5号館を出て

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ニュースを斜めに見る

 素直に考えると、とんでもないニュースが次から次へと飛び込んで来て、それに対して真っ正面から受け止めるだけでもなかなか大変な毎日なのですが、誰の支配も受けていないはずの我々は何ものにもしばられることなくコメントをして良いのだということを忘れないようにしたいものです。

 この世の中のすべてのことは一筋縄で動いているわけではなく、たとえ明らかな被害者と加害者がいたとしても、その周辺にいろんな利害関係者がうごめいているのが実情なのだと思います。そういう風に思えることが多いので、大きなニュースがあると敢えて斜めにひねたものの見方をするということも、場合によってはよりクールな視点を得る助けになるかも知れません。

 例えばまだアウトブレイクしていない、トリインフルエンザに対して繰り返し警報とタミフルやワクチンの備蓄を訴える記事が書かれています。もちろん、スペイン風邪以来の大きな被害をもたらす可能性が科学的に予測されているのは事実なのでしょうが、日本やアメリカ・ヨーロッパなどは当時よりも遙かに衛生状態の良い生活をしている人も多く、本当に言うほど危険なのかという、発表に対する不信感を感じます。ほんとうに予想されるような大量の死者が出るのでしょうか。

 逆に、本当にそんな危険が予測されるのだとしたら、台湾のように知的所有権などは無視してタミフルのジェネリック薬を開発してどんどん作れば良いと思います。にもかかわらず日本では、備蓄が必要量の0.5%などと言って恐怖感を煽る割には、ジェネリック薬の開発というチョイスが出てこないのはどうしてなのでしょう。やっぱり、どこかの企業を儲けさせたいということなのでしょうか。

 毎日の報道の50%くらいを費やしている耐震データ偽造問題も、例によってさほど本質的ではないところだけが繰り返し繰り返しワイドショー的に取り上げられているだけのような気がします。明らかに悪いやつらのことは、さっさと断罪して被害者住民を救済するとともに、一歩進んで同様の危険性が推定されるあらゆる建物の再検査をどんどんやっていくという方向に動かないのはどうしてなのでしょう。

 やっぱり、どこかの企業や役所が表に出てくるのを隠蔽しようとする力が働いていたりするのでしょうか。

 韓国のヒト・クローン胚問題がここへきて急に大騒ぎになったのはどうしてなのでしょう。論文を読む力のある人なら誰でも、韓国でヒト・クローン胚を作るために大量の卵が使われたことを知っていたはずなのに、その卵の提供者が共同研究者の女性だったとか、卵の提供に対して「謝礼」が払われていたということがわかったと、今までは想像もしていなかったことだと急に言い始めたのはどうしてでしょう。

 断然優位だった韓国のクローン研究をここでたたきつぶして、アメリカに研究の中心を取り戻そうというような陰謀がまったくないと言い切れるのでしょうか。韓国のクローン胚研究のスポンサーのほとんどが欧米の企業だったということと関係があったりはしないのでしょうか。

 倫理的問題がこれほど大きなことになるということは、韓国の研究者やメディアは想像もできていなかったような気配があります。しかし、共同で研究していたアメリカ人がいたのに、彼らがそんなことをやっていたとは思わなかったなどと言えるのは不思議でなりません。ここへ来て何かを隠し通すことができなくなったので、自分だけ逃げ出したというふうに思うのは私が疑りすぎということなのでしょうか。

 どんなニュースにも裏があると思います。せっかく何十万人ものブロガーがいるのですから、敢えてひねくれたものの見方をするという人間がいても良いだろうと思い、本日はニュースソースを引用することなくすねたエントリーを書いてみました。
Commented by 北の家族 at 2005-11-29 02:18 x
そうですね。耐震建築の問題は、「民にやれることは民へ」という政策方向についてのブレーキをかけるための陰謀とか、鳥インフルエンザの問題は、感染症研究で研究費を稼ぐ陰謀とか、イラク戦争はGWブッシュの石油をめぐる陰謀とか、いろいろな見方ができます。これは、科学に関するコミュニケーションや大学の宣伝記事でも言えるのではないでしょうか。こういう記事があって、あることを問題にしたり、宣伝したりすることで、得をするのが誰かという読みは大切だと思います。
Commented by enoki at 2005-11-29 07:26 x
お世話になっています。
卵子の件は粥川準二さんが以前から指摘していますね。

ただ、「誰でも知ってた」という表現は逃げだと思います。よく新発見などがあると「そんなの常識だ」「誰でも知ってた」みたいなことを言う人がいますが、発表してなければ意味ないわけです。

メディアリテラシーはリアルタイムの事件に対し発揮するものであると思います。人はとかく「陰謀説」を唱えたくなりますが、今ある事件に対して安易に「陰謀」に逃げないで(もちろん「陰謀」も選択肢のひとつであると思いますが)、しっかりと事件を見つめていけたらいいですね。
Commented by stochinai at 2005-11-29 08:03
 私が言いたかったのは、「なぜ今」「なぜその人だけ」という点です。それと、それまで知っていたのにいままで言わなかった理由もl知りたいと思っています。本当に告発した方が完全な善で、告発された方だけが悪だという構造になっているのでしょうか。そこが疑問です。
Commented by Hiroko_Y at 2005-11-29 14:41 x
初めてコメントさせて頂きます。
わたしもTV報道には首をかしげることが多いです。

阪神大震災に遭った人間から見ると「地震になるまで結局のところ分からなかったかもなのだから、早く分かって命が助かった人が沢山いるのでは」と。実際、数日前に中国でM5の大地震が起きたことはあまり報道されていません。ここ2年ほど、日本も含め沢山の国で地震が起きていますが、あまりにもすぐに忘れられてますね。

耐震データの話で自殺されたとされている方も、検死が行われたか不明なので、決めつけるのは早計だと思うのですが、メディアはそういうことにしたいようですね。

わたしは日本海側の人間ですが、拉致問題はたぶん10年単位でずっと噂になっていましたよ。
Commented by stochinai at 2005-11-29 15:09
 Hiroko_Yさん、コメントありがとうございます。ブログやっておられるのですね。いきなり「タミフルの製造法」などが出てきてびっくりしましたけれども、確かにマスコミで流れることはない情報ですが、勉強になります。そんなふうに、どんなことでもマスコミが知らせないのなら草の根でブログが水道管方式で情報を広げて行けば良いのですね。目からウロコが落ちました。
 我々も情報拡散に参加することや、情報に対する評論を簡単に公表できるようになったのは、良い時代が来たのだと思っています。
 今後ともよろしくお願いします。
Commented by Indigo at 2005-11-29 22:17 x
こんにちは。

 最近大きな顔をしている「ジェネリック」ですが、あれは基本的に特許の切れた合法模造品なんです。なので、実用化されて間もないタミフルの「ジェネリック」というのは今の時点では有り得ませんし、「ジェネリックの開発」というのはそれ自体が原理的に有り得ないんです。開発をやらないのが「ジェネリック」なんですから。
 「ジェネリック」というのはそういう特許切れの開発タダ乗りした「ゾロ品」(業界ではそういう蔑称で呼ばれています)の言い換えタームなので、生産量の足りない薬をOEMで他社生産、という場合に使うようなものではないです。
Commented by Indigo at 2005-11-29 22:19 x
 ちなみにこのジェネリックですが、確かに有効成分は同じハズなのですが、実際の効きはオリジナルと同じとは限らない場合もあります。
医薬品というのは主要成分が同じなら良いと言うものでもないし(主要成分として生成されたはずの物の品質が同じとも限らない、というだけでなく)、その成分の保存状態での安定性、生体内での吸収性等、製剤過程での差もあるのです。同じ成分で安ければ、というほど事は単純ではないんです。実際、オリジナルと効果が大きく違う薬品も知られています。

 そういう業界被差別薬品たるゾロ品が「ジェネリック」などと仮面をかぶって表に出てきた昨今の状況というのは、単に保険財政上の都合だけで厚生労働省が薬剤費を下げるためにやってる話でして、決して患者の立場での話ではないです。
 また、そういったタダ乗り医薬品が氾濫することは、技術立国しか道のない日本という国の医薬品開発能力を大きく阻害することになります。

 「ジェネリック」というタームには、そういった様々な裏側があるモノなので、あまり軽々に扱うべきものではない、と思います。
Commented by stochinai at 2005-11-29 22:20
 Indigoさん、注釈ありがとうございました。へへへ(^^;)、いい加減なこと書いてましたね。
 それはさておき、インドや台湾は独自にタミフルの強行生産に入ったようなのですが、これについてはどのように思われますか。是非、ご意見をお聞かせください。
Commented by inoue0 at 2005-11-29 23:08
stochnaiさんへ。インドについては、WTOの特許条約に加盟していません。また、国内法でも、食品と医薬品については特許を認めないので、コピー薬をいくら作っても国内的にも国外的にも全く合法です。
 台湾はWTO条約に加盟していますが、WTO条約にも例外規定があり、(詳しい話は省略しますが)緊急事態においては勝手に特許を使っていいことになってます。

 この件はHIV薬において5年ぐらい前から問題になっています。最も患者数の多いアフリカ諸国が特許料を払う金を持っていないためです。米国の製薬会社はパテント料を払わせることを諦めました。ないものは仕方がない。
Commented by inoue0 at 2005-11-29 23:13
 「途上国における医薬品供給」については持論があり、自分のブログにまとめて書くつもりですが、エッセンスだけ書くと、
研究開発投資を製薬会社が回収できなければ、次の医薬品は生まれてこない。特許を無視して、一時的に安く薬が手に入ったとしても、もはや製薬会社は途上国向けの薬など開発しないだろう。先進国が、特許料込みの正規医薬品を買い上げて現物援助すべきでである。
Commented by inoue0 at 2005-11-29 23:20
 それと、「特効薬」などと言われる薬でも、飲めば効くというような単純なものではありません。適切な検査と診断と処方がセットでないと、薬だけあっても効果的な治療はできないのです。
 インフルエンザ重症患者には、抗インフルエンザ薬よりも、全身状態の管理の方がずっと有効でしょう。
Commented by Hiroko_Y at 2005-11-30 00:14 x
>stochinaiさん、
詳しくは言えないのですが、ちゃんとしたところから切実に合成法を探している方がいらっしゃったようなので、えいやっと書いておきました。わたし自身は体調管理で乗り切るつもりですが。

以前からROMしておりましたが、リンクさせて頂きます。
こっちはリンクフリーですので適当にどうぞ。
これからもよろしくお願いします。
Commented by ぢゅにあ at 2005-11-30 01:13 x
アメリカの陰謀かどうかは知りませんが、最近ラジオでサイエンスの主導権はもはやアメリカにはない、というエントリーがありました。コンピューターでは完全に中国に越されていると。サイエンスにおいてそれなりの危機感が生まれているのは確かなようです。
Commented by 北の家族 at 2005-11-30 04:25 x
アメリカのBigPharmaがワクチンの生産に興味を持ち出しているとの記事がきょうのThe Scientistにでていました。
http://www.the-scientist.com/2005/11/21/28/1
こういうのをみると、BigPharmaの影響を受けやすいブッシュ共和党政権の陰謀説などというのも現実味をおびてきます。
Commented by Indigo at 2005-11-30 13:49 x
>stochinaiさん

 強行生産ですか。いや~どう思う、と言われると「しょーがねーなー、ったくよ~」としか言いようがないです。(笑)
 実情として inoue0さんの書いておられるとおりでして、実際問題として、特許等の知的財産権の侵害は、特にこういうケースでは(少なくとも短期的には)「やったもの勝ち」です。それを阻止をする何らかの強制力を持っていなければどうにもならないです。

 ま、強行生産する側も、背に腹は代えられない、という事情がある、という言い分があるんでしょうが、そもそもホントにそんな差し迫った状況にあるのか、というのが正直疑問だったり。。。
Commented by Indigo at 2005-11-30 13:50 x
 タミフル自体、特効薬と言われてますし、実際相応の効果はあるのですがそれはあくまでも罹患初期に投与できた場合であって、インドでそれが可能な環境にある人達というのはどのくらいいるのでしょう? すくなくともインドがタミフルを強行生産したところで、パンデミックへの対抗策にはならないでしょう。

 それにですね、インフルエンザに限らずパンデミック自体、起きても規模は縮小して行ってます。世界人口は増えているにもかかわらず、です。
医療水準、生活水準が上がれば疾病の流行規模は小さくなるという当たり前の話でして、少なくとも日本の社会状況で6400万人罹患、32万人死亡(厚生労働省発表の「最大値」ですが)、なんてのは絶対にあり得ないです。
Commented by Indigo at 2005-11-30 13:50 x
 この数字自体、大正時代のスペイン風邪流行時の罹患率と死亡率を現人口に当てはめただけというバカみたいな数字で、こんなもの実質的な意味なんか全くありません。感染力も病態も明らかになっていないヒト相互感染型H5N1株の罹患率や死亡率をスペイン風邪の実例になぞらえることは、少なくとも科学的には無意味です。

 もちろん世界的に見ると日本のような恵まれた状況自体希ではあるので、パンデミック自体のおそれを否定はしませんが、今の日本のマスコミが騒ぐほど日本の状況は深刻なものではないです。
 この騒ぎのおかげで予防的に欲しがる人が増え、またそれに対応するバカ医者が少なからずいるおかげで、現在タミフルは卸レベルで出庫規制がかかってます。ほんといい加減にして欲しいというか何というか。。。(--;;;
Commented by stochinai at 2005-11-30 15:32
 Indigoさん、長文で非常にわかりやすいお話をどうもありがとうございました。特に最後のところは、私が薄々感じていたことが「専門家(?)」の方にきちんと解説していただけたという感じで、非常に有り難く思います。

 いつも感じることなのですが、ここにコメントを書き込んでくださる方のレベルの高さと、思いやりの深さは日本のブログの中でも超一級だと自負しています。今後とも管理人の力のないところを叱咤していただきながらも、補足していただける幸いです。>Indigoさん、および皆々様 m(_._)m
by stochinai | 2005-11-28 23:06 | つぶやき | Comments(18)

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