5号館を出て

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追悼 フランシス・レイ

 1960-70年代のフランス映画は叙情的な大人の雰囲気を漂わせたもので、まだまだ貧しかった日本の青少年・少女にとってはとても手の届かぬあこがれの世界を見せてくれる夢のような存在だった気がします。そして、その時代を代表する監督がクロード・ルルーシュで彼の映画と切り離すことのできない映画音楽を担当していたのがフランシス・レイでした。この二人の登場は華々しいものでした。1966年公開の「男と女」でカンヌ国際映画祭パルム・ドールとアカデミー外国語映画賞を受賞。いきなりフランス映画の定番の存在になってしまいました。

 そのフランシス・レイが亡くなったそうです。享年86歳で、死去の発表は11月7日でしたが、正確な日時などは報道では明らかではありません。いずれにしても古い日の思い出を呼び覚ますインパクトのある訃報でした。

 それまでは日本では、おそらく世界でも、ひょっとするとフランスでもほとんど無名だった監督と音楽家が一本の映画で世界の映画界のトップに躍り出て、その後しばらくフランス映画の世界をリードし、世界に発信し続けたということは音楽の世界のビートルズの出現に匹敵する出来事だったような気もします。そのきっかけになったのは「男と女」という映画そのものよりも、その中で流れていたいかにもおしゃれなスキャットのテーマ音楽だったのだと思います。リアルタイムで聞いていなくてもこの曲なら聞いたことがあるという方は今でも多いのではないでしょうか。

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 映画は確かに見たはずですが筋などはほとんど記憶にありませんが、この音楽だけは今でもときどき脳内を駆け巡ります。


 この成功のせいかどうかはわかりませんが、この後クロード・ルルーシュの映画はもっぱらフランシス・レイが担当していたようで、その後も話題になるようなヒットを連発します。

 その中で印象に残っているのがフランスのグルノーブルで行われた1968年の第10回冬季オリンピックの記録映画である「白い恋人たち 13 Jours en France」で、私も映画を見た記憶があります。今、札幌銘菓として有名になった「白い恋人」は間違いなくこの映画のタイトルのパクリだと思います。これも歌詞のないスキャットで音楽も大ヒットしました。



 この2本の印象が強くこの後他にも二人の共同作品はたくさんあったような気がしますが、しばらくたった1980年にまた記憶に残る映画を世に出しました。

 それが「愛と哀しみのボレロ Les Uns et les Autres」です。この映画の音楽はフランシス・レイとフランスのジャズ作曲家・演奏家であるミシェル・ルグランの二人が担当しています。ボレロはあのラベルのボレロで、この映画の最後にボレロの音楽に載せて演じられるジョルジュ・ドンによるバレエが世界に強烈な印象を与えて、当時ボレロとそのバレエの一大ブームが起こりました。ここでは、映画の最後のバレエの部分をご覧ください。



 この映画は不思議な映画であるだけでなく、複雑な内容でほとんど記憶に残っていませんが、いろんな俳優が次々と出てきていることだけはなんとなく覚えています。このビデオでも3分頃からもとのボレロにはない歌(といってもこれも歌詞のないスキャットです)が出てきますが、その女声を歌っているのがあの喜劇王チャーリー・チャップリンの娘さんのジェラルディン・チャップリンだというのも覚えていました。歌は吹き替えしているのか彼女が実際に歌っているかどうかは不明です。

 とまあ、この記事に出てくる最新の映画が1980年ということでもう半世紀も前のことになりますので、その頃活躍していた作曲家がなくなるというのはごく自然な順序という気はします。86歳で、ほぼ天寿をまっとうされたといっても良いのではないかと思います。

 長い間、お疲れさまでした。ごゆっくりおやすみください。









by STOCHINAI | 2018-11-09 22:02 | その他 | Comments(0)

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