5号館を出て

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愛すべき日本という国を

 今年もまた理学部総合博物館の前のクロフネツツジが美しい季節になりました。
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こちらは去年の同じ場所の9日後の風景(クリックで拡大)
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 誰でもが、そこそこ幸せに暮らすことができて、こんな風景をのんびりと眺めることができる国であるならば、子どもたちに「日本という国を愛しなさい」などと命令しなくても、みんなきっと日本を愛するようになってくれることでしょう。

 こんなにきれいな風景があるのに、そのまわりで小学生が遊び回り、中学生がスポーツをして、高校生がデートをし、大学生は読書をする。そんな光景が見られないのはどうしてなのでしょう。

 子どもたちは土日が休みと言っても、外で一緒に遊んでくれる両親がいるとは限りません。町内に一緒に遊んでくれる、お兄ちゃん・お姉ちゃんもいません。ひとりで遊んでいると、さらわれてしまったりします。

 小学校から英語を学ばせようということに母親の多くが賛成しているのは、子どもたちに受験で苦労をさせたくないからというだけの理由だと思います。国際化とか早期教育とかはどうでも良くて、苦労せずに高校・大学に入って欲しいということではないかと思います。

 どうして、高校や大学にはいらなければならないかというと、高校や大学くらい出ていないとその先に安定した生活が保障されないからです。最近それでも、ダメだったりすることもあるようですが。

 政府が競争を奨励して、落ちこぼれた「負け犬」の生活が苦しくなっても仕方がないなどということを言っているようでは、国民の一人一人が自分だけは浮き上がろうとお互いの足を引っ張り合うのも無理はないでしょう。

 なんとか生き残るために小学校から塾通いをさせられて、美しい日本の風景の中でのんびりと遊ぶことも許されないのに、その国を愛しなさいと言っても、それは無理というものでしょう。無理を強要して育てた子どもたちの何人かは、必ず社会に対して報復をするようになると思います。

 すでにその報復は始まっている、というのが私の見解です。教育基本法の改正と、教育現場における遵法指導その監視をすることは、さらに状況を悪くするような気がしてなりません。

 どうせなら、子どもたちをのびのびと育てるための法律でも作ってください。
Commented by 花見月 at 2006-05-19 23:19 x
美しい季節の札幌を離れて、子どもたちにさびしい思いをさせているので、胸が痛いです。国際学会に来て、ある先生がおっしゃっていましたが、最近の学会は「出会い系」だそうです。「国際学会に来るやつらは、国際学会に出たということで、連携していると言って評価を上げたいやつか、新しい職場を探しているやつら」とのことです。研究者も常に資金獲得のための競争に晒されていて、学会は議論を深める場所でなく、いかに目新しいことをやったかを喧伝する場になっているという印象を受けました。コンベンションセンターに閉じこもってないで、風さわやかな5月に美しい故宮を訪れ、緑を愛でながら話し合いをしたほうがいいような気がしました。
Commented by mm at 2006-05-20 10:12 x
「万緑のなかや吾子の歯生え初むる」という美しい句があります。
愛国心というのは、おっしゃる通り、強要されるものではなく「先人がこの国の何を愛し何を大切にしたか」からしか学べない。ということは、私たち自身がすでに手本ということ。
英語教育過熱も、「私たち自身が日本語のよさ美しさを、身をもって示していないから」に他ならないのか、とも思います。しかし、中国・韓国の英語熱もすごい、と聞くとほっとけないとも思ったりして。
by stochinai | 2006-05-19 22:02 | 教育 | Comments(2)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


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