5号館を出て

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「空飛ぶリス(ムササビ・モモンガ)」の起源は意外と古い

 空を滑空するという性質はそっくりでなのですが、南半球に住む有袋類のフクロモモンガは収斂進化によって生じたまったく類縁のないグループです。一方、北半球に住むムササビ・モモンガの類は共通祖先を持つリスに近縁の哺乳類で(ネズミ目(齧歯目)リス科リス亜科)、大型のモモンガが15属、約45種、小型のムササビ属は8種類が原生種として知られています(Wikipedia)。

 バルセロナの近郊で発掘された1160万年前の化石は尾と大腿骨が大きかったために最初は空飛ぶ霊長類ではないかと研究者たちは期待したそうですが、残念ながら(?)その後の調査でこれはげっ歯類の骨であり、手首の骨の特徴から絶滅したモモンガのものだとわかったということで論文が発表されました。オープンアクセスのeLIFEでの発表なのでどなたでも読むことができます。

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 基本的には骨格を解析した解剖学による分類学論文なので、細かく議論されている骨のことはよくわからなかったのですが、この写真を見るだけで論文で主張されていることはほぼ尽きると言ってもいいのかもしれません。

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 上の3Dの骨格再現図のうち白い部分が発掘された化石で、青い部分は現存のムササビの骨格から類推された「想像図」です。それをもとに下の整体再現図が描かれました。着地(着木?)寸前の姿です。

 骨格の解析から新しいムササビとして Miopetaurista neogrivensis と名付けられました。

 論文の中では手足の骨と頭蓋骨の詳しい検討がされていますが、要するに現存のムササビとよく似ているということで、現存のムササビは生きた化石と言っても過言ではないほど当時とほとんど姿が変わっていないのだそうです。この再現図がムービーとなってYouTubeにありますので、こちらも引用して貼っておきます。



 もうこのムービーを見るだけで論文の内容は素人にもだいたいわかってしまいます。良い時代になったと思います。

 というわけで、このムササビが現在のムササビ・モモンガなどの系統図の中に位置づけられることになりました。こちらが論文の中にあった系統図です。

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 右端の色分けで、大きな青がリス科で、その次の緑がリス亜科、そしてその左のオレンジ色がムササビ・モモンガの「飛行リス類」です。そのうち上の半分がムササビ類で、下半分がモモンガ類ということになり今回の化石種はムササビ類の根本のところに出現して絶滅したということがわかります。

 それでこの系統図の下に書き込まれた年代図と比べると、ムササビ・モモンガ類は普通のリスと2千5百万年から3千百万年前頃あるいはもっと古くに分岐したことが示されており、今まで考えられていた2千3百万年前よりは古いというこことがわかってきたといいます。ところが現在までに発見されている最古のムササビ・モモンガ類の化石は3千6百万年前のものだと言われているのですが、その化石に関しては歯だけが発掘されているものなのだそうで、手や足の化石が出てこないと結論が出せないようです。

 というわけで、手や足の骨格も含めた間違いのないムササビの祖先としては現在のところ、今回の Miopetaurista neogrivensis が最古のものとして最有力といっていいようです。

 それにしても、論文を専門的には深く読み解けなくても、図や動画でだいたいわかるようになってきたのは専門家も素人に対してうまく説明することが必要になってきた時代なのでしょうね。

 ありがたいことです。








by STOCHINAI | 2018-10-10 23:25 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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