5号館を出て

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勝手な人間のひとりとしてお詫びしたい

 あちこちの新聞サイトを流し読みしていたら、衝撃的な記事にぶち当たってしまいました。「北限のニホンザル」捕獲開始、天然記念物を薬殺へです。

 北限のサルとして、天然記念物に指定されているものを殺すのですから、よほどのことがあったのだとは思います。

 天然記念物になったということは、数が少なかったということを意味しており、指定された頃は200匹くらいしかいなかったサルが現在は1500頭くらいにまで増えているようで、農作物への被害がひどくなってきたというのが駆除の理由のようです。

 まあ、サルより人間の生活を守らなければならないという意見には、強く反論できないのですが、サルを増やしたのも人間のエゴではなかったのでしょうか。申年が終わったと言うことで虐殺解禁では、シャレになりません。

 温泉に入る北限のサルを観光資源として、餌付けし大量のエサを与えたのは農家の人ではないとは思いますが、サルによる農業被害が増えているとしたら、サルを利用している人たちが被害の補償をすべきところではないのでしょうか。

 サルから見れば、エサをくれる人も、畑に作物をくれる人も区別がつきません。だまっていても大量のエサをくれる人(観光業者と観光客)が一方にいて、畑にサルの大好きな作物が植わっているのを食べると猿害と思う農家の人がいます。

 しかし、その2種類の人間をサルがどうやって見分けることができるでしょう。その結果、増えすぎて人を恐れなくなったサルを捕獲して薬殺というのは、なんともひどい仕打ちではないかと思います。

 この件に関しては、きちんと学問的に解決すべきだと考えます。クマやカモシカ、イノシシ、北海道ならばエゾシカなどが農作物や人間に対して被害を与えるようになって問題化しているようですが、もともとは数が少な移動物を人間側が保護しようとしていたものばかりだと思います。

 野生動物の保護と、それをペット化してしまうことの区別ができていないことが、そもそもの問題を生んでいるように思います。野生動物が絶滅しそうだとか、かわいいとかいうと、すぐに安易に大量のエサを与え、餌付けして、ヒトを恐れなくしてしまうばかりではなく、ヒトに依存するようにし向けてしまうことが多いように思います。今はまだ問題になっていないかもしれませんが、タンチョウやハクチョウなどもそのうち問題になりそうな気がします。身近なところではカモはそろそろ危険圏内に入りつつあるように思えます。

 それは、やはり日本人全体として野生生物とのつきあい方(リテラシーと言っても良いかもしれません)がなっていないことが問題だと思います。住み分ける工夫をしてやることができるのも人間の知恵だと思います。

 知恵が出ないので力ずくで解決を図るという昨今の風潮が動物にまで及ぶのだとしたら、私にできるのは人間のひとりとして動物たちにお詫びすることくらいかもしれません。

 もっとみんなで知恵を出し合いませんか。協力は惜しみません。
by stochinai | 2005-01-17 22:45 | つぶやき | Comments(0)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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