5号館を出て

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オリンピックはいらないという勇気

 先日、配布されてきた札幌市の広報誌「広報さっぽろ」の1ページ目をめくってびっくりしました。

 夏のオリンピック招致の是非について「皆さんの声を聞かせてください!」という特集記事が巻頭に組まれていたのです。札幌市議会や道議会では、野党の自民党や公明党が多数を占めており、それらの賛成により、今年の3月に市議会や道議会では「2020年夏期オリンピックの札幌招致に関する決議」が可決されています。

 8月には、自民・公明の北海道選出国会議員を含めて、道議会議員、札幌市議会議員らによって「オリンピック夏季大会招致推進北海道議員連盟」が設立されております。

 これで、札幌支庁が自民・公明よりの人だったら、簡単に誘致運動が始まったことでしょう。

 しかし札幌市の上田市長は、必要経費・経済効果などを調査し、広報誌で結果を公表した上で1万人アンケートを実施し、その上で招致の是非を判断したいということで、今回の広報さっぽろでの特集記事ということになったようです。

 アテネオリンピックをベースに2008年のオリンピックに立候補して敗れた大阪市の負担割合に基づいて算定された11月14日に出された概算経費の試算によると、「開催経費1兆8,328億円。札幌市負担額2,550億円。市民1人当たりの負担額13万6,000円。関連施設維持管理費年間106億円」になるのだそうです。

 開催規模は、大会期間を17日間とし、参加人員は202カ国から選手と役員が1万6,000人参加、26競技299種目と想定し、競技施設は可能な限り既存施設の改修や仮設で対応し、既存施設で対応できないものを新設するとして積算したということですので、おおむね妥当な計算と言えると思いました。詳しくは上のニュース記事または広報さっぽろをごらんください。

 確かにオリンピックが札幌に来ることは、楽しいし我々にとっての誇りにもなりますし、戦争にお金を使うことなどに比べるとはるかに正しいことだと思います。観光関係の業界にも大きな収入のチャンスになることは間違いないと思います。

 しかし、ただでさえ冷え込んでいる札幌(および北海道)の経済に、さらなる負担がもたらされる可能性があるということになると、行け行けという気持ちにはなりません。赤字分はすべて国が補填してくれるという約束でもあるなら別ですが、市民一人あたり13万円という負担は、平均的1家族あたり50万円以上ということです。

 今の札幌市民全員にこれだけの負担を強いることがわかっているのに、招致促進を訴える自民党・公明党の議員さん達は何を考えているのでしょう。

 先日も、札幌市長がどこか南の地方の市長さんに「オリンピック招致に消極的だ」などと非難されているというような新聞報道がありましたけれども、そんな企画に消極的でどこが悪いというのでしょう。その市長さんが札幌市の負担分を負ってくれるというのであれば評価しますが、国が認めてくれたことに感謝して、ありがたく2550億円くらい負担しなさいよ、などということをいう時代ではないと思います。

 とりあえずは、これから行われれる市民1万人に対するアンケートの結果を見守りたいと思いますが、上田市長が市民の台所事情を思いはかって、オリンピックはいらないと決断する勇気をふるうのであれば全面的に支持したいと思います。

 こういう国策的行事をやるべきかどうかについて、市民の意見を聞いてくれた市長なんて今までいませんでした。

 がんばってください。
Commented by inoue0 at 2005-12-07 00:15
 オリンピックよりもタチの悪いものが国体です。あれは全都道府県を一巡したからこれでやめようという意見もあったのに、継続されてます。
 スポーツなんてものは、政府が税金使って振興するようなものじゃありません。健康促進?歩けばいいでしょう。やりたい人が自分の金で設備使用料を払って使えばいいんであって、すきでもない人にまで負担をおしつけるなんてもってのほかです。
Commented by cony at 2005-12-07 17:46 x
誘致合戦に参加するだけでもたいした出費です。NOと言える札幌を目指したほうが良いはずです。
Commented by さるのこしかけ at 2007-12-21 23:04 x
オリンピックに税金を使うということ自体がまちがい。税金は、社会的弱者が憲法に保障された「健康で文化的な最低限度の生活」が送れるように、そして、普通の人たちの普通の生活が、安心して送れるためにあるものです。どうしてもオリンピックをやるのならば、オリンピックにかかる総費用を全額受益者(=選手・指導者)負担で行うのが筋です。
スポーツエリートに、税金をむさぼり、他者の生活をめちゃめちゃに破壊する権利はあるのでしょうか?
Commented by オリンピック招致不要派ですが at 2007-12-22 21:56 x
さるのこしかけさんのような言い方をしちゃうと、このブログの主要テーマ(?)であるPD問題なんかも、「サイエンスエリートが税金をむさぼり」って言われちゃうような。なんか各分野間で縮小するパイの奪い合い合戦になっているようで、腐ってもアカデミック関係者は一応エリートなわけですから、被害者意識丸出しじゃなくて社会的なパイを膨らませる方向で動いてほしいような気が…言うは易し行うは難しではありますが。
Commented by 通りすがりの門外漢 at 2007-12-23 01:22 x
「オリンピック招致不要派ですが 」さんと同じ事を感じていました。スポーツの存在価値は健康増進のためだけにあるわけではないと思いますし・・・科学の存在価値にも様々な側面があるのと同様に。国が、芸術・スポーツなどといった一見非生産的な分野にも予算を組むことの理由について考える視点がない研究者(文理問わず)や学者を、誰が「優秀」と思うでしょうか・・・?(しかし、そう言いたくなる気持ちは理解できますが)
私も、オリンピック招致には(東京であれ札幌であれ)賛成しかねますが、すでにスポーツ界はスポーツだけで成立しているわけではありませんから、これもどうなることやら・・・という気がいたします。
あ、ちなみに税金はオリンピック本大会だけでなく、アジア予選などの遠征費や強化合宿などの選手育成にも使われていますよ。(←あれれ、火に油を注いでしまったか?)
Commented by さるのこしかけ at 2007-12-23 04:18 x
選手育成うんぬんは私も存じ上げておりますよ。
ただ、私のいる場所は象牙の塔ではなくて、社会の底辺に押しやられている人たちのすぐそばといえる場所なんですよね。だから、見えてくるものが学者先生方とはかなり違っているだろうという部分は、認識しているつもりです。
社会的なパイを膨らませる具体的な方法って、なんでしょうか?
日本は今、餓死者が年間50名以上出ていると聞いています。
パイを膨らませて、まっさきに彼らに食べてもらいたいところですが。
スポーツがどれだけごたいそうなものかは知りませんが、少なくとも他人の「健康で文化的な最低限度の生活」を脅かすものであってはいけないのではないでしょうかね。
Commented by オリンピック招致不要派ですが at 2007-12-23 18:16 x
一兆円動くことで潤って「健康で文化的な最低限度の生活」を維持できる人達もいるわけですから、さるのこしかけさんみたいな書き方だと、オリンピック招致で儲かる人達とそうでない人達の力関係で決まる、というだけのことですよね。PD問題なんかもアカデミック業界への投資で潤う人達とそうでない人達の力関係が後者へ動いたというだけ。
そういうゼロサムゲームよりは、「真理の追究」のついででよいですから高等教育の普及や新市場の創設につながるような研究してほしいなあ、というのがサイエンスエリートのみなさんへの期待なんじゃないかと。
スポーツだって周辺で潤う人達がたくさんいるから金が注がれるわけですし、と俗っぽいコメントをつけている私は中小企業の従業員です。
Commented by 通りすがりの門外漢 at 2007-12-23 21:37 x
 なるほど。福祉関係者などであれば、スポーツでなくとも国の税金の無駄遣いを見れば、腹も立つでしょう。私自身も教育・福祉に関してアメリカ型を追おうとしている日本を疑問に感じます。ただ、すべてを国に頼ることができないことも「今の日本の現実」でしょう。
 以前、勤務していた専門学校で福祉施設(児童、障害、高齢者等々)の巡回指導をしていた時、私もさるのこしかけさんのように「なぜ、国はこういった方面に税金を使わない(どころか、事実上減らしていっている?)のだろうかということを、痛感いたしました。でも、だからといって、他の分野で努力し結果を出し社会的評価を得ている人(スポーツに限らず、です)を責めたり、過小評価したりするような気持ちにはなりませんが。
 

Commented by 通りすがりの門外漢 at 2007-12-23 21:39 x
知的障害者施設に実習に行ったある学生は、母親のネグレクトにより、ろくに食事(お米がない、冷蔵庫がこまれたまま)もとれず、風呂にも入れず(ガス代・水道料金滞納)、友人のところを転々として生活していたのですが・・・実習先の職員に向かって「この施設にいる利用者はこんなに良くしてもらう資格はない。ろくに働くこともなく、人に世話ばかりしてもらって、税金や人が働いたお金で、三食しっかり食べて暖かい部屋で過ごしている。しかも、その有難みを理解できる力もない。私の方がよほど働いているし、苦労しているのに、私が食事にも困っているのはおかしと思う。」と言って、実習が中止になりました(当然ですが)。
でも、さるのこしかけさんのおっしゃっていることは、この学生のものの捉え方が同じように感じるのですが・・・(再度繰り返しますが、言いたくなる気持ちは理解できるんですよ)。どうせ、訴えるなら賛同者が増えていく形で表現されていかれたほうが「社会の底辺に押しやられている人たち」を結果的に守っていけるのではないかと思うのです。
Commented by さるのこしかけ at 2007-12-24 01:03 x
象牙の塔からの貴重なご意見ありがとうございました。
北京五輪では、北京の歴史ある下町が五輪施設建設の予定地にされて、そこに代々暮らしてきた「普通の人たち」が無理やり追い出されて、文字通り生活を根こそぎ奪われているという報道がありましたが、これと似たようなことは日本国内でもビッグスポーツイベントの裏でしばしば行われているという事実があります。大手マスコミが報道しないのも事実ですが。五輪関連事業で「潤う」のはほとんどが建設会社など大企業や大手マスコミなどじゃないですか?労働者人民(^^)は、非正規労働で一時的な雇用にありつける以上のことはないでしょう。ちなみに、アテネ五輪では、「五輪特需?」の建設現場で、大勢の現場作業員が突貫工事の中で命を失っています。私が四の五の言うまでもなく、「賛同者」は大勢いますので、どうぞご安心下さい(^0^)最後に、地域スポーツ活動に従事してきた人が、著書の中でこんなことを言ってましたよ。五輪のために作られたスポーツ施設は、維持費がかかる上に、普通の市民がスポーツを楽しむには使い勝手が悪すぎる。五輪がスポーツの普及に寄与するなんてとんでもない、といった内容のことをね。
Commented by 通りすがりの門外漢 at 2007-12-24 01:28 x
 え~っと・・・「象牙の塔」にこだわっているようですが・・・まさに私は「地域スポーツ活動(および労働者健康被害に関する調査研究活動)に従事してきた(いる)人」です。「象牙の塔」は、いまだ登ったことはございません(笑)。
 大学助手の2年と専門学校勤務の3年を除いて、あとの10年ほどはフリーランスの形で生計をたてておりますので、おそらく土俵は同じかと思われますが・・・。スポーツに限らず、社会で起きている事象には、様々な側面があるのではないでしょうか?ということを言いたいだけなのです。でも、スポーツ施設の云々については、おっしゃる通り、スポーツ関係者でもそう考えていますよ。現場と行政は分けて考えたらどうでしょうか?(そういう意味でも、見えているのは一面に過ぎないと私は考えています)
 さるのこしかけさんの考えに賛同者がいるのは、当然のことでしょう。良識ある人なら上記に書かれていることくらい、本など読まずとも物事の裏表を見抜き、心ある人なら社会的弱者の理解者であろうと思うはずですから・・・。
Commented by とおりすがり at 2007-12-24 02:39 x
上の話とは変わるかもしれませんが、スポーツも一種の文化で、文化に対して国がお金をかけることは全面的に悪いとは言えないのではないでしょうか。経済的に価値のない学術分野の振興にお金をかけるのと同じだと思います。オリンピックに出場する選手が、単なるスポーツエリートではなく、様々な人生があり、学者と同じく様々な苦労を経て成功を手に入れた人がいるではないですか。金メダルを取れなくても、一生懸命頑張ってきた姿に、観客や視聴者は感動し、生きる勇気をもらう。国境を越えた友好を育む。私は税金をかける価値はあると思います。問題なのは、オリンピックというものが当初の理念からかけ離れて、ナショナリズムの高揚やビジネスの手段として使われているところです。
スポーツエリートが税金をむさぼっているというのは暴論です。むしろ学者が国の科学技術基本計画にのっかって、じゃぶじゃぶお金を使っている方が無駄だと思います。倍増した科学技術予算を社会的弱者に回した方がいいと思いますが
Commented by さるのこしかけ at 2007-12-25 01:04 x
象牙の塔(貴方がたを形容する最も的確な日本語だと思いますので、続けて使用させていただきます)からの貴重な教訓、しっかりと心に刻んでおきたいと思います。学者先生方も五輪選手も、利害が一致している立場、大げさな表現で言えば同盟関係だという事実を。
では、失礼いたします。おやすみなさい。よい夢を(^^)
Commented by めりくり at 2007-12-25 02:29 x
>スポーツエリートに、税金をむさぼり、他者の生活をめちゃめちゃに破壊する権利はあるのでしょうか?

このコメントに「スポーツ・エリート」の人々は、どう答えるのでしょうね? 
個人的には、元サッカー選手の中田氏の意見を聞いてみたいです。
Commented by M at 2007-12-25 11:42 x
スポーツ・エリートもエリート研究者も、「芸術家」みたいなもので、才能がある者が報われるのは当然だと思ってるのではないでしょうか?
Commented by ホモ・ルーデンス at 2007-12-25 15:50 x
 一流選手は、「自分の選手生活に税金が投入されていることや、スポンサーからの投資があってこその選手生活」ということを痛いほど感じていますよ。報われて当然と考える一流選手はいないと思います(ただ、結果を出した後に「努力が報われた~」とは思うかもしれませんが)。ましてや、専属スタッフの生活が自分の戦績にかかっているのですから・・・日々、自分を追い込んでやっていくしかないという気持ちで闘っていると思います。これは、莫大な研究資金を獲得できる一流研究者が、専門スタッフ(PD・OD含め)を雇い、結果を出していくことで責任を果たしていることと似ているのでは?と思うのですが、どうでしょうかね。
Commented by 小市民 at 2007-12-26 10:44 x
オリンピックをやろうがやるまいが、福祉・社会保障費は変わらないのではないでしょうか。

ですから、さるのこしかけさんの、オリンピックか社会的弱者の保護か、の二者択一の議論は説得力が薄いように思います。

オリンピックにこんなに税金を掛けられるのですから、
福祉・社会保障費にもっと税金を掛けてよ!
という主張なら正論かと思います。
Commented by 通りすがりXX at 2007-12-26 11:43 x
次年度予算の社会保障費は21兆円。国民一人あたり,20万円だ。
4人家族の会社員で、80万円になる。

平均給与の会社員は、納める所得税以上の金額の恩恵を、
ジャブジャブ受けている。年収が800-900万以下だと、社会から
恵んでもらう額の方が大きい。

> 福祉・社会保障費にもっと税金を掛けてよ!

というのは、間違っている。もしそうなら、所得税の最低税率をアメリカ並みの25%ぐらいにして、もっと徴税しないと収支のバランスが取れない。
Commented by 小市民 at 2007-12-27 10:48 x
そうですね、社会保障費は既にかなりの国家支出になっていますね。

ただ例えば、オリンピックを開いている時に、近隣の道ばたに生活困窮者が助けを求めているのでは絵にならないのですから、

オリンピックを開くなら、生活困窮者などの問題も解決してよ!

というのは妥当かつ有益な議論と思われます。
Commented by 敗戦直後からの貧乏人 at 2007-12-27 18:24 x
> 年収が800-900万以下だと、社会から恵んでもらう額の方が大きい
はあ、若者の命を奪うだけの戦艦大和やら回天やら桜花やらに集中的にお金を使う国を止めて、貧乏人が暮らし易い社会を目指したのですが、それが悪いのでしょうか?
Commented by 通りすがりXX at 2007-12-28 01:29 x
なぜ、回転とか大和とか、時代錯誤の表現がでるのか理解に苦しむ。

日本は、先進国の中で格段に多い、大量の財政赤字を抱えている。

先進国の平均以上の手厚い社会保障を続けるなら、先進国並みに、所得税の最低税率を20%、消費税を10-15%に増税するしかないし、増税が嫌なら、社会保障を切り詰めるしかない。
という収支のやりくりの話。

「増税は嫌だけど、社会保障は欲しい」 とは無理な注文。収支がつりあわない。他人から恵んでもらうしか術は無い。
Commented by 小市民 at 2007-12-28 23:45 x
はずかしいのですが、この記事の本体は2020年夏期オリンピックの札幌招致に関する話題だったと今気付きました。
そして去年(2006)の2月に招致を見送る事が決まったのではありませんか。
http://www.yomiuri.co.jp/sports/feature/syouchi/sy20060221_01.htm

あちゃ、幻をいまさら議論している事に、我ながら笑っちゃいました。(^^)
by stochinai | 2005-12-06 21:03 | 札幌・北海道 | Comments(22)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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