2005年 09月 29日
状況証拠だけで殺人と認定される裁判の恐怖
北海道ではいわゆる「恵庭OL殺人事件」として有名な事件の控訴審の判決が、今日札幌高裁で出されました。1審判決を追認、被告の控訴棄却(毎日)ということです。
昨日の段階までは、マスコミ各社も控訴棄却と無罪のどちらも五分五分の可能性というような報道が出ていたようなのですが、意外とあっさりと控訴棄却になりました。
全国紙の毎日新聞でさえ「決定的な直接証拠や自白がないため、複数の状況証拠の評価が裁判の争点になった」と書いています。それにもかかわらず、裁判長は一審の判決を全面的に支持しました。
弁護団は、即座に上告状を提出したとのことですが、当然でしょう。
事件を丁寧に追い続けている北海道のBNNニュースによると、事件の概要と裁判の経過は次のようになっています。
事件の被害者となった苫小牧市在住のOL・橋向香さん(当時24)は、平成12年3月17日午前8時20分頃、恵庭市北島の市道脇で焼死体となって発見され、同年5月23日、道警は橋向さんの同僚で日本通運札幌東支店キリンビール千歳工場構内課に勤務する大越美奈子容疑者(当時29)を逮捕した。
検察側は裁判で大越被告と犯行を結び付ける直接証拠を示すことはできなかったが、15年3月26日、札幌地裁の遠藤和正裁判長は「被告人単独で被害者を殺害、死体を焼損したことは、合理的な疑いを挟む余地なく認定できる」と、懲役16年(求刑・懲役18年)の判決を言い渡した。
捜査段階から一貫して無実を主張していた被告は、1審判決を不服とし、即日、札幌高裁に控訴。13回に及んだ控訴審は5月24日の公判で結審した。
長島裁判長は1審・札幌地裁判決を支持し控訴を棄却した。
殺人事件をめぐる裁判で、直接証拠がないのに殺人の認定がされてしまうということはとても恐ろしいことだと思います。それにもかかわらず、裁判長の論理は「直接証拠がなければ有罪認定をできないという考えは、(被告人の)自白を偏重することになりかねない」と直接証拠がないことを認めた上で、殺人犯と断定したのです。おかしいと思います。
ここには非常に丁寧な、事件といままでの裁判の追跡記録があります。普通の常識を持って読めば、少なくとも被告人が犯人ではないかもしれないという疑念がわいてくるのではないでしょうか。
控訴審では、死体鑑定で有名な上野正彦元東京都監察医務院院長が証人として出廷しており、彼は「(橋向さんの遺体は)陰部が開脚状態で炭化が激しく、暴行の事実を隠すためかなと私は考えた。ご遺体が発見された時に開脚していたことからして、暴行殺人事件を視野に鑑定しなければならない。判決では10リットルの灯油で焼却していると言っているが、検査データからして結論が飛躍している」と証言しています。
長島裁判長は判決公判で「積雪時期の戸外での性犯罪は考えにくい」と指摘しています。しかし、北海道に生まれ育ったものの感覚からすると、戸外ではなく車内での性犯罪と殺人は積雪とは関係なく起こりうることだと思います。
一方で被告の「社宅にあった(10リットルのポリタンクに入った)灯油が500ミリリットル足りなかった」と主張する検察側は、この500ミリリットルの灯油で遺品を焼却したと主張しており、裁判所もそれを認定しました。しかし、そうなると死体を焼却した灯油の出所が不明になりますが、それでも被告人が10リットルの灯油で被害者を焼いたという検察側の主張を裁判所が認定しています。
このように、控訴審では裁判所はことごとく検察の主張を追認しており、非常に不自然に思われます。あたかも裁判長は、弁護団に感情的恨みでもあるというような印象すら受けます。
刑事裁判の原則である「疑わしきは罰せず」はどこにいってしまったのでしょうか。
殺人事件のような重大な犯罪が、直接証拠なしに認定されるということは裁判の信頼性を大きく損なうことと言わざるを得ません。たとえ被告人が犯人であっても、証拠がない場合にはそれを罰することができないというのが法治国家というものでしょう。
それとも、日本は法治国家ではないということなのでしょうか。
非常に困惑させれられる判決です。
昨日の段階までは、マスコミ各社も控訴棄却と無罪のどちらも五分五分の可能性というような報道が出ていたようなのですが、意外とあっさりと控訴棄却になりました。
全国紙の毎日新聞でさえ「決定的な直接証拠や自白がないため、複数の状況証拠の評価が裁判の争点になった」と書いています。それにもかかわらず、裁判長は一審の判決を全面的に支持しました。
弁護団は、即座に上告状を提出したとのことですが、当然でしょう。
事件を丁寧に追い続けている北海道のBNNニュースによると、事件の概要と裁判の経過は次のようになっています。
事件の被害者となった苫小牧市在住のOL・橋向香さん(当時24)は、平成12年3月17日午前8時20分頃、恵庭市北島の市道脇で焼死体となって発見され、同年5月23日、道警は橋向さんの同僚で日本通運札幌東支店キリンビール千歳工場構内課に勤務する大越美奈子容疑者(当時29)を逮捕した。
検察側は裁判で大越被告と犯行を結び付ける直接証拠を示すことはできなかったが、15年3月26日、札幌地裁の遠藤和正裁判長は「被告人単独で被害者を殺害、死体を焼損したことは、合理的な疑いを挟む余地なく認定できる」と、懲役16年(求刑・懲役18年)の判決を言い渡した。
捜査段階から一貫して無実を主張していた被告は、1審判決を不服とし、即日、札幌高裁に控訴。13回に及んだ控訴審は5月24日の公判で結審した。
長島裁判長は1審・札幌地裁判決を支持し控訴を棄却した。
殺人事件をめぐる裁判で、直接証拠がないのに殺人の認定がされてしまうということはとても恐ろしいことだと思います。それにもかかわらず、裁判長の論理は「直接証拠がなければ有罪認定をできないという考えは、(被告人の)自白を偏重することになりかねない」と直接証拠がないことを認めた上で、殺人犯と断定したのです。おかしいと思います。
ここには非常に丁寧な、事件といままでの裁判の追跡記録があります。普通の常識を持って読めば、少なくとも被告人が犯人ではないかもしれないという疑念がわいてくるのではないでしょうか。
控訴審では、死体鑑定で有名な上野正彦元東京都監察医務院院長が証人として出廷しており、彼は「(橋向さんの遺体は)陰部が開脚状態で炭化が激しく、暴行の事実を隠すためかなと私は考えた。ご遺体が発見された時に開脚していたことからして、暴行殺人事件を視野に鑑定しなければならない。判決では10リットルの灯油で焼却していると言っているが、検査データからして結論が飛躍している」と証言しています。
長島裁判長は判決公判で「積雪時期の戸外での性犯罪は考えにくい」と指摘しています。しかし、北海道に生まれ育ったものの感覚からすると、戸外ではなく車内での性犯罪と殺人は積雪とは関係なく起こりうることだと思います。
一方で被告の「社宅にあった(10リットルのポリタンクに入った)灯油が500ミリリットル足りなかった」と主張する検察側は、この500ミリリットルの灯油で遺品を焼却したと主張しており、裁判所もそれを認定しました。しかし、そうなると死体を焼却した灯油の出所が不明になりますが、それでも被告人が10リットルの灯油で被害者を焼いたという検察側の主張を裁判所が認定しています。
このように、控訴審では裁判所はことごとく検察の主張を追認しており、非常に不自然に思われます。あたかも裁判長は、弁護団に感情的恨みでもあるというような印象すら受けます。
刑事裁判の原則である「疑わしきは罰せず」はどこにいってしまったのでしょうか。
殺人事件のような重大な犯罪が、直接証拠なしに認定されるということは裁判の信頼性を大きく損なうことと言わざるを得ません。たとえ被告人が犯人であっても、証拠がない場合にはそれを罰することができないというのが法治国家というものでしょう。
それとも、日本は法治国家ではないということなのでしょうか。
非常に困惑させれられる判決です。
by stochinai
| 2005-09-29 23:11
| 札幌・北海道
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