5号館を出て

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芸術の春

 昨日のDailyArtで配信されてきていたので、昨日ご紹介するつもりだったゴッホの絵(サント=マリーの白い小屋 1888 パブリックドメイン)です。

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 ひと目でゴッホの絵だとわかりますが、意外と知られていないもののようです。それまでの画風から我々の知るゴッホの絵へと転換することになった記念碑的な絵なのだそうです。

 昨日は良い天気で梅見日和でしたが、今朝は一転して暗く、寒く、風の強い朝になりました。

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 アンテナの上に月のような太陽が登ってきています。

 こんな日は外での作業は向きませんので、室内で過ごすことになります。

 今日もDailyArtで素晴らしいものが配信されてきました。フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」(パブリックドメイン 1657-1659)です。

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 この絵の背景にある壁は昔は真っ白なものとして知られていたものでしたが、背景の壁にキューピッドが描かれていたことはX線検査で古くから知られていました。しかし、そのキューピッドがフェルメール自身によって消されたものか、後世に他人の手によって消されたものかがはっきりしていなかったので、白い壁のまま世界に紹介されていたということです。それが近年の調査研究によって、キューピッドが消されたのはフェルメールの没後のことだということが明らかになったので、フェルメールの意図としてはキューピッドが必要だったと考えられるようになり、最近になって壁が「剥がされる」修復が行われることになりました。

 こちらが白い壁だったころの絵です。

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 それが何年もかけて修復されてきました。これが修復途上のものです。

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 なんかドキドキするとともに、ごくごく薄い後世に書き加えられた絵の具が除去されてオリジナルの画が回復されるという技術にも感嘆します。

 そして、2021年に修復が完成しました。

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 修復後は2021年9月から所蔵館であるドレスデン国立古典絵画館で公開された後、なんと日本で公開されています。そして今、東京を経て国内2番目の会場としてこの絵は札幌の北海道立近代美術館にあるのです。なんともすごいことですね。

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 今回は札幌に来ていないようですが、あの有名な「真珠の耳飾りの少女」も1994年に修復されて、ずいぶん印象が変わった姿になりました。

 こちらが修復前。

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 そして、こちらが修復後です。

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 絵全体が明るくなったのはすぐにわかりますが、それとともにずいぶんと少女が若返った感じがします。

 絵画の修復はオリジナルの姿がはっきりとしてきたことと、修復技術の進歩によって近年になってようやくできるようになってきたことだと思いますが、我々が昔から「こういう絵」だと信じていたものが、実はずいぶんと違うものだったということがわかってくると、作品や作者に対する印象もずいぶんと変わってきます。でも、修復後のものこそがオリジナルに近いということは間違いなさそうなので、絵に対する見方や考え方を変えた方が良さそうです(笑)。

 芸術の世界も科学の発展とともにより正しいものへと近づいてきていることを考えると、芸術と科学という「まったく異なる世界」だと思われていたものが意外と相性の良い隣人だという気もしてきます。

 いずれも人間の営みだと考えると、それが当然なのかもしれませんね。











by STOCHINAI | 2022-05-01 21:31 | その他 | Comments(0)

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