスクですがミイラ信仰を考えると、将来、希望する人にも同じような技術が施されるようになるかもしれないですね。個人的には、人の場合はぼんやりと記憶に留めておきそのうち忘れられるのがほどが良いような気がします…。
加賀にある中谷宇吉郎雪の科学館は磯崎新に惹かれて少し前に行きました。見学者は私一人という淋しさでしたが面白かったですよ。映画「科学するこころ-中谷宇吉郎の世界」が望外のおもしろさでした。
Commented by STOCHINAI at 2015-07-07 18:56
 杉山先生は中谷宇吉郎を再発見してくれているようです。興味がおありでしたら、高い本なので図書館にでも購入希望を出してぜひお読みください。目から鱗になるかもしれません。
 私はしずちゃんにはそれほどの思い入れはありませんが、確かに懐かしい思いは感じました。この後は博物館でたくさんの人に見てもらいたいと思います。余談ですが、先週のNatureにこのトカゲが性染色体による性決定から、温度による性決定への移り際にいるというおもしろい論文がでたところで、その論文の直後に帰ってきたしずちゃんとは不思議な因縁は感じました。
by STOCHINAI | 2015-07-06 21:00 | 札幌・北海道 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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