5号館を出て

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作品発表会・シンポジウムI・懇親会

 すごい1日でした。

 半年前に同じ場所で、CoSTEPの入学式をやったのですが、正直言ってその時には半年後にどれくらいの「成果」がでるのだろうかと半信半疑でした、というよりは、正直言うと弁解することになる可能性の方が大きいような不安を持っていたことを告白します。

 ところが、ところがです。今は、なんだかとても誇らしい気分です。

 今日と明日、北大で
CoSTEP初年度受講生の卒業発表を兼ねた、作品発表会およびシンポジウムが開催されています。

 今日の前半は、CoSTEP受講生による卒業作品発表会がありました。感動でした。

 この半年間で、それぞれの受講生はラジオ番組を作り、サイエンス・カフェ、サイエンス・ギャラリーを運営し、出前授業をこなし、プロに勝つライティングを実現し、全国紙に負けない発行部数を誇る地元の新聞社から定期コラムの連載を依頼されるほどのウェブサイトを作り上げることができたのです。さらには言われたわけでもないのに、自主的にサイエンス紙芝居や研究所ツアーまでをも主宰し、新聞に取り上げられるほどの成果をあげてしまったのです。

 もちろん、ほとんどすべての作品の背後には教育者としての宿命とでもいうべき「匿名」で行われた特任教員の方々の献身的な指導があったことは間違いないのですが、たとえそうだとしても受講生の名前を前面に押し出しても良いと判断されるだけの「作品」ができあがったことは間違いありません。

 懇親会での受講生の明るさもとても気持ちのよいものでした。おそらく、彼らにとっても本来ならば一年かけてやるべき課題を半年でこなすことができたという深い達成感があったのだと思います。今後の人生において大きな自信になることは間違いないでしょう。

 テレビでしか見たことのないNHKアナウンサーである山口さんが、彼らの発表の進行の司会をしてくれただけではなく、時には辛口のコメントをいただけたことも受講生には大きな励みになったと思います。他に、サイコムの榎木さん、読売新聞の北村さん、大阪大学の小林さん、未来館の美馬さんの時には暖かい、時には厳しいコメントのひとつひとつが彼らにとって一生の財産になったはずです。

 話を聞いていて、自分が大学院生の頃に出た学会のことを思い出しました。

 指導してくれた先生なしにはとてもできないはずの研究発表をさせてもらい、それまでは本や論文や講義やテレビでしか知らなかった先生に、直接褒めてもらったり注意してもらったり、叱られたり。ポジティブでもネガティブでも反応をもらえたということすべてが嬉しかった記憶があります。褒められてもけなされても、そのひとつひとつが発表の内容を「私」の研究として扱ってもらえているという大人扱いされたうれしさにつながっていたと思います。

 今日発表された受講生のみなさんも、同じような気持ちでデビューの瞬間を味わったのではないでしょうか。

 しかし、今日を境に「大人扱い」から「大人」になる厳しい境界線を越えるという厳粛な事実もまた皆さんを待っています。

 明日(明後日)からは、卒業生の皆さんは一人で世間の荒波と闘っていくことを迫られるのです。もちろん、すべての成果は皆さん一人一人のものになりますが、誰も手伝ってはくれませんし、すべての責任もみなさん一人一人が負わなくてはなりません。

 今日の懇親会では、たくさんの方々から一人でできることがたかが知れているということと、たくさんの人が集まった時のすごい力のことについてのお話を聞きました。ひょっとすると、CoSTEPで学んだことの一番大きなことは自分一人では何もできないけれども、人を集めることができればすごいことができるということなのかもしれません。そして、人を集める時にこそ発揮されるのがコミュニケーションの力なのでしょう。

 科学技術コミュニケーション養成ユニットで学ぶべきことというのは、ひょっとするとこの協働作業そのものなのかもしれません。

【追記】
 シンポジウムの後半で話された、日本を代表すると言っても良いコミュニケーターのお二人が女性であったということは私にはたまたまだとは思えないものがありました。お二人とも素晴らしく魅力的で、人を惹きつける能力において並はずれたものがあると思われました。

 困難な現場でがんばり続けているお二人の話を聞いていて感じたことは、こういう人がある数いてくれたら、多くの問題はそれほど難しくないものになる、ということでした。

 かなりハイレベルな存在であることは事実なのですが、一人でも多くお二人のような存在を育てていくことは、ある意味でわかりやすい目標になりそうな気がしました。

 そう言う目でCoTEPの卒業生を見渡してみると、意外といけるかも、というところです。

 がんばってください。
Commented by K_Tachibana at 2006-03-18 23:21 x
stochinaiさま,お疲れ様でした.
今日のプログラムだけでも内地から札幌まで来た甲斐がありました.
私の目から見たCoSTEPの特徴は,多様な年齢層の多様な経歴の人たちが,科学コミュニケーションのフィールドワークの実践を着々と積み重ねていることだと思います.

次のステップに向けて,私自身もCoSTEPの活動との関わりを考えてみたいと思っています.

個人的には,山口アナウンサーのコメントが一番参考になりました.
by stochinai | 2006-03-18 22:33 | CoSTEP | Comments(1)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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