2005年 09月 08日
奨学金返還滞納者への取り立て強化へ
単なる借金にすぎない教育ローンのことを「奨学金」と呼んでいることだけでも、詐欺罪が成立するのではないかと思われる日本学生支援機構(旧日本育英会)は、今年度、返還金滞納者への取り立てを強化すると発表したようです。(毎日新聞)
具体的には、裁判所への督促申し立てなど法的措置の対象を、昨年度の10倍近い約4000人まで拡大するとのことです。
これも小泉改革の一環なのでしょうか。
前のエントリーにある選挙マニフェストによると、自民党「18歳以上の奨学金希望者全員への貸与を引き続き目指し」、公明党「すべての学生が奨学金を借りられる制度を構築します」、民主党「希望者全員奨学金制度を実現します」、共産党「大学院生に対する無利子奨学金の拡充と返還免除枠の拡大、給費制奨学金の導入をすすめます」、社民党「奨学金・育英制度を拡充」となっています。返還のことまでを視野に入れて、返還免除および給費制を主張しているのは共産党だけです。つまり、学生および卒業生のの実情を知っているのは共産党だけということになります。
ただし、民主党は共産党と同様に「国際人権規約批准国約150カ国中、日本を含む3カ国のみが留保している『高等教育無償化条項』を批准します」と言っており、その点では「教育の受益者負担」という国際性のない現行高等教育制度を批判しています。
そもそも、高等教育で得たものは個人の私有財産ではなく国家の共有財産であるという思想があるならば、高等教育に費用がかかるということ自体がおかしいということになります。そして、それこそが国際人権規約の唱う国際標準の考え方です。
奨学金は近年、有利子のものが導入されると同時に非常に借りやすくなりました。我々の頃は、借りられるだけでも優秀さの証明と思われるくらい枠が少なく、しかも免除職について返還免除になる人も多かったものです。私も、現在の職場に20年間在職した時点で返還免除になりました。20年もかかりましたが、私程度の人間でも(相対的に安サラリーの)教育・研究職を継続すると免除をいただけたのです。
その返還免除職制度も、廃止になっています。死亡または心身障害によって返還不能になった場合以外は免除になりません。払えなければ死ねと言うことでしょうか。
代わって導入されたのは、現役の大学院生を成績で評価して、返還を免除する制度です。枠はかなり少ないのだと思いますが、「大学院において第一種奨学金の貸与を受けた学生であって、在学中に特に優れた業績をあげた者として本機構が認定した場合には、貸与期間終了時に奨学金の全部または一部の返還が免除される制度」が平成16年度から実施されています。16年度の認定結果も発表されていますが、全額免除者が第一種小学生2189名のうち183名で、半額免除者が368名となっています。各大学から数名ずつ推薦された572名のうち551名が該当しています。
この制度に関しては、在学中に特に優れた業績を挙げたことが奨学金の返還免除の条件となっているのが、どうも腑に落ちません。学業だけではなくオリンピックで入賞したりするのも、優れた業績と考えられるのだそうですが、ほんとうにそれが正しい「奨学金の返還免除」の基準と言えるのでしょうか。どうも納得できません。学生の挙げた業績など、所詮は研究室の力の差にすぎないということもあるのではないでしょうか。
確かにこの方法だと、最初から免除になっている人間以外は全員が返還義務を負いますので、取り扱いは楽でしょう。でも、それが経済的学業支援のほんとうの姿なのでしょうか。
大学院の修士・博士課程を通して奨学金を借りると650万円くらいの借金になるはずです。卒業と同時に1000万円近い借金を背負ってしまうと、よほど高給の職にでも就かなければまじめに返還しようという気分になれないことは十分想像がつきます。最近はそのからくりに気がついているのか、奨学金の貸与を希望しない大学院生も増えています。高額な借金をきらって博士課程への進学を拒否する学生もいます。
政府の方々は、日本の将来をどうしようと考えているのでしょうか。大学院生はみんな有権者なのですから、団結すれば24万票くらいを持った圧力団体になれます。
そろそろ政治的に動くことも考えなければ、大学院生はこの先も虐待され続けるでしょう。
具体的には、裁判所への督促申し立てなど法的措置の対象を、昨年度の10倍近い約4000人まで拡大するとのことです。
これも小泉改革の一環なのでしょうか。
前のエントリーにある選挙マニフェストによると、自民党「18歳以上の奨学金希望者全員への貸与を引き続き目指し」、公明党「すべての学生が奨学金を借りられる制度を構築します」、民主党「希望者全員奨学金制度を実現します」、共産党「大学院生に対する無利子奨学金の拡充と返還免除枠の拡大、給費制奨学金の導入をすすめます」、社民党「奨学金・育英制度を拡充」となっています。返還のことまでを視野に入れて、返還免除および給費制を主張しているのは共産党だけです。つまり、学生および卒業生のの実情を知っているのは共産党だけということになります。
ただし、民主党は共産党と同様に「国際人権規約批准国約150カ国中、日本を含む3カ国のみが留保している『高等教育無償化条項』を批准します」と言っており、その点では「教育の受益者負担」という国際性のない現行高等教育制度を批判しています。
そもそも、高等教育で得たものは個人の私有財産ではなく国家の共有財産であるという思想があるならば、高等教育に費用がかかるということ自体がおかしいということになります。そして、それこそが国際人権規約の唱う国際標準の考え方です。
奨学金は近年、有利子のものが導入されると同時に非常に借りやすくなりました。我々の頃は、借りられるだけでも優秀さの証明と思われるくらい枠が少なく、しかも免除職について返還免除になる人も多かったものです。私も、現在の職場に20年間在職した時点で返還免除になりました。20年もかかりましたが、私程度の人間でも(相対的に安サラリーの)教育・研究職を継続すると免除をいただけたのです。
その返還免除職制度も、廃止になっています。死亡または心身障害によって返還不能になった場合以外は免除になりません。払えなければ死ねと言うことでしょうか。
代わって導入されたのは、現役の大学院生を成績で評価して、返還を免除する制度です。枠はかなり少ないのだと思いますが、「大学院において第一種奨学金の貸与を受けた学生であって、在学中に特に優れた業績をあげた者として本機構が認定した場合には、貸与期間終了時に奨学金の全部または一部の返還が免除される制度」が平成16年度から実施されています。16年度の認定結果も発表されていますが、全額免除者が第一種小学生2189名のうち183名で、半額免除者が368名となっています。各大学から数名ずつ推薦された572名のうち551名が該当しています。
この制度に関しては、在学中に特に優れた業績を挙げたことが奨学金の返還免除の条件となっているのが、どうも腑に落ちません。学業だけではなくオリンピックで入賞したりするのも、優れた業績と考えられるのだそうですが、ほんとうにそれが正しい「奨学金の返還免除」の基準と言えるのでしょうか。どうも納得できません。学生の挙げた業績など、所詮は研究室の力の差にすぎないということもあるのではないでしょうか。
確かにこの方法だと、最初から免除になっている人間以外は全員が返還義務を負いますので、取り扱いは楽でしょう。でも、それが経済的学業支援のほんとうの姿なのでしょうか。
大学院の修士・博士課程を通して奨学金を借りると650万円くらいの借金になるはずです。卒業と同時に1000万円近い借金を背負ってしまうと、よほど高給の職にでも就かなければまじめに返還しようという気分になれないことは十分想像がつきます。最近はそのからくりに気がついているのか、奨学金の貸与を希望しない大学院生も増えています。高額な借金をきらって博士課程への進学を拒否する学生もいます。
政府の方々は、日本の将来をどうしようと考えているのでしょうか。大学院生はみんな有権者なのですから、団結すれば24万票くらいを持った圧力団体になれます。
そろそろ政治的に動くことも考えなければ、大学院生はこの先も虐待され続けるでしょう。

休学してその間にバイトして、次のバイトが出来ない実習の多い学年を乗り切ろうという学生が居ます。奨学金は住居生活費に無くなり、授業料をバイトで稼ぐ大学生。理科系は実習実験が多く大変です。文科系も真面目にやれば同じでしょう。高等教育は贅沢品扱いというのが我が国でしょうか。
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娘2人は国立大学の理系の研究科を卒業しましたが、現在2人とも月に2万程度を返済しています。区からも奨学金を借りたのでそれは私が払っていますが、合計月6万近くの返済額となります。下の娘はいわゆる先端技術の研究をしていましたが借金を増やすより働く方を選びました。以前書きましたが2人とも成績は良く学部長推薦などを貰ったのに、きちんとした就職もできないまま上の娘は専業主婦になってしまいました。国の資源を使い、長時間の実験や勉強を経てなにも活かすところがない。なんという人材の無駄遣いでしょう。
ホリエモンなんて大学中退ですよね。はっきり言ってお金を稼ぐ才能以外の教養があるようには思えない人です。首相にも教養が感じられません。そういう人達が学問などを軽蔑しているのが今の日本なのかもしれません。何十年か経って後悔しても遅いのですが、そういう人達は日本がダメになっても、教育を破壊したせいだとは気がつかないんでしょうね。
この件も、すでに手遅れなのかもしれません。
この件も、すでに手遅れなのかもしれません。

そういえば最初のスローガンは米100俵でしたっけ。大事なのは教育だと叫んでませんでした?

こんにちは.まさに同感です.大学に身をおき,進学をすすめている人間にとって,なんとかしないといけないと思ってはいるのですが...今度の選挙も,改革(官から民に)は総論賛成が大多数派をしめている選挙で,なんともいいようがありません.受益者負担原則がすべてに適用される殺伐とした世の中をほんとうに大多数の人が望んでいるのでしょうか.
そう言えば「米100俵」というのがありましたね。郵政民営化も数ヶ月後には、「そう言えば『郵政民営化』というのもあったね」という話になりそうです。まあ、我々国民の責任なんですが、、、、。
>受益者負担原則がすべてに適用される殺伐とした世の中
私の「感触」なのですが、苦しんでいる人ほど他の人に厳しいような気がします。小泉さんを支持しているのも、一握りの勝ち組を除くと彼らに搾取されまくっているかなり苦しんでいる人達の層だったりすることもありそうです。そして残念なことに、そういう人達は自分たちよりもちょっとだけ恵まれている層に対して「自己責任」とか「受益者負担」ということを非常に強く主張する存在のような気がします。
結局、勝ち組の小泉派が負け組と中間層を闘わせて共倒れになる隙を縫って、完全勝ち組の世界を完成させようとしているのが今の小泉改革の実態なのかもしれません。かなり厳しい状況です。
>受益者負担原則がすべてに適用される殺伐とした世の中
私の「感触」なのですが、苦しんでいる人ほど他の人に厳しいような気がします。小泉さんを支持しているのも、一握りの勝ち組を除くと彼らに搾取されまくっているかなり苦しんでいる人達の層だったりすることもありそうです。そして残念なことに、そういう人達は自分たちよりもちょっとだけ恵まれている層に対して「自己責任」とか「受益者負担」ということを非常に強く主張する存在のような気がします。
結局、勝ち組の小泉派が負け組と中間層を闘わせて共倒れになる隙を縫って、完全勝ち組の世界を完成させようとしているのが今の小泉改革の実態なのかもしれません。かなり厳しい状況です。
選挙直前に聞きたい!「米百俵」とはどういう意味かを!
目先の飯を我慢してでも、国の将来を背負う人材に投資するということではないのかと。
目先の飯を我慢してでも、国の将来を背負う人材に投資するということではないのかと。

>私の「感触」なのですが、苦しんでいる人ほど他の人に厳しいような気がします。
レスポンスありがとうございます.そういえば,確かに思い当たる節があります.
ある技術職員の方曰く「教員の非常勤を増やすと,大学の予算が節約できる.」
別の場で,ある大学担当の文部官僚曰く「非常勤では教育に責任をもたせることが難しい.」
どうしたものでしょうね...
レスポンスありがとうございます.そういえば,確かに思い当たる節があります.
ある技術職員の方曰く「教員の非常勤を増やすと,大学の予算が節約できる.」
別の場で,ある大学担当の文部官僚曰く「非常勤では教育に責任をもたせることが難しい.」
どうしたものでしょうね...
米100俵にしても、非常勤をどうするにしても、現場と管理側そして納税者である国民、さらにもっとも主要な構成員であるはずの学生が意見を交換する場がないと話になりません。
民主主義を実践しましょう、皆さん!
民主主義を実践しましょう、皆さん!

>民主主義を実践しましょう、皆さん!
ありがとうございます.おっしゃるとおりです.
ありがとうございます.おっしゃるとおりです.
踊る新聞屋ー。さん、ロングテールでのとらっくばっくありがとうございました。この息の長さもブログの醍醐味のひとつですね。
by stochinai
| 2005-09-08 21:11
| 教育
|
Comments(11)