5号館を出て

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皮膚がミルクになる子育て

 昨日、予告していたNatureに載っているおもしろい論文を紹介します。
Nature 440, 926-929 (13 April 2006) | doi:10.1038/nature04403; Received 28 September 2005; ; Accepted 7 November 2005

Parental investment by skin feeding in a caecilian amphibian

Alexander Kupfer, Hendrik Müller, Marta M. Antoniazzi, Carlos Jared, Hartmut Greven, Ronald A. Nussbaum and Mark Wilkinson

 現在の地球にいる両生類は3つのグループ(目:もく)に分けられていて、我々になじみ深いカエルの仲間(無尾目)、成体になっても尾のあるイモリ・サンショウウオの仲間(有尾目)の他に、マイナーなグループ手も足もないアシナシイモリ目(無足類)がいます。

 このアシナシイモリの仲間は、種類数が少なく分布も熱帯地方に限られるために、他の両生類のように発生の研究に使われることもないどころか、その生態すらも明らかになっていないものが多いようです。

 そんなグループの一種ブーランジェーアシナシイモリ属のBoulengerula taitanusのお話です。この動物は見た目はミミズにそっくりで、それだけでも十分に不思議な動物ですが、その子育てがなんともおもしろいのです。

 アシナシイモリのグループには卵生のものと卵胎生のものがいて、この種は卵生です。子の保護をする母親と子どもを採集して観察してみると、卵から孵った子どもが母親の皮膚の表面をかじっているのが観察されました。ちょっと見ると、子どもが母親を食べているというような残酷に思えるシーンですが、実は「子育て」をしている「母親」のアシナシイモリの皮膚の外側の表皮は、脂肪分をたっぷりとふくんで栄養たっぷりに変化しており、子どもたちはその表皮を食べていたのです。

 アシナシイモリの仲間の卵胎生のものでは、お腹の中で孵った子どもが輸卵管の壁を食べて育つという現象が知られています。そういう動物では、母親の輸卵管の壁の細胞を食べるために、子ども(胎仔)には特殊な歯があるのが特徴です。

 今回、研究対象となったアシナシイモリの子どもも大人の歯と違って先が分岐した、いかにも皮膚をこそげ取るのに便利そうな歯を持っており、まさに母親の皮膚がこの子たちのミルクになっていることがわかります。

 研究者たちは、今回発見されたアシナシイモリは卵生の動物が卵胎生へと進化する途上にあると考えているようです。

 つまり、卵を産みっぱなしにして立ち去るというもっとも原始的な段階から、卵を保護して外的から守るという段階をへて、子どもに親の作る栄養分を渡すという「哺乳」のようなしくみができ、さらには身体の中で発生させて保護するとともに体内で栄養分を与えるという卵胎生が進化してきたというストーリーの完成に、今回の発見は大きな支持を与えるということです。

 そういうふうに考えると、今回の発見は先日のティクターリクの場合と同じように、連続的であるべき進化過程で欠けている部分、つまりミッシング・リンクの発見ということもできるかもしれません。

 発見されていない自然現象はまだまだたくさんありそうです。
Commented by さなえ at 2006-04-14 19:32 x
息子は私の脛を囓るのにぴったりの歯と背中にしがみつくための吸盤付きの指を後天的に取得しています。
Commented by merchantsakurai at 2006-04-15 01:15 x
 アシナシイモリは蛇の先祖というわけではなさそうですね。卵胎生の爬虫類の例は知らないのですが、
 齧るのか舐めるのか吸うのか、「歯舌」だったら、それはともかく、母親は痛みは感じないのでしょうか。
 人間の「脛を齧られる痛み」もさまざまと聞いております。
Commented by stochinai at 2006-04-15 16:23
 すっかり忘れていましたけれども、確かに人間の子どもも親のすねをかじるのでした(^^)。

 おそらく母親はこの時期は痛くないような生理状態になっていることが予測されます。子育てをしている時期の、皮膚の神経分布などを調べてみるとおもしろいかもしれません。
Commented at 2006-04-15 19:42 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by stochinai | 2006-04-14 17:14 | 生物学 | Comments(4)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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