5号館を出て

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特ダネランキング

 マスメディアに対して何か書く時は、ついつい非難めいたことばかりを書いているのですが、やはり伝統とパワーを持っている組織ですから、彼ら本来の役割である権力を監視するということや税金の無駄遣いに関する調査報道も、やる気になればやはりやれるものです。

 普段は政府や各組織の記者発表をコピペするだけの記事とは異なり、おもしろいだけではなく「力」を持った報道になっており、マスメディア本来の醍醐味を味わうことができるものです。

 いずれの記事にも「(自分たちの)調査によってわかった」という誇らしげな文字が踊っていたり、署名記事になっていたりと、書いている記者も楽しそうです。

 ヤメ記者弁護士さんによる情報流通促進計画で、そうした特ダネ記事をランキングして、これこそが本来のジャーナリストの仕事だという記事の応援エントリーを書いてくれることになりました。大々歓迎です。ありがとうございます。

 その記念すべき第一号が「勝手に特ダネランキング第1週」です。

第1位:在日米軍再編問題 毎日13日朝刊一面トップ
第2位:国交省近畿地方整備局契約疑惑 読売11日夕刊一面4段
第3位:自民議員歌謡ショー政治資金問題 東京14日夕刊
第4位:タミフルで異常行動死 毎日12日朝刊一面
第5位:成田空港電機関連工事官製談合 毎日11日朝刊一面トップ
第6位:道浅井学園補助金不正受給疑惑 読売13日朝刊一面トップ

 6位になった浅井学園問題は、今日になってようやく朝日が追いかけ始めた記事を出しました。特ダネは独自調査取材で、他社に追いかけられるかどうかということですぐに結果がでますね。この中では、沖縄・タミフルが尾を引きそうな気がします。

 もちろんヤメ記者さんの「主観」に基づいたものとは言え、こうしてみると毎日・読売ががんばっているように見えます。東京もやはりという感じです。浅井学園問題に関しては地元の道新にもがんばってもらいたいところです。

 これで、毎週の楽しみがひとつ増えました。
Commented by oga at 2005-11-17 11:04
毎日楽しみに拝読しています。タミフル副作用の特ダネについて、元医療関係者として思うところがあります。近い将来鳥インフルエンザの小規模な流行が発生した際、その集団に抗ウイルス薬(現時点でタミフルかリレンザのみ)の予防的投与を行ってパンデミックになるのを防ぐか少しでも遅らせ、時間稼ぎしている間にワクチンをどんどん作るのが非常に重要な戦略です。鳥インフルエンザのパンデミックが現実的な危機として迫っているなか、症例数が非常に少なく因果関係にも大いに疑問があるにもかかわらず大阪の医療NPOやマスコミが「タミフルは怖い」と喧伝してしまったことは、前述の感染拡大予防処置を無効化する危険のある、ある意味情報テロだと憤りを感じています。
Commented by stochinai at 2005-11-17 12:02
 ogaさん、コメントありがとうございました。私もタミフルのことについては、一度書かなければと思っているのですが、感情を交えずにきちんと科学的に書かれた情報が少ないのが気になっています。
 ただし、世界一の消費国と言われている日本においてタミフルのことはもっと議論されるべきだと感じています。最初は夢の薬のように言われていましたけれども、副作用や効かない症例などについての情報がもっともっと欲しいと思っています。
 それと、こういう重要な薬が単一の企業の独占されているという社会情勢についても気になっています。
Commented by kuma at 2005-11-17 12:13
インフルエンザのことに多少かかわったものとしてコメントさせていただきます。
鳥インフルエンザ対策としてタミフルの備蓄を国が決めたことを新聞の大きな見出しにとった社がありましたが、私はそちらのほうに憤りを感じました。
タミフルという薬は、効ウイルス薬ではありますが、飲んだ瞬間病気が治るいわゆる特効薬では決してありません。現時点で信頼できるレベルの臨床試験では、タミフルをインフルエンザ感染の初期(48時間以内くらいでしょうか)に投与した場合の効果は、平均発熱期間を0点4から1点6日程度短縮できる程度であることがわかっています。
しかし大切なのは、これは既存のインフルエンザウイルスへの効果であって、鳥インフルエンザに効果があるかどうかは、当然のことですがまったくデータはありません。
ましてや感染前の健康人、お年寄りなどへの予防投与はさすがに国も考えていないと思いますが、タミフルの予防投与で流行阻止効果があるという証拠はどこにもありません。既存のインフルエンザに関してもそれを証明した信頼できるデータはないと思います。
続く・・・・
Commented by kuma at 2005-11-17 12:14
続きです
私の個人的見解ですがインフルエンザウイルスの増殖は鼻やのどの粘膜の上で起きるので、抗ウイルス薬の血液中の濃度が上がってもそれが防げるとは思えないし、ワクチンでさえ抑えきれない流行が、抗ウイルス薬の予防投与で抑えられるとはまともな専門家は考えないと思います。
今回のタミフル備蓄は、国の役人の守りの発想によって生まれた政策だとみています。国の役人としては現時点で「何も対策がないのか」と非難されるのがいやなのです。そしてもし流行の危険が迫ってきたとき、日本の医療現場には妙なタミフル信仰が広がっているので、品不足になって非難されるのがいやなのです。
本当に効果があるかわからないものに多額の税金をつぎ込むことを無意識的に推進するような記事は科学ジャーナリズムの風上にも置けないと思います。たぶんその記者は科学に弱いと思いますけど。
ちなみに日本は世界中のタミフルの8割くらいを一国でつかってしまうくらいタミフル信仰の強い国です。
Commented by oga at 2005-11-17 12:35
New Eng J Med 353:1374-85にH5N1(一番問題になっている鳥インフルエンザウイルス)感染が疑われる患者は診断が付く前からノイラミニダーゼ阻害薬(タミフルなど)服用すべし、但し最適な投与量と投与期間は不明、とあるようにエビデンスは足りないけどタミフルがワクチンが出来るまでの頼みの綱だというのは世界的な認識だと思います。もちろんタミフルのH5N1に対する有効性のデータがあってのことです(NEMJからの孫引き)。なお上記論文は無料でダウンロード出来ます。備蓄について日本は出遅れてしまったくらいです。鳥フル流行初期の予防的投与についてはWHOの"Responding to the avian influenza pandemic threat"に記されています。
Commented by stochinai at 2005-11-17 12:59
 目の前に危機がせまってからの議論はむずかしいですね。
 このインフルエンザに関しては春から問題になっていました(http://shinka3.exblog.jp/1901264/)。今までにも、打つべき手は打っていたのかというようなことも心配になります。
Commented by oga at 2005-11-17 13:33
打てる手があまりないのですよね。世界的なタミフル需要が高まる前に国が備蓄に取り組んでいてくれればよかったのにとは思います(Kumaさんにおこられるかな)。ロシュの許可が得られなくてもタミフルのコピーを作る、と台湾が宣言しているのは国民の立場に立ったとても勇気があることだと思います。裁判起こされるかもしれませんが。大流行に備えた法整備、省庁間の連携については満足なレベルなのかどうか知りません。ワクチン開発は国際的に臨床治験が行われています。しかし、ヒトーヒト感染が成立するようになってからその変異ウイルスを同定してワクチンを作らないと意味がないので、技術が確立しても工場生産はまだ無理です。あとは、鳥フルが出現した数年前に東南アジアの家禽を全部屠殺していれば渡り鳥を介してこんなに蔓延しなかったのかもしれませんが、これは後付けな上に到底実現不能な夢想であります。
Commented by inoue0 at 2005-11-17 15:10
冬場に流行るのはA型インフルエンザですので、アマンタジン(商品名シンメトレル)で十分じゃないでしょうか。パーキンソン病治療薬として以前から使われており、供給できる会社は多く、薬価は安いです。
Commented by kuma at 2005-11-17 22:11
ogaさん いろいろ教えていただいてありがとうございます。さっそくNEJMを読んでみます。
医療関係の方に素人が反論するのも無謀かもしれませんが、
私としても、鳥インフルエンザが人ー人感染するように変異してしまったときに、とりあえず効く可能性のある薬としてタミフルを投与することに反対しているわけではありません。しかし、それが新しいウイルスにどの程度効果があるか不明だし、ましてや感染前の健康人あるいはコンプロマイズドホスト集団に予防投与して流行を阻止しようという考え方には無理があるのではないかということです。費用、副作用、耐性ウイルスの登場などのリスクを上回る効果があるとは考えにくいと素人ながら考えます。
ワクチン完成までのつなぎとして、予防投与という方法が本当に世界標準なのでしょうか?
それと備蓄が遅すぎたというご指摘なんですが、ほかの国はもうやってしまっているのでしょうか?
Commented by oga at 2005-11-17 23:33
kumaさん
感染の可能性がある個人に対して抗ウイルス薬の予防的投与をするのはアリだというのが国際的な認識です。しかし、パンデミックを押さえ込むために流行の芽が小さい内に限局した集団に集中して予防的に投与するという戦略がどれほど医療界に受け入れられているのかは存じません。ひょっとしたらWHOの頭でっかちが先走っているだけで、現場では無視されている考えなのかもしれません。各国躍起になってタミフル備蓄を急いでいますが、まだ全然足りないところが大部分です。アメリカでさえ品不足から出荷停止を食らっています。さすがにロシュのお膝元スイスはもう充分薬を持ってるでしょうね。新型ウイルスもA型の一種であり、原理的にノイラミニダーゼ阻害薬(ex. タミフル)が効くはずです。症例が少ないのでエビデンスが充分とは言えないかも。日本人のタミフル信仰についてはたしかに変だと思います。おっしゃるとおり罹患期間をたかだか1日縮めるだけで、健康な若年者には本来あまり必要がありません。今年は幸か不幸か通常のインフルエンザに対するタミフル処方の条件が昨年までよりずっと厳しくなるはずですから、この機会に正常化すればいいと願ってます。
Commented by oga at 2005-11-17 23:38
あと、stochinaiさんの記事の本題であった報道の観点からは、大阪の医療NPOがタミフルの使いすぎに鳴らした警鐘は確かに一理あるもので、私が情報テロとまで呼んだのは言い過ぎだったかと思います。発表ポスターを見たら意外と客観的でした。ただ、その後のマスコミ報道はやはり今後の防疫行政に悪影響を与えたと憂慮しています。
Commented by 花見月 at 2005-11-18 00:13
皆さんの議論、興味深く拝見いたしました。
薬に関して言えば、一般人の感覚、「毒にも薬にもなる」というのを忘れてはいけないのではないかと考えています。夢の薬などというのはありえないわけですよね。
一般に、効き目のある薬には、必ず副作用があります。
タミフルは使用され始めてから期間が短く、数年前は、幼児には処方してもらえなかったように記憶しています。
そのような薬ですから、完全に安全であるとは言い切れない。特に、体の小さい子供については。
母親としては、予防接種も、タミフルも、どちらも同じくらい、子供には使いたくない気持ちです。たとえ2例といえども、重大な副作用は、決して軽く見てはいけません。副作用が疑われるおふたりは、薬さえ飲まなければインフルエンザで死ぬことはなかったかもしれない、かけがえのないお子さんだったのです。
Commented by ヤメ蚊 at 2005-11-18 03:29
いつまで続けられるか分かりませんが,頑張ってみます。変な評価だと思われたら,ぜひ,ご意見を下さい。
Commented by stochinai at 2005-11-18 10:00
 ヤメ蚊さん、よろしくお願いします。
 この企画なら、手伝ってくれる人も出そうですよね。無理をなさらずに、のんびり続けていただければと思います。
by stochinai | 2005-11-16 13:07 | つぶやき | Comments(14)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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