5号館を出て

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大学一年生パイロット授業の反省

 去年から、大学の1年生の「初習理科」の講義をどうするかということで、実験を兼ねたパイロット授業というものをやっています。実験台になった学生諸君には申し訳ないという気もするのですが、もちろん学生はどうなっても良いということで実験をやっているわけではなく、こちらの意図通りに学習することができるならば十分に教育効果は上がることが期待されるはずであるという授業計画を立てた上でやっていますので、新薬の臨床試験よりは「安全性」が高いはずであると思てながらやっています。

 中学・高校理科の学習指導要領が変わり、それに則った教育を受けた学生が入学してくるのが来年2006年ということで、しばらく前から2006年問題という大学教員を震え上がらせていた問題があります。中学高校で、内容が大幅に削減されたの理科教育を受けてきた学生に対して、今までの大学のカリキュラムで教育すると、とんでもないギャップが生じるのでなんとかしなくてなならない、というのが2006年問題の概要です。

 それに対する北海道大学の対応として、新しい初習理科教育カリキュラムを作ろうということの実践として、去年から物理・科学・生物・地学のパイロット授業を始めました。

 その骨子は、高校までの理科教育は「なかったもの」として考える。つまり、例えば大学生物の1年次教育において、高校までの生物の履修経験を問わないということが、まず第1にあります。次に、大量の初習理科履修者を裁くために大人数教室で、新しい教育技術を駆使して効率的な教育をするということです。

 前者に関しては、もはや高校までの理科は、大学教育のための基礎として位置づけることはできないので、たとえ履修してきたとしても、履修してきていない学生と区別しないで教育するということです。後者に関しては、法人化後の大学における人的な教育資源の効率的利用(早くいうと昔非難されたマスプロダクション教育の復活でもあります)が可能かどうかを見極めるというねらいもあります。

 実は明日、その時代に逆行するような大人数教育のパイロット授業の結果はどうだったのかということについての中間報告をしなければならないために、泥縄ですがいろいろと反省しているところです。学生アンケートの結果や試験の結果、やる気のバロメーターになるレポートや質問の多寡などについて調べ直していたところ、いろいろとおもしろい結果も発見できました。

 誰が考えても、大人数クラスのマスプロ教育など良いものであるわけがなく、実際に学生からの評価もかなり厳しいものです。3人の教員で担当した生物学の大人数のパイロット授業に対する去年の学生アンケート結果は、前期に行われた全学教育574講義中416位と、ほぼ最低の評価しか得られていなかったのですが、ほとんど同じ内容の講義だったにもかかわらず、今年は552講義中300位にまで「大躍進」しています。これは、教える側のスキルの上達もあるのでしょうが、たとえ大人数クラスでも平均的な満足度が得られる可能性を示しているのかもしれません。

 ちなみに私が一人で担当した平成15年の生物学3という講義では、270講義中23位という評価を得ていたものが、同じ私が参加して翌年に行った3名の教員による大クラス授業が、574講義中416位というのは、「大人数状態」というものに対していかに学生が不満足感を持つかということを如実に示していると思います。

 というわけで、まだまだ簡単に結論を出せる段階ではないのですが、カリキュラムを含めた教育技術の改善と、経済効率が許す限りの少人数教育を目指していくことで、大学教育はまだまだ改良の余地があるのではないかと感じております。

 しかし、そのためには教育の改善にかなりの力を注がなければならず、従来の大学研究者の典型的な姿勢と言われる「教育は雑用」という姿勢では、そうした期待に応えることはまったく期待できないということもまた厳粛なる事実です。

 理科教育に関して、まったなしの来年が目前に迫っています。
by stochinai | 2005-12-26 23:59 | 教育 | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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