2005年 08月 26日
ミステリー・クレイフィッシュ
一週間ほど前に、ある方からザリガニの子供を3匹いただきました。
その方も、またある方からそのザリガニが子供の時もらったということですので、私がもらったのは孫ザリガニということになります。
話はややこしくなるのですが、そのもともとのザリガニの持ち主の方は、小学校の先生で教室でザリガニを飼っていました。その方が、このザリガニはミステリー・クレイフィッシュといってメスだけで増えるんですと言っていらしたのが今から思うと、去年か一昨年の話だったような気がします。
恥ずかしながら生物学それも発生学などもいちおうの専門としていた私は、その時までメスだけで増える(つまり単為生殖・単為発生する)ザリガニの話などは聞いたことがありませんでしたので、半信半疑ながらも「子供が生まれたら是非ください」とお願いしていたのですが、ようやくいただけることになって大喜びしております。
で、単為生殖するザリガニも知りませんでしたし、ミステリー・クレイフィッシュなどという名前も聞いたことがなかったのですが、今回いざザリガニを手にしてみて気になるので調べてみました。
もちろん、日本でも飼育愛好家の方のサイトがあるのですが、なんとこのザリガニは世界的に見てもごくごく最近発見された、まさにミステリアスなザリガニであるということがわかりました。
科学雑誌(専門誌)としては、世界の最高峰にあるNatureとScienceが2003年の2月19日と20日にほぼ同時に発行された号で、このザリガニを取り上げています。
なんと十脚類(エビ、ザリガニの仲間)としては、世界で始めて単為生殖することが発見されたという大ニュースになっていました。弁解するわけではないですが、「専門家」の私が知らなくても不思議はないほど最近の発見なのです。
もともとこのザリガニはドイツの愛好家の水槽で発見されたものということで、どうもメスだけで増えているらしいという噂があったようです。それが2003年に生物学者によってほんとうのことだと確かめられたということでニュースになりました。
私たちの研究室でも増えているミジンコや夏から秋に大量発生するアブラムシなど、メスだけで繁殖する動物は意外とたくさんいます。そういう意味では大発見ということでもないのですが、ザリガニのような「大型」の動物が野生に放たれた時には、時として問題が起こります。
北海道にはいませんが、アメリカザリガニというアメリカから移入されたザリガニがニホンザリガニをどんどんと駆逐して増殖してしまったのは、有名な話です。北海道でもウチダザリガニというアメリカ由来のザリガニがじわじわとニホンザリガニの生息域を浸食しているようです。
ミステリー・クレイフィッシュの原産地はまさにミステリーで特定されてはいないようなのですが、アメリカザリガニとも近縁らしく、北アメリカが原産ではないかと疑われています。それがドイツで発見されて、単為生殖でどんどん増えることがわかったのです。マニアの水槽の中で増える分には問題がありませんが、野外で増え始めたらどんなことになるかわからないということが、このザリガニ発見が大きなニュースになった理由の一つでした。
確かに、ある意味ではアマチュアの小学校の先生のところでどんどん増えて、私がいただけるようになったくらいですから、温暖な地方だと野外でもどんどん増える可能性は大きいと思います。
移入種として将来の被害リスクが予想されるだけではなく、単為生殖する大型の動物として実験動物としての有用性も期待されるということで、このザリガニの発生や生殖、成体に関する論文が2004年から出始めており、2005年の論文もありました。まだまだ、研究する余地がありそうです。
というわけで、いろんな意味で旬の動物であるミステリー・クレイフィッシュを本格的に調べてみようかななどと思っている今日この頃なのでありました。
Yさん、Aさん、たいへんにおもしろい動物をいただき、ほんとうにありがとうございました。
その方も、またある方からそのザリガニが子供の時もらったということですので、私がもらったのは孫ザリガニということになります。
話はややこしくなるのですが、そのもともとのザリガニの持ち主の方は、小学校の先生で教室でザリガニを飼っていました。その方が、このザリガニはミステリー・クレイフィッシュといってメスだけで増えるんですと言っていらしたのが今から思うと、去年か一昨年の話だったような気がします。
恥ずかしながら生物学それも発生学などもいちおうの専門としていた私は、その時までメスだけで増える(つまり単為生殖・単為発生する)ザリガニの話などは聞いたことがありませんでしたので、半信半疑ながらも「子供が生まれたら是非ください」とお願いしていたのですが、ようやくいただけることになって大喜びしております。
で、単為生殖するザリガニも知りませんでしたし、ミステリー・クレイフィッシュなどという名前も聞いたことがなかったのですが、今回いざザリガニを手にしてみて気になるので調べてみました。
もちろん、日本でも飼育愛好家の方のサイトがあるのですが、なんとこのザリガニは世界的に見てもごくごく最近発見された、まさにミステリアスなザリガニであるということがわかりました。
科学雑誌(専門誌)としては、世界の最高峰にあるNatureとScienceが2003年の2月19日と20日にほぼ同時に発行された号で、このザリガニを取り上げています。
なんと十脚類(エビ、ザリガニの仲間)としては、世界で始めて単為生殖することが発見されたという大ニュースになっていました。弁解するわけではないですが、「専門家」の私が知らなくても不思議はないほど最近の発見なのです。
もともとこのザリガニはドイツの愛好家の水槽で発見されたものということで、どうもメスだけで増えているらしいという噂があったようです。それが2003年に生物学者によってほんとうのことだと確かめられたということでニュースになりました。
私たちの研究室でも増えているミジンコや夏から秋に大量発生するアブラムシなど、メスだけで繁殖する動物は意外とたくさんいます。そういう意味では大発見ということでもないのですが、ザリガニのような「大型」の動物が野生に放たれた時には、時として問題が起こります。
北海道にはいませんが、アメリカザリガニというアメリカから移入されたザリガニがニホンザリガニをどんどんと駆逐して増殖してしまったのは、有名な話です。北海道でもウチダザリガニというアメリカ由来のザリガニがじわじわとニホンザリガニの生息域を浸食しているようです。
ミステリー・クレイフィッシュの原産地はまさにミステリーで特定されてはいないようなのですが、アメリカザリガニとも近縁らしく、北アメリカが原産ではないかと疑われています。それがドイツで発見されて、単為生殖でどんどん増えることがわかったのです。マニアの水槽の中で増える分には問題がありませんが、野外で増え始めたらどんなことになるかわからないということが、このザリガニ発見が大きなニュースになった理由の一つでした。
確かに、ある意味ではアマチュアの小学校の先生のところでどんどん増えて、私がいただけるようになったくらいですから、温暖な地方だと野外でもどんどん増える可能性は大きいと思います。
移入種として将来の被害リスクが予想されるだけではなく、単為生殖する大型の動物として実験動物としての有用性も期待されるということで、このザリガニの発生や生殖、成体に関する論文が2004年から出始めており、2005年の論文もありました。まだまだ、研究する余地がありそうです。
というわけで、いろんな意味で旬の動物であるミステリー・クレイフィッシュを本格的に調べてみようかななどと思っている今日この頃なのでありました。
Yさん、Aさん、たいへんにおもしろい動物をいただき、ほんとうにありがとうございました。
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at 2007-08-24 15:23
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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by
stochinai at 2007-08-24 15:31
ご質問にお答えします。
暑い地方の方ではないかと想像されます。実際に見た経験がないので想像ですが、おそらく温度が高いため水の中が酸素不足になっているので、苦しくて水面近くに出てくるのではないかと思われます。水草があれば昼間は酸素がどんどん作られていますが、夜はそれがなくなるので酸欠になるのかもしれません。それと、明るい時はたとえ少しくらい酸素が不足しても隠れているものが、夜になると安心して水面近くにくるということもあるかもしれません。あくまでも想像ですが、エアレーションでぶくぶくと空気を吹き込んでやると、それがなくなれば想像が当たっていることになります。実験してみてください。
暑い地方の方ではないかと想像されます。実際に見た経験がないので想像ですが、おそらく温度が高いため水の中が酸素不足になっているので、苦しくて水面近くに出てくるのではないかと思われます。水草があれば昼間は酸素がどんどん作られていますが、夜はそれがなくなるので酸欠になるのかもしれません。それと、明るい時はたとえ少しくらい酸素が不足しても隠れているものが、夜になると安心して水面近くにくるということもあるかもしれません。あくまでも想像ですが、エアレーションでぶくぶくと空気を吹き込んでやると、それがなくなれば想像が当たっていることになります。実験してみてください。
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at 2007-08-24 18:00
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by stochinai
| 2005-08-26 22:24
| 生物学
|
Comments(3)