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ハイテク機器で再調査された「原始哺乳類」は「哺乳類以前」だった

 最近は化石の研究もノミとハンマーで削りだすのではなくて、CTスキャンでやるのが主流になってきているようです。

 というわけで、旧来の方法で調べられていた標本を最新のハイテク機器で再調査してみたところ、哺乳類の起源についての知見が書き換えられるという大変な結果になったという論文が出ました。

Published online before print November 16, 2015, doi:10.1073/pnas.1519387112
November 16, 2015

ハイテク機器で再調査された「原始哺乳類」は「哺乳類以前」だった_c0025115_19462775.jpg



 結論からいうと、この2億1千万年前の地層から出てきた三畳紀後期の化石は、最初に考えられていたような初期の哺乳類ではなくて、哺乳類の祖先がジュラ紀に多くの哺乳類へと分岐するはるか前の三畳紀にその祖先と分かれていた、哺乳類にはならなかった系統の動物だったということです。


ハイテク機器で再調査された「原始哺乳類」は「哺乳類以前」だった_c0025115_19505493.jpg


 上の図を見ただけで直感的にお分かりになると思いますが、以前に化石の一部を苦労して削りだして解析し、出された結論はこの動物が哺乳類の一種であり、哺乳類の爆発的分岐は三畳紀に起こっていたということなのですが、今回下顎のかなりの部分を再構築することができ、それから出された結論は「これは哺乳類ではない」ということで、やはり哺乳類の放散進化はジュラ紀に起こったという結論になったというお話です。上の図の左半分の上部が昔の考え、下と右の系統樹が新しい説を示しています。


ハイテク機器で再調査された「原始哺乳類」は「哺乳類以前」だった_c0025115_20003042.jpg


 こちらの絵は解説記事に載っていたApril Neanderという人が描いたもので、今回得られた顎の骨をもとに再構築したHaramiyavia clemmenseniの姿です。まあ、哺乳類に見えないこともないですが、初期の哺乳類は昆虫食だったのにこの歯は草食動物のもので咬み合わせを再現した動画もありました。


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もとの論文についていた動画で、45秒という短いものですが、前半が顎の骨の3D再構築、後半が咬み合わせを動かして、この動物が臼歯でものをすりつぶして食べる草食だったことを示しています。

 最近の論文はほんとうに素人にもわかりやすく書かれているものが多くなり、ありがたいことです。






by STOCHINAI | 2015-11-17 20:17 | 生物学 | Comments(0)

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