5号館を出て

shinka3.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

人間は何種類いるの?

 今日の夕方に、「科学探検隊コーステップ」の小学生が2人、研究室に遊びに来てくれました。

 もちろん、ラジオ放送のクルーであるCoSTEPのKさんを筆頭に、Mさん、Sさんを引き連れてです。

 私は講義があったので、ちょっと遅れて研究室に帰ってみると、卒業研究生や大学院生に囲まれてカエルやオタマジャクシの水槽をかき回して遊んでいるところでした。楽しそうです。

 ひとしきり動物たちと遊んでから、ちょっと真面目にラジオ放送の収録をやりました。

 「先生のところでは、どんな研究をやっているんですか」という、お仕着せの質問から始まりましたが、その後は実に素直に感じたままを質問してくれる小学生に、私も少々とまどいながらも楽しんでおりました。

 男の子は「昨日、本を見てカエルの分布とか種類とかを勉強してきたんだ」と言っていて、なかなか関心です。「そうだよね、日本にはそんなにたくさんいないけど、南アメリカなんかにはすごいきれいなカエルがいっぱいいるよね」と私。

 それを聞いていた女の子が、鋭い質問をぶっ放してくれました。「カエルにはいっぱい種類がいるけれども、人間には種類はないんですか」って、大学生は絶対にしない質問ですから一瞬たじろぎましたが、録音は続いていますのであわてず騒がず。

 「そうだよね。肌の色とか髪のいろとか、外国とかにはいろんな人がいるから、そういう人と日本人がヤドクガエルとトノサマガエルみたいに種が違うと思っても無理はないよね。でもね、人間はどんなに見た目が違っていても種は違わないんだよ。みんなヒトという一種類の動物なんだ。それは、どうしてわかるかというと、一番簡単なのは結婚して子供ができるかどうかを見ればいいんだよ。ヤドクガエルとトノサマガエルはもしも結婚しても子供はできないんだけど、日本人とアメリカ人が結婚してもかわいいハーフの子供が生まれるよね。それは、日本人とアメリカ人が動物としては同じ種だということの証明なんだよ」とアドリブでしのいでしまいました。

 人種と動物の種を考えると、人種は動物の品種と同じようなものとされています。つまり、日本人とドイツ人とは秋田犬とグレートデンくらいの違いしかないということです。

 ほんとうは生物学的に検討すると異論がある可能性はあるのですが、倫理的なこともあっていちおう現代人は動物としては世界中のヒトが1種の Homo sapiennsに分類されることになっていますが、生物学的に細かい検討はされていないと思います。というか、してはいけないような雰囲気があります。

 ここのところは、学問の世界ではほとんど絶対に触れないところなのですが、小学生はあっさり乗り越えてくれたりします。

 でも、そんなこともタブーとせずに科学と社会のことを考えるようにしていくほうが、子供達にはずっとわかりやすいのではないかと思います。

 さすがに「科学探検隊コーステップ」のメンバーは鋭いものでした。

 放送は76.2MHzのコミュニティFM局、三角山放送局だそうです。時間は土曜日の夕方だと思います。聴取可能地域の方は、是非ともお楽しみください。
Commented by かえで at 2005-10-04 01:38 x
ふふ。そんな質問をしてしまう小学生も、その質問に対してとっさにそんな風に答えられる先生も、なんだかとても素敵ですね!
Commented by さなえ at 2005-10-04 06:17 x
人間には2種類あってね、貧乏人と金持ちと答えなくてはいけないような世にならないことを希望するのみです。
Commented by stochinai at 2005-10-04 11:14
 とっさに答えることが難しいだけではなく、小学生相手だと「学問的に正しい答」が良い答とは限らないところが難しいですね。冷静に考えると今でも、冷や汗が出ます。

 さなえさん、高校生くらいが相手になると意外とマジでそのように考えている子が出てくるようになります。勝ち負けが決まる前には、みんなが勝ち組になれるような気がするものですから、そのあたりの子供を洗脳するような新自由主義教育って、かなり危険だと思います。
Commented by MAO at 2005-10-04 18:02 x
>人種は動物の品種と同じようなもの

正確に言うと、「人種は家畜の品種と同じようなもの」かな。
人類自体が、自己家畜化というプロセスを内在化させているとも言われておりますね。

最近では、日本人はメディアによる家畜化が進行中。
野生を取り戻せば、異常者扱いで犯罪者にされてしまいます。
Commented by stochinai at 2005-10-04 18:43
 自己家畜化って、前に聞いた時にえらく納得した記憶がありますが、あまり話題にならないテーマなのは、やはり「自尊心」というものが邪魔をしているんでしょうか。
 見えない飼い主に家畜にされてしまうんですよね。やっぱり怖いです。
Commented by ぢゅにあ at 2005-10-04 22:01 x
我が家の小学生がぎょっとする質問をした場合の応急措置は
「あなたはどう思う?」と逆質問。(ちょっと姑息?)
その答えをヒントにどういう答えを期待してるのか探りますね。
子供の意外なコメントにさらに驚くこともあります。
Commented by stochinai at 2005-10-04 22:40
 さすがに現役の親はずるさが違いますね。大学生や大学院生を相手に暮らしているとぎょっとさせられる質問などとはほど遠い生活をしていますので、小学生にやられてしまうのです。
 がんばれ、大学生・大学院生!
Commented by sapporokoya at 2005-10-05 00:28 x
はじめまして。

相手が小学生の場合はいいのですが、例えば悪意がある大人があえてこのような質問をしてきた場合、どのように返答するのが「正しい」のでしょう?
あえて政治的や宗教的な問題、もしくは疑似科学やオカルトを、一般の科学に絡めて語ろうとする人たちに対して、正しいサイエンスコミュニケーターのとるべき立場とは、どのようなものなんでしょう。
個人的にはこの手の論争は大好きなのですが、場合によっては単純に論破すればいいってもんでもないような気もしますし。
Commented by stochinai at 2005-10-05 23:36
 そうですね。コミュニケーションというのは論争とは違うものだと思います。勝つとか負けるとかではなく、どうして相手がそのような「悪意の」質問をしたのかを解き明かし、相手にも自覚してもらうことから始めなければならないです。そういう意味では、ぢゅにあさんが子どもに聞かれた時と同じように「あなたはどう思いますか?」とまず相手に答えてもらうのも良いかもしれません。
 コミュニケーションなしの論争の行き着く先は戦争になってしまいそうです。
 思い返せば、今回の選挙もコミュニケーションなしの叫び合いでしたね。
Commented by たけぞ at 2020-07-13 13:29 x
15年前の記事なのか・・・。小学生レベルの「人間は何種類?」という質問を、部屋にいたピョンピョンはねるハエトリグモを見て.oO「蜘蛛っていっぱい種類あるよなぁ・・・じゃあ人間は?」と思って思いつき、ググってたどり着きました。
Commented by STOCHINAI at 2020-07-13 15:03
それは恐縮でしたがコメントをありがとうございました。
by stochinai | 2005-10-03 23:44 | CoSTEP | Comments(11)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai