5号館を出て

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失業した助手?

 「ある大学研究者の悩み」さんのところで教えてもらいました。ある大学研究者さんも大変みたいですが、まだ若いから大丈夫とのこと、ご自愛下さい。
私も今は若いからまだ良いんですが、将来同じように変革に晒された時、耐えられるような強さを保っているでしょうか?

 その心配が現実になったものかもしれないとして、小学生の間で「石神井公園の博士」として有名だった、「東京工業大学の元助手」が強制わいせつ容疑で逮捕されたという記事を引用しています。

 工学博士で東工大の助手という履歴は本人の談のようですが、私には本当のことのように思えます。
東京工業大では「同じ名前の人物が2~3年前まで理工学研究科の職員として在籍していたが、退職している」と明かした。中村容疑者の博士号の有無について「逮捕された人物と、本学に在籍していた人物が同一か確認が取れておらず、お答えできない」と説明した。しかし「もし同一人物なら、大変申し訳ない」とも話した。

 ちょっと考え込んでしまいますね。

追記(2006年2月22日)
 木走さんのところで、この事件から「どうしてここまで」というくらい連想豊かでほんのりと懐かしくもあるエントリーが書かれました。やりきれないニュースも楽しめるかもしれません。注射器と怪しげな液の入った昆虫採集セットって本当に懐かしいです。
Commented by inoue0 at 2006-02-10 19:40
「期限付き」が助手や講師クラスだけで、助教授以上には適用されない点はおかしいと思いませんか?既得権益はそのままで、新規参入者にだけきつい思いをさせる制度は絶対におかしい。やるなら教授、助教授にも同様の期限付き採用を適用すべきでしょう。
Commented by マルセル at 2006-02-10 19:48 x
愛読紙日刊ゲンダイ曰く「博士100人いたら16人無職、8人自殺だそうです」、ま能力不足の人の大学教員失格は仕方ないにせよ、いきなり無職、ホームレスまで落魄れる社会も如何なものかと。。。もし大学教員が駄目なら高校の生物^^か中学の理科の教師になる道くらいは開いてもいいかと思います、何で生物かって?特に理由はありますw、そういえば温泉で亡くなった方も40歳を過ぎた助手さんでしたネ
Commented by stochinai at 2006-02-10 20:14
>「期限付き」が助手や講師クラスだけで、助教授以上には適用されない点はおかしいと思いませんか?
 思います。
>やるなら教授、助教授にも同様の期限付き採用を適用すべきでしょう。
 そう思います。
 助手は時限付きにして、上の方は定年を延長したT大というものが世の中からブーイングされないのも変ですよね。
Commented by stochinai at 2006-02-10 20:18
>もし大学教員が駄目なら高校の生物^^か中学の理科の教師になる道くらいは開いてもいいかと思います
 はい、私も失職した暁には、できれば小学校の生物教師(そんなのありか?)になりたいと思っています。

 昔、K本大学の先生がおっしゃっていた言葉が忘れられません。 
「どんなに人格者でも助手を10年以上もやらせたら、変になるもんだよ」
 私も助手を9年と8ヶ月やりました。変になってるかも。
Commented by osumi1128 at 2006-02-10 20:31
任期制の具体的な制度は大学によって大きく異なります。
私のところでは教授も任期付です。10年で再任ありだから、意味がないという意見もありますが、教授になったとたん、さまざまな学内処理の雑用に追われることになるので、自分が辞めさせられるかもしれない立場だと真剣になれないという問題もあります。
とにかく、日本のアカデミアのポストの数が圧倒的に少ないことが一番問題なのではないでしょうか?
Commented by stochinai at 2006-02-10 20:52
 北海道大学CoSTEPには放送局のディレクターだった方、フリーのライターだった方、科学館の方など、ノン・アカデミックの特任教員がたくさんいらっしゃいます。例外的なことなだとは思いますが、大学に風が吹いている感じで、とても気持ちがいいです。
 これとは逆に、アカデミック・ポストにいた人を気軽に受け入れてくれる民間の組織があると任期付きなどということを言わなくても流動性は増す気がします。任期付きにしたら自然に受け皿ができるだろうなどと思っていたのだとしたら、それは無責任というものです。
 少ないアカデミックポストに対してドクターを激増させてしまったのですから、取りあえず受け皿を作るのは政府の責任だと思います。
Commented by Makkurikuri at 2006-02-10 23:12
TBしていただいてたので、読ませてもらいました。
リンクさせていただこうと思います。

2~3年前と言えば国立大の独法化前ですが、既に人事関係は競争の厳しい時代に入っていたと思います。再就職の難しい年齢で、助手の仕事を離れたのはそれなりの事情が会っての事だと思いますが、背景には情勢の変化があったのだと思い、例の記事を引用しました。
Commented by stochinai at 2006-02-11 00:15
 ちょっと引用しただけで、これだけのコメントをいただけるのですから、やはり全国的に深刻さが増しているのだと、ちょっと厳粛な気持ちになりました。
Commented by inoue0 at 2006-02-11 02:03
 博士が多いから救済策としてアカデミックポストを増やせというのは本末転倒で賛成しかねる(だったら大学院定員を削減すべき)のですが、学生あたりの大学教員が少なすぎるのは事実でしょう。
 しかし、別の反論もあります。
「学生が多すぎる。そもそも大学教育を履修できるだけの学力のない学生がフリーパスで入ってきている。学生数を減らせば大学教員数を増やさなくてもいい」
 こう考えていくと、そもそも大学が多すぎることが問題の根幹にあるのです。
Commented by inoue0 at 2006-02-11 02:12
 広島大学文理学部で素粒子論専攻の助手が学部長を殺して黄色い砂をまくという事件が発生しました。助手に20年留め置かれて、直近の昇任人事でも昇進がありませんでした。
Commented by inoue0 at 2006-02-11 08:23
 かつての大学、ことに国立大学はのどかな職場だったといいます。「不幸について」の中で中島義道電気通信大学教授(哲学)は、ウィーン留学時代にこう言われたそうです。
「駒場はいいところだよ。何もしなくていいんだ。A君などは午後4時の男と言われているくらいだ」
 「大学教授になる方法」(鷲田)にも、「いったん助手になったら、教授でもクビを切ることはできない」とあります。精神病で一切仕事ができない専任講師ですらクビにできなかったそうです。
 それが、時代が変わって、5年ごとの業績審査だの、期限付き雇用だのと世知辛いことになったのには理由があります。大学が増えたからです。
 大学が小さなセクターである限りは、ある程度の無駄は許容されたでしょう。しかし、学生数が増え、教員が増え、政府からの支出も膨大となった現在では、そんな余裕はない。
 ということは、大学教員が職の心配をせずに優雅に研究にいそしむには、大学という社会装置全体の規模を縮小する必要があるということになります。
Commented by alchemist at 2006-02-12 14:21 x
広島の事件は総合科学部(旧教養部)で、大講座になったために、大講座の有力教授=学部長が自分の領域(物性でしたか)に近いヒトを集めて、理論系のヒトが疎外されていたという背景があったのではなかったでしょうか?ある意味では大講座制の矛盾を露呈したような事件でしたが、日本から聞こえてくる情報にはそういう議論はなく「恩師に刃を向けた」みたいなものが多かったのを記憶しています。
NatureだったかScienceだったかに、日本の大学の封建的な面という解説記事が載っていたような記憶があります。
Commented by inoue0 at 2006-02-12 14:55
alchemistさんへ。学科名は記憶違いでした。
かの事件は、その後、NHKで特集番組が組まれました。おぼろげにしか憶えていないのですが、かの助手は学生たちや同僚にも評判の良い働き者だったそうです。
 彼が就職した当時は素粒子論が物理学の花形だったのに、昇進が気になるときには高温超伝導(物性物理ですね)で世間が沸き立っていて、素粒子論では職がなくて現職に留まらざるを得なかったのだそうです。
 素粒子論を修められるほど優秀な方なら、他の分野に転向可能な気がするんですが、できないんでしょうかねえ。
Commented by alchemist at 2006-02-12 16:17 x
同じ県内の私立大学へ助教授としての転出を求められたけれど、助手で残った、という話も聞きました。転々としていた頃でしたので、自分だったら出ていくだろうなあ・・・と考えた記憶があります。転出を求められた先での研究環境などを考えての決断だったのでしょう。それでも、場所を変えるのも悪い選択じゃないだろうに・・・という感想を持たざるを得ませんでした。
by stochinai | 2006-02-10 18:33 | 大学・高等教育 | Comments(14)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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