2006年 01月 05日
Nature podcast (論文発見追記あり)
最近はあちこちのサイトでpodcastingのサービスが行われているので、特に目新しいことはないのかもしれませんが、最近はNatureが配布するNature Podcastを良く聞いています。最初のうちは、キャスターのイギリスなまりがどうも気になっていたのですが、何回か聞くうちにだんだんと気にならなくなってきました。
このpodcastingが始まったのが去年の10月5日なので、週1の更新で今日までにまだ13エントリーですのでで、すべてをダウンロードしても大した量にはなりません。英語と科学の勉強が同時にできるなかなかの教材だと思います。
(サイトが混んでいるのか、ここ数日はpodcastの特徴である、自動更新ができないようですので、ひとつずつダウンロードするしかないのが残念です。)
来週、研究室のセミナーがあり論文を紹介しなければならないので、何かネタはないかと今朝通勤途中に聞いていた去年の11月17日号に、ちょっと気になる内容がありました。
日本ではコモドオオトカゲと言うのですが、英語ではkomodo dragonという体長が3メートルにもなる巨大なトカゲがインドネシアのコモド諸島にいます。実は知らなかったのですが、このトカゲに噛まれるとそれほどの噛み傷ではないにもかかわらず、しばしば死に至る症状になるということが知られているのだそうです。
ネットにも「コモドオオトカゲに噛まれたヤギはコモドオオトカゲの口の中にいる細菌によって敗血症になってやがて死ぬということを、どこかで読んだことがあります」などという記述が見つかりますし、Wikipediaのトカゲの項にも「ほとんどのトカゲは毒をもたず、人間に害を及ぼすことはないが、オオトカゲ類などに咬まれると口内にいる雑菌が傷口から入りこみ感染症を起こすことがある」と書いてあります。
ところがNature Podcastによると、細菌による感染という説は間違いで実はコモドオオトカゲには毒があったということをオーストラリアかどこかの研究者が明らかにしたという話でした。それはおもしろいということで、その原著論文を探してみたのですが、Natureはおろかどこにも論文を見つけることはできませんでした。
というわけで、残念ながらセミナーではコモドドラゴンの話をすることはできませんので、代わりに今日からオンライン公開されている今週号のNatureに載っている、視神経の軸索が中脳視蓋にある神経細胞とつながる際に、正しい相手(位置)を見つけるために、今まで発見されていなかった分子(タンパク質)もかかわっていたことが証明されたという論文(Wnt–Ryk signalling mediates medial–lateral retinotectal topographic mapping)を紹介することにします。これはこれで、なかなか美しい論文です。
さて、話を戻してコモドドラゴンに戻し、私の貧弱な英語リスニング能力で聞き取れたことをもう少し書いておきます。コモドドラゴンの毒は蛇毒に似たものだったそうです。そもそも、コモドドラゴン(トカゲ一般?)の先祖が進化によって蛇と分岐したのが、およそ2億年前のことらしいのですが、コモドドラゴンと今いる毒蛇が同じような毒を持っているということは、共通祖先が毒を持っていたということを推測させます。またそのことから、実は蛇というものはもともとはすべてが毒蛇で、今いるたくさんの毒のない蛇も先祖は毒蛇だったとも言っておりました。
というわけで、この話は蛇とトカゲと蛇毒の進化を巡るおもしろいお話のようなので、いずれ論文が発表になったらじっくりと勉強してみたいと思っております。
ひさびさに生物ネタを書けました(微笑)。
追記:
お恥ずかしいことながら、ある方から指摘を受けまして、Nature onlineに論文がしっかりと載っていることが判明しました。
Nature advance online publication; published online 16 November 2005 | doi:10.1038/nature04328
Early evolution of the venom system in lizards and snakes
しかしながら、この論文は今のところ印刷版のNature には出ていないようで、onlineでしか見られないようです。
このpodcastingが始まったのが去年の10月5日なので、週1の更新で今日までにまだ13エントリーですのでで、すべてをダウンロードしても大した量にはなりません。英語と科学の勉強が同時にできるなかなかの教材だと思います。
(サイトが混んでいるのか、ここ数日はpodcastの特徴である、自動更新ができないようですので、ひとつずつダウンロードするしかないのが残念です。)
来週、研究室のセミナーがあり論文を紹介しなければならないので、何かネタはないかと今朝通勤途中に聞いていた去年の11月17日号に、ちょっと気になる内容がありました。
日本ではコモドオオトカゲと言うのですが、英語ではkomodo dragonという体長が3メートルにもなる巨大なトカゲがインドネシアのコモド諸島にいます。実は知らなかったのですが、このトカゲに噛まれるとそれほどの噛み傷ではないにもかかわらず、しばしば死に至る症状になるということが知られているのだそうです。
ネットにも「コモドオオトカゲに噛まれたヤギはコモドオオトカゲの口の中にいる細菌によって敗血症になってやがて死ぬということを、どこかで読んだことがあります」などという記述が見つかりますし、Wikipediaのトカゲの項にも「ほとんどのトカゲは毒をもたず、人間に害を及ぼすことはないが、オオトカゲ類などに咬まれると口内にいる雑菌が傷口から入りこみ感染症を起こすことがある」と書いてあります。
ところがNature Podcastによると、細菌による感染という説は間違いで実はコモドオオトカゲには毒があったということをオーストラリアかどこかの研究者が明らかにしたという話でした。それはおもしろいということで、その原著論文を探してみたのですが、Natureはおろかどこにも論文を見つけることはできませんでした。
というわけで、残念ながらセミナーではコモドドラゴンの話をすることはできませんので、代わりに今日からオンライン公開されている今週号のNatureに載っている、視神経の軸索が中脳視蓋にある神経細胞とつながる際に、正しい相手(位置)を見つけるために、今まで発見されていなかった分子(タンパク質)もかかわっていたことが証明されたという論文(Wnt–Ryk signalling mediates medial–lateral retinotectal topographic mapping)を紹介することにします。これはこれで、なかなか美しい論文です。
さて、話を戻してコモドドラゴンに戻し、私の貧弱な英語リスニング能力で聞き取れたことをもう少し書いておきます。コモドドラゴンの毒は蛇毒に似たものだったそうです。そもそも、コモドドラゴン(トカゲ一般?)の先祖が進化によって蛇と分岐したのが、およそ2億年前のことらしいのですが、コモドドラゴンと今いる毒蛇が同じような毒を持っているということは、共通祖先が毒を持っていたということを推測させます。またそのことから、実は蛇というものはもともとはすべてが毒蛇で、今いるたくさんの毒のない蛇も先祖は毒蛇だったとも言っておりました。
というわけで、この話は蛇とトカゲと蛇毒の進化を巡るおもしろいお話のようなので、いずれ論文が発表になったらじっくりと勉強してみたいと思っております。
ひさびさに生物ネタを書けました(微笑)。
追記:
お恥ずかしいことながら、ある方から指摘を受けまして、Nature onlineに論文がしっかりと載っていることが判明しました。
Nature advance online publication; published online 16 November 2005 | doi:10.1038/nature04328
Early evolution of the venom system in lizards and snakes
しかしながら、この論文は今のところ印刷版のNature には出ていないようで、onlineでしか見られないようです。
蛇の毒で、高血圧の治療薬が出来ています。ACE阻害薬ですが、なぜなのか不思議ですが、もともと蛇は皆毒蛇ですか?進化の過程で無毒化したんでしょうかね。
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Miso
at 2006-01-06 00:26
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はじめまして。コモドドラゴンの話、面白く読ませていただきました。しばらく前にScience Channelでこの件についてのドキュメンタリが放送されてました。うろ覚えですが、生きた牛をコモドドラゴンにかませてどうなるか、というワイルドな実験をしていました。結局かまれてから死ぬまでに1日2日かかったと記憶しています。で、結論は最近感染だと。そこから考えると、仮に毒を持っていたとしても非常に弱いものではないでしょうか。論文が楽しみです。
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stochinai at 2006-01-06 19:35
論文にも、トカゲ毒も蛇毒と同じく急激な血圧の降下と血液凝固阻害作用があると書いてありました。急に血圧が下がると、動物は意識がなくなってしまうのと、血液が固まらないでどんどん血が出ることで、それを食べるトカゲにとって有益なのだろうということです。
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stochinai at 2006-01-06 19:47
論文によるとトカゲの毒が特に弱いというようなことは書いてありませんでした。ただ、毒蛇と同じように9種類の毒が見いだされたということで、これが共通祖先を裏付ける強い証拠になっているようです。毒を持ったトカゲと毒蛇の決定的な違いは牙を注射器のように使って、体の中に毒を注入するヘビに対して、トカゲは噛んだ傷口から毒がしみこんでいくという毒の入れ方の違いが大きいのではないでしょうか。そう言えば、昔は毒蛇ではないと思われていたヤマカガシもトカゲタイプの毒の入れ方をするのではなかったでしょうか。
蛇毒を基に合成されたACE阻害薬はもともと注射でないと効目がなかったんです。これを経口でも効くように分子構造を変えたのが、商品化されたものです。抗凝固作用の蛇毒も医薬品へと応用したはずです。なかなか面白いです。
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stochinai at 2006-01-06 22:36
まだまだ自然界には学ぶべきことがたくさんあるということですね。楽しいです。
by stochinai
| 2006-01-05 22:24
| 科学一般
|
Comments(6)