5号館を出て

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セシル・テイラー没す

 芸術の世界では「孤高」という言葉が似合う人がたくさんいますが、ジャズの世界ではこの人ほどその言葉が似合う人もいなかったと思います。セシル・テイラーです。彼が亡くなったというニュースが飛び込んできました。

 セシル・テイラーと言われて思い出すのがこの写真です。

セシル・テイラー没す_c0025115_22144079.jpg


 このレコード、探せばどこかから出てくると思いますが、私が個人的にセシル・テイラーと聞いてまず思い出すのがこの映像です。

セシル・テイラー氏死去 フリー・ジャズの先駆者
時事2018年4月7日12時51分
 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)などによると、セシル・テイラーさん(米ジャズピアニスト)が5日、ニューヨークの自宅で死去、89歳。死因は不明だが体調を崩していたという。
 ニューヨーク出身。6歳でピアノを弾き始め、大学でピアノやクラシック音楽を学んだ。打楽器的な演奏スタイルで即興音楽を生み出し、フリー・ジャズの先駆者として知られた。2013年に京都賞の思想・芸術部門を受賞している。(時事)

 私がジャズを聞き始めた学生のころのジャズの主流はビー・バップからモダン・ジャズだったのですが、そろそろニュー・ジャズとかフリー・ジャズといって、リズムや音階を破壊しながら演奏する新しいスタイルが出現してきた頃でした。もちろん新参者のリスナーとしてはほとんど理解することもかなわない「難しい領域」ということでただありがたく拝聴させていただいた記憶が強烈だったのですが、だんだんとそうした音楽にも慣れていったような気がします。

 そして何十年かたって最近になって聞き直してみると、その当時「難解」と思っていたこれらの音楽がとても素直に聞こえるようになっていることに気がつきました。

 ありがたいことにYouTubeで当時の演奏を映像付きで鑑賞することができます。さすがにセシル・テイラーは当時からポピュラーではなかったので最盛期の映像はほとんど残っていないのですが少しは残っています。そんな中で1974年のモントルー・ジャズ・フェスティバルのものがありますので、追悼の意味を込めて聞いてみましょう。



 当時は無理して聞いていながら、「なんだこれ」という感じであまり良くわからず、楽しんで聞くというより「勉強させていただく」という感じで聞いていたはずの彼の音楽が今になって聞くと、とてもメロディアスで楽しく聞けて、「乗れる」ことにもちょっと驚きます。

 日本でもセシル・テイラーの影響をもろに受けた山下洋輔というピアニストがいます。

 セシル・テイラーもそうですが、山下洋輔もクラシックの基礎がしっかりとできていて、すごいテクニックの持ち主であることはちょっと聞くとすぐにわかるのですが、それをジャズとどうつなげていくのかというところで、我々素人にはすぐには彼らの考えていることが理解できなかったのだと思いますが、今だと山下洋輔の音楽も非常に素直に聞ける自分がいることを発見できます。



 彼らの後を継いでいる音楽家もいるに違いないと思うのですが時代とともに音楽の流れも変わってきていて、直接に彼らの後継者を名乗りながら今の時代のポピュラリティを獲得している人については私はあまりよくわかりません(きっといるのだとは思いますが・・・)。

 そんな中で本人もまわりもあまり意識してはいなさそうなのですが、私の中でつながってくる子孫のひとりに上原ひろみがいます。

 クラシック音楽で育てられて、ものすごいテクニックを持ち、打楽器のようにピアノを叩きまくり、自由自在にピアノを鳴らせる人ということで思いつくのが彼女です。

 その系譜を感じさせてくれるビデオをご紹介します。



 音楽的には私は素人ですので、感じたままにいい加減なことを言っているだけですが、このピアノを叩きまくる「音楽」を時々ものすごく聞きたくなることがあります。しばらく聞いていると疲れてくるのですが、しばらくするとまた聞きたくなる麻薬性があります。

 というわけで、今日は89歳で永眠されたフリー・ジャズの巨匠の死を哀悼したいと思います。ごゆっくり、おやすみください。








by STOCHINAI | 2018-04-07 22:22 | その他 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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