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ゼブラフィッシュとメダカの磁場感知能力について

 19日のThe Scientistの記事にゼブラフィッシュやメダカの磁場感知能力について書かれていました。

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 我々(ヒト)は日常的には磁界を感知することはなく、東西南北を知るためには太陽の位置を参考にしたり、磁気コンパスや今の時代ならスマホのGPSの力を借りなければなりません。ところが動植物の中には地磁気を感知できる能力をもったものが意外に多いことが知られています。

 渡り鳥は太陽や星座の位置などで渡りの目的地を見出すことはかなり古くから知られてはいましたが最近では彼らは地磁気を感知することもできることがわかってました。そうした研究を突破口にいろいろな動物が地磁気を感知していることが見出されてきています。

 上の記事では最近出版されたNature Communicationで脊椎動物のモデル実験動物としてよく使われているゼブラフィッシュとメダカを使って彼らにも磁場を感知する能力があることを証明している論文が紹介されています。


 この雑誌はオープンアクセスなので興味がありましたら全文を読むこともpdfでダウンロードすることもできます。

 その論文の最初の図で今回の論文も含めて、動物界で調べられている磁場の感知能力がまとめられています。

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 細かいところはどうでもいいのですが、今までいろいろな動物で知られている磁場の感知能力メカニズムには光受容(主に短波長の青い光)と関係したもの(図で黄色の丸で示されている)と、光には関係せずに細胞内にある磁性体金属が磁場を感知しているもの(図の中では黒丸で示されている)に大別されることがわかってきています。中には両方のしくみを使っているか、あるいはまだはっきりしない未知のメカニズムもあるのかもしれないもの(黄色と黒が半々に描かれています)があるようですが、脊椎動物・無脊椎動物を問わずいろいろな動物群の中でも使われているメカニズムはまちまちのようです。これは動物の進化の過程で磁気の感知能力がそれぞれ無関係に出現してきたことを示しているのかもしれませんが、そうだとしてもたった2つのメカニズムしか出現してこなかったことに関しては、地球の磁気を検出する生物物理的手段はたくさんあるわけではないことも示しているように思われます。

 我々は自分が磁界を感知できないのが当たり前だと思っていますが、この図を見るとむしろ多くの動物は磁界を感知できているように思われ、我々のほうがマイナーな存在なのかもしれないと思えたりします。

 それはともかくこの論文ではおもしろいことが報告されており、メダカやゼブラフィッシュが成魚になると外界の磁場に対して一定の定位を示すことと、小魚のうちは泳ぎ回る方向性に関して磁界に反応するということが実験で示されていておもしろかったです。

 こちらが大人のサカナでの実験結果です。

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 磁場に対して特定の方向を向く傾向が示されています。そしてこちらが幼魚の泳ぎ回る方向性を調べたものです。こっちはかなり微妙だとは思いましたが、統計処理をすると差が出ているようではあります。

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 最近の論文ではこういう「行動学的」結果だけを示したのではデータ不足であると指摘されることが多いので、この論文では小魚の時に磁界にさらされることで脳内の特定の場所に磁界に反応するために使われている神経細胞が増えるということも示しています。

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 細胞の数などを顕微鏡で見ている蛍光写真などはぱっと見るとなるほど増えている場所がありそうですね、と思いますが数を統計処理したものの差はやはり微妙かもしれません。

 とはいうものの、とりあえずこれだけのデータでこれらのサカナには磁界を感知し、さらにそれに反応する神経回路も発達することが示されているようには思います。現時点では、その能力が彼らの生活や生存にどのように関与しているのかが今ひとつはっきりしませんが、そうしたこともいずれわかってくるとおもしろいですね。

 論文の1番目の図をながめていると我々ヒトでも磁場を感知できても不思議はないと思われ、ヒトによってはそうした能力が高いケースもあるのかもしれず、そうした差がいわゆる「報告感覚の鋭い人」や「方向音痴」と言われる差になっているのかもしれず、そうしたこともだんだんと明らかになってくるのかもしれません。

 生物学はまだまだ発展を続けます。








by STOCHINAI | 2018-03-22 22:15 | 生物学 | Comments(0)

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