5号館を出て

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この島に来ると飛べなくなるように進化するクイナ

 沖縄にいるヤンバルクイナもあまり飛ばないようですが、もともとクイナの仲間は飛ぶことのできるトリです。

 マダガスカルに分布しているノドジロクイナというトリが400キロメートルほど海を隔てたサンゴ礁(環礁)の島に移り住んで、飛ぶ能力を失うように進化したことが知られています。


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 見た目はそんなに違いませんが、マダガスカルに住むものは飛べて、アルダブラ諸島に住むものは飛べなくなっています。

 実はアルダブラ諸島は過去に何度か海面上昇による水没を経験しており、その時に陸上生物はすべて絶滅してしまっていることも知られています。

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 おもしろいことにこの島からは13万6000年前の最後の水没によって絶滅したそれ以前に生きていた別亜種のノドジロクイナの化石も出てきており、驚くべきことにそれは現在生きている飛べなくなったノドジロクイナの亜種とよく似た飛べない特徴をもつ骨格を持っていたこともわかりました。つまり、飛べなく進化していたのです。

 今この島に住んでいる飛べなくなったノドジロクイナの亜種は13万6000年前の最後の水没の後にマダガスカルから移住してきたグループだということが確かめられており、その前に住んでいたノドジロクイナはおそらく24万年前から22万年前にマダガスカルからやってきて住み着き飛ぶ能力を失う進化をしたことが想定されました。そして、彼らは飛べなくなっていたために13万6000年前の島の水没とともに絶滅してしまったのです。

 ということは、この島にやってきて数万年住み着くとノドジロクイナは飛ぶ能力を失ってしまうという進化をするというルールがあるのではないかということが推測されます。進化学ではこうした減少を収束進化または収斂進化と呼び、特定の環境のもとでは同じような生物は同じような過程を経て同じような進化をするということが考えられています。

 収斂進化は結果としてたくさんの例が見られると主張されていますが、今回のように化石と地質的変遷という証拠が揃って示された例は極めて少なく、同じ環境のもとでは同じ進化が繰り返されるということの強い証拠となるものと考えられます。

 このことを示した論文はZoological Journal of the Linnean Societyの5月8日号に掲載されています。

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 残念ながらオープン・アクセスではありませんが、あまりにもおもしろいので日本語にも訳された解説記事があります。


 ヤンバルクイナの先祖もどこかから渡ってきて、沖縄の気候のよさに飛ぶことをやめたのだとしたら、クイナは小さな島を見つけると飛ぶことをやめるように進化するという一般的性質があるということも証明されるのかもしれません。

 それにしても、動物がのんきな方へ進化するというのは想像するだけでも楽しいことですね。

 のんきに暮らす飛べないノドジロクイナの想像図はこちらにもありました。

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 飛べないので島の水没とともに絶滅してしまったのですが、水没がなかったとしてもこんなところにヒトがはいってきたら、カメもクイナもあっという間に滅びてしまう危険性も大きいですよね・・・。









by STOCHINAI | 2019-05-20 23:05 | 生物学 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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