5号館を出て

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はじめての・・・

 全学教育の1年生を中心に開講されている「科学・技術と人間の倫理」という講義科目があります。2年前から実験的に開講している講義ですが、普通の講義とは全然やり方が違います。

 十数回の時間のうち何回かは、N先生の「モラル・セオリー」という、いわゆる倫理学の講義もあるのですが、その他の時間は最近の日本あるいは世界で実際に起こった「事件や事故」を題材にして、実際に何が起こったのか、どのように対処されたのか、それは正しかったのか、ほんとうはどうすべきか、などについて自分たちで調べ、討論し、結論をまとめていくというケース・スタディのグループ作業が中心になる授業です。

 この授業は3クラス開講されていて、「科学・技術と人間の倫理」の下にサブタイトルとして「テクノロジーの倫理」「ジャーナリズムの倫理」「生命と生物の倫理」という3つのクラスを作ってケース・スタディをすることになっています。

 初年度はどのクラスも少人数で、1-3グループずつでなかなか良い結果が得られたのですが、昨年度は何かの手違いあるいは誤報があったものと思われ、工学部の学生を中心に百数十名という大人数が押しかけてきて、残念ながら少人数でのグループ討論が崩壊状態になったところもありました。

 その失敗に懲りて、今年は特別な集客作戦は行わなかったところ、先日の初日講義のときに集まった学生はわずかに十数名、なんと昨年の10分の1以下となってしまいました。

 まあ、今時の新入生に「倫理」などという講義はミスマッチなのかもしれず、「論理」と勘違いしている学生すらいる時代です。このくらいの数が妥当なところなのでしょう。

 で、私が担当している「生命と生物の倫理」は先週の段階で、ひょっとしたら取るかもしれないという学生を入れてわずかに4名でしたが、ある意味でこのくらいの人数で1対1以上(私のクラスは教員3名、TA1名で運営します)の指導ができるとすれば、学生に取っては夢のような濃い教育が受けられるということにもなります。普通の講義に比べるとコストパフォーマンスは50倍くらい高くなります。それでも授業料は他の学生と同じですから、こんなにおいしいことはないですね。

 ところが、一週間たった昨日の第2回目、実際にケース・スタディを始めようとグループに分かれたところ、なんと我々のグループは2名しかいないことが判明しました。まあ2名いれば議論もできるし、まったく不可能というわけではないのですが、やはり苦しい。そこで、全体を統括するO先生が隣のテクノロジーのクラスから1名をリクルートしてくれました。

 3人いればなんとか大丈夫です。文殊の知恵も出るでしょう。

 最初の時間(といっても10分間くらい)はお互いに自己紹介をしました。こういう小さなグループ授業では、ある意味ではお互いのコミュニケーションがすべてを決定すると言っても良く、そのためにはお互いを知り合うというステップはとても大切です。どうしても、おろそかにはできません。

 というわけで、もちろん悪気はなかったのですが、グループ討論最初の日から学生からは「時間オーバーってだけで減点」と評価されてしまう結果になってしまいました。すみません。

 3名の学生さんは、文学部・工学部・理学部となかなかバランスのよい取り合わせです。

 ただし、この人数は1人でも欠けるとかなり苦しい人数です。それで、最初にお願いしたことは、いろいろと事情があるかもしれないけれどもどうか休まないで欲しいということでした。

 授業料を払っているのに休まないでくださいと頼まれる学生さんもつらいところかもしれません。しかし、休まずにきてもらえれば、それなりのものが得られることは保証します。なんせ、家庭教師以上の懇切指導なんですからね。

#だから、授業料を取られないCoSTEPの授業は休んだらダメなんですよ>Rさん。休むなら、こっそり休んでください。赤い字で大きく脱講宣言なんかすると、休まれた日に担当する先生が傷つきます。・・・・・まさか、私だったりしないですよね。^^;
Commented by 志賀 格 at 2005-10-13 01:37
2年前に「科学技術と人間の倫理」でお世話になりました。いろいろあるようですが、着実に大学の中に定着しているようでうれしい限りです。終電ぎりぎりまで遺伝子がどーの、優生学がどーのと議論していたのが懐かしいです。
Commented by R at 2005-10-13 03:33
だから、2の方はTBしないでこっそり書いてたのにぃ・・・(どこがだ??)
だって、試合の日程が決まってて、後から講義の予定が決まったわけで・・・(いやいやスケジュールは公表されてたし!!!)
ほんとに反省しております。
授業料については、取られないのは生徒の都合じゃないような気が・・・ってそういう問題でもないですね。
重ねて反省します。
Commented by さなえ at 2005-10-13 11:41
5号館のつぶやきさんのところは千客万来なのでTBさせていただきました。ちょっと倫理つながり。苦しいかな。
しかし、親の格差が大きくなり、子供が自立して自分で授業料も出さなくてはならない事態になると、なぜ休講だ、金返せという正常な状態になるやもしれません。私の経験だけですが、海外では休講などあろうものなら生徒のブーイングがすごいし、まずない、授業中は私語ひとつないです。
Commented by stochinai at 2005-10-13 17:11
 志賀さん、おひさしぶりです。最初の授業が成功したことのひとつは社会人の志賀さんがいらしたからです。楽しかったですね。

 Rさん、まだまだ始まったばかりで、お互いに手探り状態なのです。そうした中、教える側ばかりではなく、教わる側も同じくらいの比率でCoSTEPを作り上げていくのだと感じています。よろしくご協力をお願いします。

 さなえさん、私はいつも学生に「なぜ休講だ、金返せ」と言え、と強要したりしています。「休講などあろうものなら生徒のブーイングがすごい」ところで講義してみたいと切望しています。不景気のおかげでそうなるなら、それは拾いものだと思います。
Commented by 志賀 格 at 2005-10-14 01:48
コメントありがとうございます。CoSTEPも楽しそう(不謹慎か)ですね。科学技術に関するコミュニケーションを取り扱われるようですが、「科学・技術と人間の倫理」でも説明する行為が重要な要素であったと思います。コミュニケーション能力はすべての基盤といえますね。

CoSTEPの成功とそこに学ぶ人たちが得るものが多いことを祈念しています。
by stochinai | 2005-10-12 12:41 | CoSTEP | Comments(5)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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