5号館を出て

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公務員たたきの一環としての教員たたき

 今日行く審議会さんのところの「教員は優遇されているそうです。教員になってみませんか?」にトラックバックします。

 まあ、私も教員の端くれなので、「お前の給料は働きに比べて高すぎる」と面と向かって言われたら気分は悪いですが、私の生活を知っている人に私の給料を教えるとあまりの安さに唖然とされることの方が多いです。

 共同通信配信のSankeiWebニュースが一番長く書いているので引用しますが、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の西室泰三分科会長(東京証券取引所会長)は、記者会見し『(人材確保法などで)教職員をあまりに優遇し過ぎだ。この制度は現実離れし、既得権益になっている』と強調し」たそうなのですが、東京証券取引所会長の給料は教員のみなさんより安いんでしょうか。既得権益はないんでしょうか。とても、気になりました。

 まあ内容自体は、政府の「財政改革」の一環で続いている下級公務員バッシングがまた来たかという感じなのですが、「財務省によると、2003年度の手当を除いた本俸は、小中学校教職員の平均が月額39万9842円だったのに対し、一般行政職は35万8852円で11.4%(約4万円)高かった」とのことです。審議会のみなさんの多くは、そこいらの先生よりもあ遙かに高給を取っていると思うのですが、それに見合うだけの汗を流していると自信を持って言える人ばかりなのでしょうね。

 私が知っている小中学校の先生は、たとえ月給が国民の平均よりも4万円高かろうが、休日や自宅でまで公用をこなし、給料以上の仕事をしている強い印象があります。もちろん、中には「月給泥棒」と呼ばれるような生活をしている先生もいるかもしれませんがそれはどんな職業にもいるはずで、現場で働いている先生方はどんなに手を抜きたいと思っても、そうそう抜けない状況にあります。あたりまえのように高給取りの重役や社長さんや会長さんなどのように優雅に暮らしている人はいないと思います。

 そんな現場にいる人に対して、彼らよりも遙かに遙かに高い給料を取っていると思われる東京証券取引所会長などという雲の上にいるような人が「お前らの給料は高すぎる」などと良くも言えるなあというのが正直な感想です。

 職業の内容を詳細に検討することなく、平均をとって比較するなどいう「評価」は昨日のエントリーに書いたインパクト・ファクターと同じような意味のないものだと言わざるを得ません。

 どうしても比較したいというのなら、仕事の内容、実質労働時間、職を得るためにどのくらい大変か(学歴や競争など)、そういうものが同じような状況にある職種同士を比較していただかなければ公平な比較にはならないはずです。

 そうしたところまで突きつめたあげくに、やはり教員は必要以上に優遇されているということならば、説得力も出るというものです。財政制度等審議会のみなさんは、科学的な判断をいうことを学んだ方達なのでしょうか。もしそうならば、きちっと比較のためのデータを示していただきたいと思います。

 産経ニュースの最後には「ある委員は『少人数クラス制を進めたが学力は低下した。教員を増やせば学力が向上するとの考えは、改めるべきだ』と主張。教職員の定員も減らす必要があると指摘した」ということまで書いてありますが、少人数クラスにしたこと(が理由)で学力が低下したなどというデータはどこにあるのでしょう。学力が向上しないのなら教員を減らせという議論は予備校でやられるのなら納得もできますが、義務教育の小中校は学力向上だけを目標にしている組織なのでしょうか。

 だいたい財政制度等審議会などという教育の素人が、教育制度を変えろなどという答申をすることまでが期待されているのでしょうか。

 山口二郎さんがどこかで書いていたと思いますが、平均値を取ったりすると一般の人よりもちょっとだけ給料が高かったりする公務員を血祭りに上げ、国民の憎悪をかき立てて、巨悪は見逃し身近な小さな(悪ですらないような)「悪」を集中的に攻撃することで「構造改革」をやろうとしている今の政府のやり方は、非常に悲しいものを感じます。

 弱いもの同士を闘わせて、最強のものがリングの外でぬくぬくとしているような「改革」の先に希望の光を見ることはできません。
Commented by kaikai at 2005-10-22 00:16 x
トラックバックありがとうございます。
 審議会の委員は、「教員を増やせば学力が向上するとの考えは、改めるべきだ」などという根拠も何もないことを本当に考えているのでしょうか。少子化だから教育に関する様々な費用は抑制されるべきだと考えているようです。しかし、教育に関する公的支出を抑制している国は先進国ではほとんど無いと思います。
 教員の既得権のためにではなく、子どものため国の将来のために他国は支出を拡大しているというのに、日本はその逆のことをしているように思います。
Commented by kshojima at 2005-10-22 01:14 x
教職調整額を時間外手当にした方が教員としてはありがたいですが、払えなくなるでしょう。
公務員削減もいいですが、人を減らして、給与も減らしていい仕事を求めるのはどうかと思います。これではいい人材は集まるわけないので。結局は血税が宛がわれているという論理に集約されるのでしょうが・・・。
米百俵といっている人がトップに立っている政府が何をやっているのか最近わかりません。
Commented by papa at 2005-10-22 09:50 x
まったくもって,同感です.
大学の評価の話になりますが,総合科学技術会議にいろいろな指標で国立大学法人の全順位表がのってます.弱小大学にいるものにとっては,なんとも絶望的な順位表です.この表からいくと,わたしの所属している大学の教職員の給料は50%以上削減ということになるでしょうか.毎日全力をだしているつもりですが,手には竹槍くらいしかありませんから,大手が入り込めなさそうな空隙をつくしかありません.
Commented by stochinai at 2005-10-22 14:13
 教育のことをきちんと論ずることのできる人が政府近辺にいなくなっているということだと思います。教育は未来への投資ですので、自分がお金を儲けることを是とする小泉流新自由主義の中では「投資しない」ということが正解ということなのでしょうか。年金のこともそうですが、未来を考えている余裕などないというのがこの国の今の姿なのかもしれません。
 教育がひどくなってきているから人とお金をつぎ込まなくてはならないはずなのに、ひどくなってきているから人とお金をつぎこんでも無駄だというのが財政制度等審議会の結論ということでしょうか。
 その人達の教育にも失敗したツケだと考えてあきらめなければならないのでしょうか。
Commented by osumi1128 at 2005-10-22 17:41
給料が高いか安いかは、どういう対象と比較するかで変わります。
教員の給料が一般行政職と同じであるべきという根拠がどこにあるのでしょう?
学校崩壊と叫ばれて、より能力の高い教員が求められているくらいなのに・・・
とにかく、現場の先生たちの気持ちを考えたら、あまりに酷い話で、審議会の見識を疑います。
Commented by stochinai at 2005-10-22 18:06
>現場の先生たちの気持ちを考えたら、あまりに酷い話
 まったくです。こういう答申が出ることで、現場で一所懸命やっている先生方のやる気がそがれることが一番恐ろしい効果かもしれません。ダメなところを見つけて追求するのではなく、良いところを見つけて伸ばすというような政策が取れないほど、日本は追いつめられているのでしょうか。
Commented by azarashi_salad at 2005-10-22 18:37
こんばんは。
この件を報道していたTVのニュースキャスターやコメンテイターも、自らの所給については一切言及せずに、Aに比べてBは貰い過ぎ的な論調で、見ていて非常に下品に感じました。
唯一、江川昭子さんのみが、仕事量と所得を多面的に比較しなければ一概に断言できないと、正論を主張していました。
本当に、今のマスコミのレベルは地に落ちたと言っても過言ではないですね。
Commented by さなえ at 2005-10-22 20:41 x
しばらく前のことでうろ覚えです。確かアメリカの話しだったと思うのですが、教育の質が落ちているのは教師の質が落ちているからだとして、教師の給与を大幅に上げて人材を募集したところ生徒の成績が伸びたというニュースだか、本だかを読んだことがあります。こちらが正解でしょうね。
Commented by nochi at 2005-10-23 10:32 x
まったくもって同感です。ツレアイの両親と義姉が教師なのですが、彼らの生活を見ている限り、決して働きに比べて給料が高すぎるとは思えませんね。この、「誰かをたたいてすっきりしたい」と言わんばかりの発想は、いったいどこから出てくるのでしょうか。また、こういう暴論に「乗っかって」、テレビなどで堂々と教師や公務員を責めるニュースキャスターの、あの自信はどこから来るのでしょうか。テレビという公共のモノを使って、自分の「私見」にすぎないものを堂々と言える立場にいるだけで、すでに「強者」側にいることを忘れてほしくないものです。彼らが責めている「公務員」のほとんどは、それでも日々の仕事に取り組んでいくしかないのですから。
Commented by THE義務教育 at 2005-10-23 22:08 x
こんばんは。THE義務教育のワタナベです。トラックバックありがとうございます。「教員給与引下げ報道に関して」のTBセンターを日本ブログ村の教育ブログページに作りました。http://education.blogmura.com/rpc/trackback/50760
是非トラックバックしてください。いろいろな意見を一同に集めて、みんなでいい方向に考えていけるといいですね。
Commented by y at 2005-10-24 13:54 x
給料が安いと,文句があるなら
アンタ,民間で働けばいいじゃないか
Commented by stochinai at 2005-10-24 14:22
 給料高いとこありますか。あったら、是非紹介してください。うれしいです。
Commented by y at 2005-10-24 14:26 x
そんなことは知らないよ
自分で見つけろよ
甘えてんじゃないよ

アンタの働きしだいだろ
Commented by stochinai at 2005-10-24 14:33
>甘えてんじゃないよ
 スイマセン(^^;)
Commented by y at 2005-10-24 14:39 x
だからさ
民間で働いてみた後に
この本文みたいな台詞が吐けるかね?
Commented by stochinai at 2005-10-24 14:43
 民間といってもいろいろあると思いますが、たとえばマスコミや放送関係だととても給料が高いと聞いています。確かに平均をとると給料が安い職場も多いのだと思いますが、どちらも民間です。「民間」で働くということでひとくくりにはできないと思いますが、どうでしょう。
Commented by y at 2005-10-24 14:48 x
まあ,フジテレビでもなんでもいいからさ
とりあえず民間で働いてみなよ

考え方も変わると思うよ
Commented by stochinai at 2005-10-24 15:00
 それは、素晴らしい提案です。チャンスがあったら是非とも働いてみたいと思います。それで考え方がどう変わるか、楽しみでもあります。
 ちなみにもしよろしければ、どういうふうに変わるかちょっとだけでも教えていただけませんか。予告編としてでもワクワクします。
Commented by y at 2005-10-24 15:27 x
チャンスはいくらでもあるよ
今すぐ大学やめればいいよ

まあどうせやる気もないだろ
根性なしのくせしやがって
大言はくなよ
Commented by stochinai at 2005-10-24 15:36
>根性なしのくせしやがって
 というのは当たっていたりします。
Commented by stochinai at 2005-10-24 15:39
> チャンスはいくらでもあるよ
 というのは、とても力強い励ましの言葉になります。本気にしても良いのでしょうか。
Commented by y at 2005-10-26 01:57 x
知らないみたいだから教えてやるけど、
民間じゃ、おまえが書いているような
糞みたいな論文をいくら書こうと、
1銭にもならないし、「馬鹿だ」といわれるよ。

おまえなんか無に等しいのだ
思い上がるな

今の境遇をありがたくかみしめろ
Commented by anti-y antibody at 2005-10-26 02:17 x
「y」様
あなたの一連のコメントは建設的でないし、ブログ参加のマナーから大きく逸脱しています。そういうコメントをしたいのなら、例えば2chへでも行くことを勧めます。「5号館」さんのブログを愛好する1読者として、ブログ環境を損なうあなたの言動にはもううんざりです。
Commented by y at 2005-10-26 02:29 x
なんの反論にもなってないけどな

ただ、勘違いしている世間知らずの馬鹿野郎に
一言いいたかっただけ

もう言いたいことは言わせてもらったので
2度と来ません
Commented by inoue0 at 2005-10-26 09:17
言うだけ言って、反論は聞く耳持たないなら書くなよ。
私に言わせると、たとえばフジテレビの社員は大学で講義したり論文を書く能力はもってないだろうし、大学教員もその逆はできない。べつにどちらが上とか下ってわけじゃない。
ちなみに、yさんは「クソみたいな論文」を書く能力がおありなのでしょうか?
Commented by blue at 2005-10-26 10:32 x
 最近、出張が多くて体調を崩して今日は病院に行ってきて休業。ところで、待合室で新聞を見ると北海道道庁職員一律10パーセント減給とか、高橋知事も大胆ですね。一方でヒルズ族や株の指南の記事があったり、何でも短期的な金で判断の世のようで、世紀初めとはいいつつ世紀末かなあ、。公務員の給与を下げるは、実に安易なポピュリスト的政策ですね。給与を下げるは質を下げるわけで、無駄を省くとは次元が異なる。世論は多分、質の割りには給与は高いでしょうが、そうですかね?山口二郎氏の意見が真っ当のように見える。安かろうは悪かろうが市場の原則です。
Commented by stochinai at 2005-10-26 11:56
>出張が多くて体調を崩し
 お大事にしてください。

>北海道道庁職員一律10パーセント減給
 金額的にはかなり大変なことだと思うのですが、まあ全員一律ということならば仕方がない気もします。しかし、
>安かろうは悪かろうが市場の原則
 は間違いありませんから、今後は就職希望者が減り、質が低下することは避けられないと思います。

 公務員の給与もどんどん下げてみれば、すぐにわかると思いますが、今は給料がそこそこ良くて安定しているので、そこに就職したいという学生が競争状態になっているということ(教員も同じです)で、ある程度の質が保証されているということは、同じ道を歩んできた官僚達が一番良く知っているはずなんですけどね。
Commented by inoue0 at 2005-10-26 19:01
 公務員の給与引き下げは増税の前兆です。歴史的にも、公務員の俸給引き下げと増税は同時に行われてきました。日露戦争前なんてその典型で、皇室費を天皇自ら返上すると同時に、公務員の給与カットと大増税をして軍備を調達しました。
Commented by stochinai at 2005-10-26 20:29
 なんか、それはその通りに進行しそうな気配ですね。次は開戦ですか。
Commented by vtec at 2005-11-01 22:51 x
yとは何者なのだろう・・・ 彼は民間のいったい何を知っているのでしょうかね。本当にネットの常識のない方ですね。もちろんこういう方は社会でも常識のない方だと思いますので、管理者の方も気になさらないほうがいいと思います。
Commented by stochinai at 2005-11-02 17:04
 vtecさん、お心遣いありがとうございます。yさんくらい長々とつきあってくれる人も珍しいんですが、たとえ匿名でも何回かやりとりをしているとどんな人か見えてくるものです。

 ただ、乱暴な言葉でののしられると結構ショックを受けるものです。DVとかアカハラとかのケースに似ているかも知れませんね。ともかく大きな声や、汚い言葉で相手を傷つけることで優位性を確保しようということなのかもしれません。コメント・ハラスメント(略してコメ・ハラ)という言葉をはやらせようかとも思います(^^)。

 ただyさんのような方の場合、私ではなく他の読者の方からのコメントがあると比較的すんなり引いてくれることが多いようです。皆さんが黙っておられると、自分の意見に賛同していると思われるんじゃないでしょうか。そういう意味で、たしなめてくださる方がおられると救われることが多いものです。

 というわけで、荒れそうになったら(静かに、冷静に)ご協力を願えるとありがたいです。
Commented by magu at 2005-11-02 20:32 x
コメ・ハラ問題によるブログ環境悪化は、ブログ管理者・参加者にとって大きな問題です。この問題は、例えば、柳田先生のブログ「柳田充弘の休憩時間」にも見られたことです。最近のブログで柳田先生は、第二期ブログでコメント欄を閉じた理由の一つに、「きついコメントもかなりある」から、と述べています。コメ・ハラ対策にコメント欄閉鎖というのでは、ブログの持つ双方向コミュニケーションが不可能になり、失うものが多いと思います。そうならないように、ブログ参加者にはマナーを守っていただきたいものです。反論するにしても、「相手を侮辱せず説得する」というのは、民主主義の基本的ルールのはずです。怒号や恫喝、侮蔑言葉を用いるのは、それだけでルール違反でしょう。
Commented by stochinai at 2005-11-02 20:48
 maguさん、ありがとうございます。私もコメントやトラックバックをできなくしたブログはもはやブログではないと思いますので、ここでは決してそのようなことはしません。

 マナーを守りましょうというのは正当な呼びかけですが、破壊者はどこにでもいるものですので、出現を防ぐことはできないと思います。結局、あるブログを守りきれるかどうかは、そこに成立しているコミュニティの問題だと思います。管理者だけでブログが成り立っているわけではありません。最後の責任は管理者が負うことは当然としても、ブログは読むだけの方、コメントも書いてくれる方、トラックバックもしてくれる方全員で作っているコミュニティだと思います。
 私が続けていられるのもコミュニティの皆さんのご協力があればこそですので、これからもさりげなくサポートしていただけるとありがたいです。

 どうぞよろしくお願いします。
by stochinai | 2005-10-21 22:36 | 教育 | Comments(33)

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