2018年 08月 26日
科学と芸術のケミストリー
今日は午後からお誘いがあって参加することになったのがこちら。
開催場所が我が家と北大の中間地点のところにある「札幌市こどもの劇場やまびこ座」だということもあって、自転車で出かけました。
本日の公演を最後に、半年間の改修工事にともなつ休館に入るのだそうで。そう言われてみるとたしかに古い建物で、開館から30年だということなので公共の建物としては改修も納得です。
開演前に緞帳は降りておらず(ないのかも?)、引割幕になんとも不吉な腕の骨格がぶら下がっているのが気になりましたが、この腕は後で大きな意味をもってくることになります。
これは左腕で、不完全な右腕の骨も左上の方にありました。
最初に作者であり、演出・美術・出演もされた沢さんの講演から始まりました。
この講演に非常に重要な意味があり、礼文島での遺跡発掘から今回の出し物へと展開した、まさに科学から芸術へのリンクが語られました。最初にネタバレをしてしまうこの手法にはいろいろと意見があるかもしれませんが、予習なしで見ている人にとってはこれがないとおそらく置いてきぼりにされてしまったことでしょうから、ありがたかったです。
舞台下手(左側)には今回の出し物の生伴奏をしてくれるバロック楽団(バロック・コレギウム・サッポロ)の皆さんが控えておられます。この生演奏はとても良かったのですが、目はほとんど舞台に釘付けになっていたのでゆっくりと音楽演奏を眺めることができなかったのは残念でもありました。
内容はいずれ見ることがあるかもしれませんのでネタバレはやめておきますが、タイトルの「フィギュアアートシアター『OKHOTSK~終わりの楽園~』」は見た後では、なるほどと納得しました。パンフレットには「『人形浄瑠璃三人遣い』、『砂絵』、『バロック音楽生演奏』、『演劇』などが融合された『フィギュアアートシアター』と呼ばれる新しい総合芸術」と書かれていましたが、まったくそのとおりで私個人には未知の体験となりました。
その一場面がこちらですが、すごい迫力でした。
場面転換に使われる影絵や
リアルタイムで描かれた「砂絵」も素晴らしいものです。
というわけで、遺跡発掘現場から得られた情報と、受けたインスピレーションがこの作品を生んだということで、科学が生んだ芸術ということが言える一方で、遺跡現場で得たインスピレーションから女性のリーダー(ヒメオサ)の物語を生み出した沢さんのイメージの通り、今年になって遺跡に埋葬されていた重要な地位にあったと思われる人物の骨はなんと女性のものだったという、ロマンが現実を予測した結果となったというエピソードも楽しくまた有益な収穫だったのかもしれません。
そんな話の裏側を聞く機会になったアフタートークもおもしろかったです。
劇の中で使われた壷も実際にオホーツク文化遺跡から掘り出されたものをイメージして作られていました。
こちらが掘り出された土器。
こちらが劇中で使われた「土器」
オホーツク文化では非常に重要な位置を占めるクマの頭部がこの壷(ワインを注ぐためのもの?)の注ぎ口になっているのだそうです。この再現されたイミテーションの壷を見て考古学者の加藤先生が「壷の上部にある波々のラインが波をイメージしていることが沢さんの作品を通じて確信できた」というようなことをおっしゃったいたのは、多少はリップサービスがあったとしてもイマジネーション豊かな芸術家が科学の現場にいることの有用性を強調していたと思われます。
と、まだまだいろいろと刺激を受けて楽しく有益な2時間を過ごさせていただきました。
また機会があったら参加してみたいと思いつつ帰路についたのでした。
こちらが本日の主役たちと主役の道具たちです。道具は実際に遺跡から発掘されたものというのがいいですね。
関係者の皆さま、どうもお疲れさまでした。
by STOCHINAI
| 2018-08-26 23:07
| コミュニケーション
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