5号館を出て

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学校の外で勉強しない高校生

 一昨日「科学者になることを勧めないアンケート?」というエントリーを書いて、いろいろなコメントを頂きました。その中でヤマグさんが書かれた「1次ソースを見つけようとしたのですが、見つかりませんでした」というコメントが気になっていたのですが、やはり見つけることはできませんでした。

 それとはまったく関係なく、私が毎日読んでいるお気に入りのブログのひとつに「世に倦む日日」というものがあります。独特の文体を持ったとても味のあるブログなのですが、内容の情報量は「よくもここまで」と思うくらい知識がつまっていて、読むたびに感心させられております。(実を言うと、理解できないくらい難しいことが書いてあることも多く、私の知識の無さを思い知らされるブログでもあります。)

 その世に倦む日日、本日のエントリーは『文藝春秋新年号の中吊広告から - 日本人の知性劣化と「呪術の園」』です。

 内容は読んでいただけると良いのですが、文藝春秋1月号の電車中吊り広告から始まって、養老孟司さんを猛烈にこき下ろし、返す刀で我々今の日本人が「飯島愛と爆笑問題がテレビで政治報道の解説をするのを「分かりやすくて面白い」と言って口を開けて眺めている」と鋭いところを突いてきます。

 著者のthessalonike2さんは、改革ファシズムを止めるブロガー同盟というものを立ち上げていらっしゃるようなのですが、その運動の「発起においては、それは単なる数集めの政治運動だけではなく、内実として、日本のこれ以上の知性劣化に歯止めをかけたいという文化運動の意味と目的もあった」とおっしゃっています。

 私もひそかに(私を含めた)日本人の知性の劣化については不安を感じており、「最近の中学生や高校生は全然勉強してないのに、韓国人の半分以下の勉強時間しかないのに、「勉強しすぎ」の自己認識を持っている」とのくだりには、ハッとしてしまいました。つまり、「ゆとり教育」が始まった時にこの間違いが大きな声で叫ばれていた気がするのです。

爆笑問題の政治解説など二十年前なら考えられない事態ではないのか。何でそのような現実を簡単に容認し肯定するのか。

 なるほど、でございます。

 まあ、その後もおもしろい文章が続くのですがそれはさておき、エントリーの最後に2002年に調べた高校生の「家での勉強時間」と「学校以外の平日勉強時間」というグラフがあり、日本とアメリカと中国の比較というものすごくおもしろいデータが載っていたため、その原典を見たくなりました。キャプションには「日本青年研究所 高校生の未来意識に関する調査 2002年」と書いてあったので調べてみた結果、財団法人日本青少年研究所というところが、そういう調査を発表していることを発見しました。

 そこに、2005年3月に発表になった「高校生の学習意識と日常生活」というアンケート調査の集計表概要があります。

 一見に値するおもしろい調査結果なので是非ご覧頂きたいのですが、高校生が描く将来像のデータがこれです。中国、アメリカの高校生に比べると日本の高校生は将来を悲観していることがはっきりとわかります。
学校の外で勉強しない高校生_c0025115_21291159.jpg

 かといって、それを何とかするために勉強を一所懸命しているわけでもないというデータもあり、もはやあきらめているかのようにも見えるのです。平日の自宅学習時間です。ものすごい差があります。
学校の外で勉強しない高校生_c0025115_213183.jpg

 休日の自宅学習時間です。こちらはアメリカに近い値が出ていますが、平日で差を付けられていますので、差は縮まりません。総合すると、中国が独走態勢です。
学校の外で勉強しない高校生_c0025115_21314350.jpg

 まあ、勉強時間が長ければ良いというものではないと思いますけれども、最低限の知識やスキル・リテラシーを身につけるためには、初等中等教育である程度の「体育会系詰め込み教育」をやっても損はないというのは、大人になってから始めてわかることです。

 今の知性劣化状態を考えると、子ども達にある程度の「詰め込み教育」を強いるのは大人の役割ではないのか、と反省する気持ちにもなります。ある割合の子ども達は、知識を詰め込まれることを楽しいと思うはずですし、そういう子どもにまで「ゆとり」を強いてしまった結果が今の状況なのではないかということも感じました。

 もちろん、子ども達全員が知識を詰め込まれる必要はないと思いますが、まずはある程度多数の子ども達に「詰め込み教育」をやってみて、合わなさそうな子どもにはそれぞれの個性を伸ばせるような別の選択を与えてやれば良いと思います。

 判断力を身につける前の子ども達に、好きな道を選びなさいと言ったら、遊んでしまうのは当たり前なのではないでしょうか。
Commented by ヤマグ at 2005-12-16 01:17 x
ちょっと気になったので、高校進学率を調べてみました。日本が96%、アメリカが89%、中国は60%前後らしいですね。

ただ、上海では97%と高いそうです。さすがに、地域差がすごいですね。ただ、上海でも大学進学を目指す普通科はそのなかでも60%ぐらいらしいですよ。
http://www.p-dtp.com/chinareport/chreport0407_02.html
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kunibetsu/enjyo/china_chu.html
あたりにも。

このアンケートの母集団で行くと、中国は結構エリートを母集団に捕まえてきているみたいですよ。

とりあえず。
Commented by さなえ at 2005-12-16 08:11 x
こんにちは。おもしろいし、なるほどとも思うのですが、私もヤマグさんに同意です。米国では高校生間の格差がすごいし、ドロップアウトの数もすごいはずです。ですので、実体はちょっと違うと思いますが、全般に勉強をしなくなっているのは残念ながら確かなようですし、未来に希望を抱いていないというのが何より悲しいです。
Commented by b at 2005-12-16 12:53 x
大学教員の知性の劣化の方がはるかに深刻です
Commented by stochinai at 2005-12-16 13:33
 はははは、bさん。またまた、いらっしゃいませ。ついでに、もう少し長いコメントをお願いいたします。

Commented by stochinai at 2005-12-16 13:35
 ヤマグさん、さなえさんがご心配なさるようにアンケートを読み解くのはほんとうに難しいですね。逆に、それを何らかの意図に利用しようとすると「自由自在」に使えるというところも、アンケートの危険性だと思います。
 それとの関係で文春新書110の「『社会調査』のウソ リサーチ・リテラシーのすすめ」は必読書ですね。
Commented by tosh3141 at 2005-12-16 16:50
コメントありがとうございました
ご紹介の調査結果を眺めてみたのですが,
>あなたの成績は平均してクラスでどのくらいですか?
に対する回答は、国民性でしょうかねぇ...(異性にもてる方だ の項目と、嫌な人でも必要に応じて付き合う方だ あたりも、違いが面白いです)

本題からそれました。
勉強もせず、本も読まず、しかも、自分の成績もよくないと思っていて、異性にももてないと思っているわりには,高校生は将来を悲観していないという結果なのかもしれませんね。なんで、こうなんでしょう?

知識の詰め込み教育の件、賛成です。
僕は、センター試験を 7科目12教科 くらいにしたらどうや?と言ってます。
Commented by stochinai at 2005-12-16 20:33
 村上龍ではありませんが、日本の子ども達に「希望」を持たせられなければ、この国はおしまいだと思います。

 詰め込みの件、誤解を招くと困るのですが、全員に強制するのでなければ、詰め込みも基礎教育としては悪くないということです。私が大学を受けた時には、9教科12科目くらいが課せられていたと記憶しています。理系の大学でしたら、高校では理科4教科必修を要求しても良いと思っています。全員が理系の大学へ行かなくても良いのですから、行きたい人には厳しくしてもいいのではないでしょうか。
Commented by tosh3141 at 2005-12-19 09:47
ミニマムは定めた方がいいのかもしれませんが、マキシマムは決めなくてもよくて、行きたい人には厳しくする。旧帝大の入試なんかは、もっと厳しくてもいいでしょうねぇ。
ついでに、物理,化学,生物,地学というカテゴリー分けそのものも、もうちょっと考え直したらいいんじゃないのかな?と思うときもあります。それと、入試科目は受験生へのメッセージでもあるので、物理だけでいいとか、生物はいらないとかいう誤ったメッセージにならないように、これについてはむしろ高校の問題かもしれませんが、してもらいたいものですね。
by stochinai | 2005-12-15 21:48 | 教育 | Comments(8)

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